Q. 国内・海外のSaaS企業8社のARPUを業種ごとに比較してみた結果は?

A. HCM(人的資本管理)、コミュニケーションツール、経費精算、電子契約の4つの業種において日本と海外のSaaS企業のARPUの比較をしたところ、全ての領域で海外企業のARPUが日本企業を上回る結果となりました。最大で83倍の差です。

この記事はゲストライターとの共同制作です。

今回の記事では、4つのサービス領域に属するSaaS企業を日本と海外で各1社ずつ、計8社を選出し、各領域毎にARPU(顧客単価)を比較することで、各社の戦略やビジネスモデルを紐解いていきます。

今回対象とする領域及び企業は、以下の通りです。

■ HCM(人的資本管理)領域

・カオナビ

・Workday

■ コミュニケーションツール領域

・チャットワーク

・Slack

■ 経費精算領域

・ラクス(楽楽精算)

・SAP Concur

■ 電子契約領域

・弁護士ドットコム(クラウドサイン)

・DocuSign

ARPUを比較することで、「どのような顧客に対してどのような価値を提供しているのか」という各社の戦略が浮かび上がってきます。

では、早速HCM領域から見ていきましょう。

HCM領域(カオナビ vs Workday)のARPUを比較

まず、HCMとはHuman Capital Managementの頭文字をとった言葉で日本語訳すると「人的資本管理」となります。

HCM領域のSaaSでは、会社の資産である「人材」を可視化し、人員配置や採用計画に有効活用できるようにすることがメインの機能となっています。

HCM領域では、日本企業としてカオナビ、そして海外企業として米国Workdayを選出しました。

カオナビは2008年に創業し、昨年2019年3月に東証マザーズ市場への上場を果たしています。

一方、Workdayは2005年に創業、2012年にニューヨーク証券取引所に上場し、現在は日本を含め240の国と地域にサービスをに展開をするグローバル企業となっています。

それぞれの決算資料からARPUを比較すると、以下のようになります。

株式会社カオナビ 2020年3月期 第3四半期 決算説明資料

Workday, Inc. Form 10-K

Workday Announces Fourth Quarter and Full Year Fiscal 2020 Financial Results

画像

このように、両社のARPUには大きな開きがあります。(B)÷(A)を計算すると実に83倍になります。

なお、カオナビのARPUについては、決算資料内に「117千円」という記載がありますが、今回の記事では、ARPUを「四半期売上」と「公表されている導入企業数」から算出した値で統一する都合上、若干のズレが生じています。

先述のカオナビとWorkdayのARPUにおける83倍という大きな差の背景としては、「顧客企業サイズの違い」と「クロスセル商品の有無」が挙げられます。

顧客企業サイズについては、Workdayは以下の記事から、「顧客数3,000、ユーザー数4,200万人、1社あたりのユーザー数1.4万人」ということがわかります。

Workday delivers strong Q3, tops 3,000 customers(ZDNET:2019/12/3)

一方でカオナビは、決算資料に掲載されている以下のグラフから分かるように、900人以下の企業が83.3%を占めています。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4435/tdnet/1798860/00.pdf
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4435/tdnet/1798860/00.pdf

カオナビの顧客の平均従業員数はこのデータからは分かりませんが、少なくともWorkdayの1社あたりのユーザー数と10倍以上の差があることから、顧客企業サイズの違いが両社のARPUの差に繋がっている、ということは言えるでしょう。

また、もう1つの背景としては、「クロスセル商品の有無」の違いがあります。

WorkdayはHCMから始まり、Financial(経理、財務)やビジネスプランニングなどのHCMの関連領域においてプロダクトをリリースしており、それらのライセンスをクロスセルしていくことで顧客単価を引き上げています。

一方、カオナビは現時点ではHCMに特化したプロダクトのため、顧客単価の引き上げ手段が限られています。この違いもARPUの差に影響しているといえるでしょう。

このように、同業界の企業でもARPUには差分があり、その背景を探ることで、各社のビジネスモデルや営業戦略の骨格を掴むヒントを得ることができます。

以下では、コミュニケーション領域として「チャットワーク vs Slack」、経費精算領域として「楽楽精算 vs SAP Concur」、そして最後に在宅勤務の広がりによって注目が集まっている電子契約領域として「クラウドサイン vs DocuSign」についてARPUの比較と考察を行っています。

この記事は、SaaSビジネスに携わっている方、営業戦略や経営戦略に興味のある方、海外SaaS企業の成長戦略に関心がある方に最適な内容になっています。

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・コミュニケーションツール領域(チャットワーク vs Slack)のARPUを比較

・経費精算領域(楽楽精算 vs SAP Concur)のARPUを比較

・電子契約領域(クラウドサイン vs DocuSign)のARPUを比較

・まとめ

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