Q:中国No.1フリマアプリ「Idle Fish」の急成長につながった2つの顧客価値とは?

A. 1. 単なるマーケットプレイスを超えた「コミュニティ」の提供

2. アリババグループの資産をフル活用した「高い利便性」の提供

[この記事はKimmyさんとの共同制作です。]

最初にKimmyさんのご紹介ですが、Kimmyさんは中国語に堪能なので、中国語で書かれた記事やリサーチデータから、まだあまり日本で知られていないワクワクするビジネスをご紹介くださいます。

爆速で成長するAlibabaのフリマアプリ「Idle Fish」

Idle Fish(中国名:??)とは、Alibabaが運営する個人間の中古品取引アプリです。

日本のメルカリ、ラクマなどと同じサービスを提供しています。

2014年に誕生したこのフリマアプリは、出品者数は6,000万人、DAU(Dayly Active User=日毎のユーザー数)は2,000万まで成長しています。

特にDAUの前年同期比の成長率は凄まじく、公表情報によると2018年9月時点で成長率が31%なのに対し、2019年9月時点で前年同期比67%まで増加しています。まさに「爆速」という表現がぴったりだと言えます。

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Alibaba 2019 Investor Day (September 23-24, 2019)

メルカリと比較した20代ユーザーの多さ

DAUが爆速で成長しているIdle Fishでは、実際にどれぐらいの取引がされているのでしょうか。参考までに日本のメルカリとユニットエコノミクスを比較してみます。

http://bit.do/fiyzf
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Alibaba 2019 Investor Day (September 23-24, 2019)

国金証券 『行?数据分析?告』(2019年10月20日)

表を見ると、Idle Fishの1年間のGMV(Gross Marchant Volume=取引総額)は約1.5兆円と、メルカリの約3倍の規模の取引がなされていることが分かります。

月間アクティブユーザーあたりの取引額 (GMV÷MAU)は、Idle Fishが2.5万円、メルカリが3.6万円。メルカリのほうが1.45倍大きいということが分かります。

その理由の一つとして、ユーザーの年齢構成の違いが挙げられます。

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快看 | ??2018年?售?破千?元,90后用?占61%

メルカリ FY2019.6通期 決算発表資料

利用ユーザーの年齢構成のグラフを見ると、Idle Fishでは20代が61%も占めています。一方、メルカリは20代が30%、30代が36%と、Idle Fishよりコアユーザーの年齢層が高いことが分かります。

MAUあたりのGMVと年齢構成から、Idle Fishは購買力が比較的低い20代がコアユーザーであることが分かります。

中国の競合と比較した「Idle Fish」の利用率の高さ

次に、中国の競合サービスと比較してみます。

2019年8月に中国で出された業界レポートによると、Idle Fishの市場シェアは、競合の転転(Zhuan Zhuan)と合わせて92.2%となっており、寡占状態を形成しています。

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Aurora Mobile (NASDAQ: JG) 『2019年Q2移?互?网行?数据研究?告

さらに別の証券レポートを見ると、2019年9月時点のMAUと平均利用時間から、競合のZhuan Zhuanと比較して、Idle Fishのほうが多く利用されていると分析されています。

pg.jrj.com.cn/acc/Res/CN_RES/INDUS/2019/10/20/fdf3d1f6-c5d9-4378-b07f-4e6c894e689a.pdf.jpg
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[pg.jrj.com.cn/acc/Res/CN_RES/INDUS/2019/10/20/fdf3d1f6-c5d9-4378-b07f-4e6c894e689a.pdf 国金証券 『行?数据分析?告』(2019年10月20日)]

図の左グラフの「MAU比較」を見ると、競合のZhuan Zhuanが3,000万人弱であるのに対し、Idle FishのMAUは6,000万人と2倍の規模になっています。

さらに興味深いことに、図の右グラフで示している「1人あたりの1日平均閲覧時間」が、競合のZhuan Zhuanが2分弱であるのに対し、Idle Fishは5分弱と2.5倍も長くなっています。

つまり、Idle Fishは利用人数、利用時間においても競合サービスを圧倒的に引き離していることが分かります。

Idle Fishの競合優位性=2つの顧客価値

創立からわずか5年で、Idle Fishがここまで競合を引き離すことが出来たのはなぜでしょうか。その鍵として、顧客に対して以下の2つの価値を提供していることが挙げられます。

 

1. 単なるマーケットプレイスを超えた「コミュニティ」の提供

2. アリババグループの資産をフル活用した「高い利便性」の提供

Idle Fishが提供する2つの顧客価値について、1つずつ見ていきたいと思います。

1. 「コミュニティ」による付加価値の創造

Idle Fishは、単なるマーケットプレイスよりも「コミュニティ」を作ることを重視しています。2019年9月時点で、累計130万のコミュニティが生まれています。

実際にアプリ画面を見てみると、一般的なフリマアプリだと「検索」タブが置かれることが多い場所に「コミュニティ」タブを設置しています。

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ユーザーが気軽に「テーマ」や「地域ごと」、「好きなアイテム」のコミュニティを作ったり、SNS機能(フォロー、発信、いいね、コメント、共有)を使うことで、互いへの信頼感が生まれるように設計されています。

このコミュニティ機能により、単なる中古品に「どんなユーザーがどのように使ったか」というストーリーが付加され、その商品に対する理解が深まります。

その結果、コミュニティ内の平均取引時間が、コミュニティ外と比べて1/3に減少しました。また、売買取引を超えたユーザー同士の交流を楽しめることで、上述の通り1日の平均閲覧時間も競合の2.5倍まで伸びています。

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参考までに2017年の公表情報によると、コアユーザーである20代は平均で4つのコミュニティ(全体平均は3.29)に参加しており、コミュニティの43%が20代によって自発的に作られたものとなっています。

Idle Fish『90后分享??消??告』(2017)

つまり、コミュニティ機能は20代との親和性がとても高く、Idle Fishの20代ユーザーの利用率の高さ(全体の61%)の鍵となっています。

2. Alibabaグループのポートフォリオを活用した高い利便性

次に、アリババグループの資産をフル活用した「高い利便性」について見ていきます。これには、「始めやすさ」、「使いやすさ」、「安心」という3つの要素が挙げられます。

「始めやすさ」:Alipayと連携した初期登録

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Idle Fishの初期登録をする際、Alipay(決済アプリ)のIDを連携することが出来ます。中国においてNo.1シェアを持つ決済アプリであるため、ユーザーの大半はAlipayのIDを既に持っている状態であり、すぐにIdle Fishの利用を始められます。

「使いやすさ」:Taobaoと連携したワンクリック出品

https://imachu.com/2018/11/18/中国で一番人気の中古フリマアプリ「閑魚」/.jpg
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中国で一番人気の中古フリマアプリ「閑魚」

Idle Fishで出品する際に、以前にTaobao(ECサイト)で購入した商品の履歴がアプリ上で表示されます。Taobaoで購入して不要になった商品はワンクリックで出品可能することができ、写真撮影や情報入力の手間が省けます。また、売上金はAlipayにチャージされるため、いちいち銀行口座に出金する必要がなく、いつでもどこでも売上金を使えます。

「安心」:Zhima Creditと連携した信用スコアの表示

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Alibabaは、グループが持つ個人の決済/消費データを分析したり、金融機関などの外部データと連携することで、信用度をスコア化する「Zhima Credit」というサービスを持っています。この信用スコアを表示することによって出品者の信用度を可視化し、ユーザーがどの出品者から買うかという判断基準を提供しています。

Zhima Creditは、トラブルを起こすと直接的にスコアに影響が出るように設計されているため、不正/不良品を出品することの抑止にもなっています。

つまり、コミュニティという定性的なものと、信用スコアという定量的なものを組み合わせることで、ユーザーがIdle Fishへの信頼感を築きやすく、競合に対する優位性にも貢献して

いるのではないでしょうか。

これまでの内容をまとめると、Alibabaグループのエコシステムは以下の図になります。新品を買い、不要になったら中古品サイトで売り、売上金でまた新品を買う。それぞれのピースがかっちりと合い、正の循環が加速することでIdle Fishの成長に貢献しています。

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今後の課題:ビジネスモデルの確立

ここまでIdle Fishに関するポジティブな面を見てきましたが、実はかなり重要な課題が存在しています。それは、未だにビジネスモデルが確立していないことです。

Idle Fishは、「マーケットプレイス<コミュニティ」というポジショニング戦略を取っているため、TwitterやFacebookが利用料を取らないように、Idle Fishは売り手にも買い手にも利用料も売買成立時の手数料も無料で提供しています。

現在の収益源は事業者から広告費を取るほか、ユーザーからクレジットカードで決済した場合の手数料1%を徴収するのみとなっています(売り手、買い手のいずれかが負担)。

??上怎?付款?用的是支付宝??

もし今後ユーザーから利用料や手数料を取る場合、ユーザーが納得できる料金設定でない限り、一定の割合でユーザーが離れることが予想されます。そのために、他のフリマアプリでは大きな収益源となっている、売買時の手数料を安易に設定できないというのが現状です。

Alibabaグループにおいて数少ない「ソーシャル」コンテンツであることを活かし、今後コミュニティが成熟するにつれて、そこで得られたデータの分析から新しい商品やサービスの開発につなげることが期待されます。

今回は、中国で今爆速で成長している中古フリマアプリのIdle Fishを見てみました。

今後どのような形でマネタイズを進めていくのか、注目してみていきたいと思います。

企業や社会の次の動きはすべて「数字」が物語っている――。アメリカ・日本のネット企業(上場企業)を中心に、企業の決算情報から「次の一手」を読み解くコラム。経営者だけでなく、決算を基礎から学びたいビジネスパーソンや学生にも役立つ情報を届けます。

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