『週刊新潮』鈴置高史氏記事の、驚くべき「嫌韓こじつけ」

『週刊新潮』サイトの該当記事キャプチャ。

週刊誌『週刊新潮』サイトに掲載された記事に、筆者のツイートが曲解される内容があった。その内容を検証し反論する。

●新型コロナウイルス

21日、『デイリー新潮』サイトに「韓国で新型肺炎の患者が急増 保守派は「文在寅政権の無能、無策」と総攻撃」という記事が掲載された。書き手は元日経記者の鈴置高史氏。

記事は新型コロナウイルスに関する日韓の状況をまとめたもので、要約すると「韓国が日本の対応のマズさをあざ笑っていたが、韓国内の状況も悪くなりもはや笑えない」というものだ。

そして記事中に筆者が先日書いた3つのツイートが引用されていた。

これを週刊新潮と鈴置氏はどう解釈したのか。少し長いが該当記事を筆者のツイート部分を含め引用する(太字は該当記事のまま)。

我々は先進国民になった

――しかし、政府が患者数を操作するなんて……。

鈴置:韓国人はそう疑うものです。2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の社会的な後遺症です。当時は186人が感染者と診断され、37人が死亡しました。隔離された人は1万6693人にのぼりました。いずれも日本の国立感染症研究所が発表した数字です。

 前の朴槿恵(パク・クネ)政権時代の出来事ですが、当時、野党の大物だった文在寅氏は激しく保守政権の無能・無策を非難した。今回、同様の感染症が大流行すれば、文在寅政権は何と言って非難されるか分からない。そこで「数字の操作」が疑われたのです。

 それに国民の中にも「患者の増加」や「市中感染の発生」を認めたくない空気が濃かった。MERSの際は日本で患者が発生しなかったこともあって、いたく韓国人のプライドが傷つきました。

 当時、WHOは病院内での感染予防策が不十分であることや、見舞客が長時間、患者と接する習慣などを韓国で大流行した原因と見なしました。

 隔離された患者が病室の鍵を壊して脱走するなどの事件も起きたため、韓国紙には「民度の低さ」「国の後進性」を嘆く声が満ちました。

 韓国人は5年後の今、「新型肺炎を上手に抑えた」ことで「もう我々は先進国民になったのだ」と祝杯を揚げる気分になったのです。

鈴置:韓国での感染者数が落ちついていたのに比べ、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での感染も含め、日本で患者数が増え続けたからです。

 韓国人はどんなことでも日本と比較します。今回は「MERSでは負けたが、新型肺炎では勝った」と快哉を叫んだのです。

 元・在日韓国人で「The Korean Politics」編集長の徐台教(ソ・テギョ)氏は2月14日、日本語のツイッターで以下のようにつぶやきました。

・今のダイアモンド・プリンセス号と同じことを、韓国で、文大統領がやっていたらと考えてみてください。日本のワイドショーはずっ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~と付きっきりで取り上げるでしょう。「韓国検疫崩壊」とか言って。

「日本検疫崩壊」と当てこすったつもりでしょう。徐台教氏は翌2月15日にも、韓国がなぜ日本と比べうまくやっているかをツイッターで説明し、誇りました。以下です

・韓国政府は4月15日の総選挙を控え、感染拡大への対策において失態が許されないという緊張感があるのも大きい。さらに、過去のSARSやMERSを通じ整備された国家システムがある程度の水準で機能している。

・コロナウイルスに対する日韓の対応の差の一つは、予算投入の差というのは明白。具体的には調べていないが、韓国は1/28の段階で20億円以上を、その後も矢継ぎ早に予算を出し、さらには2000億円を超える予備費の投入も見越している。ニュースにも「~~自治体がコロナに~~億を投入」というのが目立つ。

日本に五輪開催の資格なし

――なるほど……。「韓国はすごいぞ」ですね。

鈴置:韓国各紙も「優れた韓国、劣った日本」を争って報じました。中央日報の「クルーズ船内の日本人乗客『これでは五輪開催できない。国際社会が強く問題提起を』」(2月15日、日本語版)はダイヤモンド・プリンセス号に乗っているという匿名の日本人の感染管理への不満と、日本は東京五輪を開く資格がないとの批判を報じました。

 朝鮮日報の「衛生先進国、日本が赤恥…米国に続き、カナダ、香港、台湾もクルーズ脱出作戦」(2月17日、韓国語版)はダイヤモンド・プリンセス号の外国人を下船させるため、各国が航空機を派遣する状況を「日本が赤恥」との見出しで報じたのです。

 中央日報の「韓国政府、日本政府に『新型肺炎の診断試薬の開発情報を提供する』」(2月18日、日本語版)は以下のように「韓国が上、日本が下」を強調しました。

・韓国では新型肺炎に感染したかどうかを6時間内に確認できる迅速診断試薬が開発されて今月から民間の医療機関に配布されたが、日本にはまだ迅速診断試薬がないことが分かった。

 日本でも6時間で診断できますから、この記事は間違っています。事実には関係なく「韓国が上で日本が下」と断じて喝采を叫ぶのが韓国メディアなのです。

 こうした上から目線の空気の中、2月18日には与党「共に民主党」の鄭春淑(チョン・チュンスク)議員が国会で「日本も新型肺炎の市中感染が始まっている。中国同様に汚染地域に指定すべきだ」と主張しました。

 朝鮮日報の「与党議員、『日本も新型肺炎の汚染地域に指定すべき』」(2月19日、韓国語版)が報じました。この記事は姜京和(カン・ギョンファ)外交部長官の「中国から要請があれば、医療陣の派遣を積極的に検討する」との国会答弁も伝えています。

「先進国である韓国と、遅れた日本や中国」という図式を、韓国人は国を挙げて楽しんでいたのです。

出典:デイリー新潮

これを見ると、鈴置氏は筆者のツイートを完全に「韓国すごい、日本はダメという韓国人の典型」という脈絡で理解し、利用しているのが分かる。

だが筆者は一連のツイートは、断じてそういった方向のものではない。

まず、一つ目のツイートについては、昨年8月のチョ・グク騒動を思い浮かべてみてほしい。ワイドショーを中心に「いかに韓国がおかしいのか」という番組を作るために躍起になっていなかったか。

筆者にもいくつかの日本メディアから連絡が来たからよく分かる。そうした点をあてこすったもので、何かあればすぐに「韓国崩壊」などと書き立てるような、本質から外れた質の悪い情報を伝える週刊新潮などの週刊誌や、日本のワイドショーや一部新聞を批判したものだ。

二つ目は韓国は日本と異なり「疾病管理本部(CDC)」があり、その機能が拡大を続けている。例えば15年のMERS(中東呼吸器症候群)流行を受け、検疫システムが整備される一方で、16年には緊急状況センターや感染病診断管理課などが新設されている。日本に比べ国家システムの改善が見られるのは事実である。

さらに、三つ目については、こうしたシステム改善が4月15日の総選挙を控えた政府・与党側の緊張によって良い方向に機能していた実態を述べただけだ。

こうした筆者の考えを取材もせず、無断引用の下に「韓国すごいぞ」などと曲解し、さらに「『先進国である韓国と、遅れた日本や中国』という図式を、韓国人は国を挙げて楽しんでいたのです」などとレッテルを貼るのは言語道断だ。

そもそも、常識のある人間なら日本にもルーツを持つ筆者が「日本ざまあみろ」と言っている風に受け止めないだろう。日本のより良い対策をうながし、日本の市民に情報を提供する以外の目的はない。

逆にこうした「読み込み(曲解)」は普段、鈴置氏や週刊新潮編集部が韓国に対し抱いている気持ちの表れではないだろうか。韓国社会に問題がある場合、それこそ「祝杯をあげている」のではないか?

一連の引用方法は、昨今のネットの流行り、つまり韓国をどうにか貶め溜飲を下げる記事を書くことにより、読者を集めるという日本型の嫌韓記事の範疇を一歩も出ない典型的なものだ。

週刊新潮はまず、ツイートを引用するならば相応の相談や取材を筆者にするべきであった。「韓国観察者」などと名乗る鈴置氏も、普段の嫌韓的な主張や韓国内の政治状況に対する理解の仕方は自由だが、元新聞記者としての最低限のルールは守るべきであっただろう。そうでなければ単なるネット文士である。

少子高齢化・青少年の精神健康・地方消滅・介護など、日韓の社会問題は驚くほど似ている。新型コロナウイルスの拡散もしかりだ。

そうした問題を日韓の良いところを互いに受け入れ共に解決すべき時代に来ているのに、週刊新潮のようなメディアや元ベテラン新聞記者が相変わらずこんな調子では、先が思いやられる次第である。