「隣国との紛争は最悪」…韓国一の政策提言NGO代表に日韓関係を聞く

韓国のNGO『参与連帯』の朴亭垠(パク・ジョンウン)事務処長。同団体提供。

8月2日の閣議決定による韓国の「ホワイト国」除外措置を受け、激しい感情を戦わせている日韓政府。長年の市民活動からこの事態をどう見たのか、韓国一のアドボカシー(政策提言)NGO『参与連帯』の事務処長に話を聞いた。

●「見慣れない日本の姿」に驚き

8日、インタビューに応じてくれたのは『参与連帯』で事務処長を務める朴亭垠(パク・ジョンウン)さん。2000年から同団体で働き始めたベテランだ。過去、付属の研究所をはじめ国際局や政策企画など幅広い分野で第一線に立ち、18年2月から事務処長(実務のトップ)についた。

「これまでも過去事(過去史と同様の意味)の問題はあったが、近い国だとずっと思ってきた。それがこんな措置(ホワイト国除外)を受けて、日本がとても見慣れない国に覚えてきた。後ろから強く殴られた気分だ」。

連日の激務による疲労を隠せない朴さんは、この日のインタビューで日本政府に対するこのような「驚き」を何度も口にした。

その上で、「韓国では今も日本による植民地支配に対する認識が大きいのに、安倍政権にはそれがないという事が分かった。加害国として最低限見せてはならない態度というのがあるのに、その意識が全く無い。だから韓国市民の反応が爆発的になる」と韓国社会の受け止め方を分析した。

また、「韓国の市民は『私達が日本にとって脅威のはずはない』と思っているのに、日本政府はそうでないと考えているようだ。日韓の利害関係が共有されず、その間隙が広まった。簡単に解決する話ではない」と今回の葛藤が長期化すると見立てた。

一方、「隣国と紛争状態になることが、いかに大変なことなのか分断国家の経験から知り抜いている。今なお50%以上の日本市民が平和憲法維持に賛成していることに心からの敬意を表明し、その底力を信じる。東北アジアの平和を共に構想していければ」と期待を込めた。

以下に、インタビュー詳細を載せる。

ソウル市鍾路区通仁洞にある参与連帯のビル。2007年に新築した。一階はカフェとなっている。8日、筆者撮影。
ソウル市鍾路区通仁洞にある参与連帯のビル。2007年に新築した。一階はカフェとなっている。8日、筆者撮影。

●参与連帯とは

『参与連帯』の正式名称は「参与民主社会と人権のための市民団体(People's Solidarity for Participatory Democracy)」。日本や海外ではPSPDとも呼ばれる。1994年に、弁護士や学者・人権運動家などにより結成された。

「新たな時代の中で、優れた民主主義を建設するための行動は、社会と政治舞台の只中で、そして国民の日常生活の過程で起こらなければならない。民主主義とは文字通り国民が国の主人であることを意味する」。

当時の創立宣言文にこうあるように、87年の民主化を経てもなお「主人(国民)が使用人のように扱われ公僕に過ぎない人々が主人の上に君臨する時代錯誤的な現象」、つまり権力が国民の手にない状況を変えるために組織された。

そしてその役割を「国民自らの参加と監視」を受け持ち、「数年に一度の選挙でなく毎日毎日、国家権力が発動する過程を厳正に監視する番人」であるとした。

その後、司法改革をはじめ、地方税の不当徴収を監視するなど日常生活での権利を獲得するための運動や、00年総選挙での落選運動を展開し韓国社会に根を降ろす。

さらに03年のイラク派兵反対、06年の米韓FTA反対、12年にはインターネットを通じた選挙運動の許可、14年にはセウォル号沈没の真相究明、16年と17年には朴槿恵・李明博両大統領を告発し「キャンドルデモ」の裏方として活躍するなど、常に韓国社会に問題意識を提供し続けてきた。

現在の常勤職員は53人、会員は約15000人。政府の支援を一切受けずに市民からの寄付で運営されている。主要分野は「権力監視」「社会経済」「平和国際」となっており、参加に「参与社会研究所」や「公益法センター」に加えカフェも運営している。

また、人材輩出でも名高い。公正取引委員会や金融委員会、青瓦台(大統領府)民情主席秘書官など文在寅政権の要職に同団体出身が8人も就いたことが話題になった。現ソウル市長の朴元淳(パク・ウォンスン)弁護士も創立当時からのメンバーである。

参与連帯のロゴ。「社会を変える市民の力」とある。8日、筆者撮影。
参与連帯のロゴ。「社会を変える市民の力」とある。8日、筆者撮影。

(1) 参与連帯は毎週デモを行っている「安倍糾弾市民行動(NGO680あまりの連合体)」に参加していない。何か理由があるのか。

今回の事案がどんなものであるのか、規定するのが難しい。日本政府の意図についても解釈が多様で「百家争鳴の時代」と呼んでいる。今回の措置について安倍政権を糾弾することに異見があるわけではない。

だが、(安倍糾弾市民行動は)他にも自由韓国党や朝鮮日報などを「積弊(積み重なった悪弊)の手先」と見なし、糾弾している。

今の運動にこれらを含めることに力を注ぐべきなのか…「来年の総選挙は日韓戦(筆者注:文在寅・与党支持者が第一野党の自由韓国党を親日派=日本と見なす立場からこの表現を使う)」という話があるが、私達はこうなってはいけないと考える。日韓問題を国内政治に活用してはならない。

だから参加を見合わせた。ただ、象徴的な日である8月15日は一緒に活動すると思う。その後についてはどうするか調節している。

(2) デモの主催側には民族主義、国家主義の団体もいるようだ。そこに特定の団体に所属しない一般の市民が参加している。それにしても、日本の措置に対し、韓国市民の反応が全体的に鋭かった。

私の考えでは、デモに参加する人は「安倍糾弾」に賛同して来ている。そうでなくとも今年は3.1独立運動100周年記念ということで、韓国政府が力を入れてきた。民間行事も多く、政府の委員会もできてドラマでも独立運動が取り上げられた。そんな中、100年ぶりに日本からこうした措置が飛んできたのは、とても驚きだ。

それも、過去事の問題で貿易上の報復措置を持ち出してきた。例えば、経済的な紛争の中で今回の措置が採られたなら、反応もまた違っただろう。しかし今回のように過去事を理由に経済報復をもって日韓関係全体を揺さぶろうというのは、韓国人として受け入れがたい。

3週にわたり毎週土曜日に行われている「安倍糾弾デモ」。日本と安倍政権を区別し、あくまで安倍政権を糾弾するのが特徴だ。三回目となる8月3日には数千人が集まった。筆者撮影。
3週にわたり毎週土曜日に行われている「安倍糾弾デモ」。日本と安倍政権を区別し、あくまで安倍政権を糾弾するのが特徴だ。三回目となる8月3日には数千人が集まった。筆者撮影。

(3) 日本はあくまでも「輸出管理制度の運用見直し」としている。

当初、日本が立場を表明する姿(7月初頭の半導体素材輸出見直しの際、日本の各紙は徴用工判決への対抗措置と一斉に報じた)を見て、韓国人は植民地支配の被害者として歴史認識が大きいのに、安倍政権にはそれが無いというのを感じた。

河野外相の態度(韓国大使に「極めて無礼」と発言)を見ても、「日韓関係を未開のものと見ているのだな」と思った。日本に「いつまで謝罪すれば良いのか」という世論があるのは知っている。だが、加害国であるならば、最低限見せてはならない態度というものがある。日本が憎い訳ではない。平素からの安倍政権の性格や韓国への見方が積み重なって爆発的なものになった。

(4) 昨年10月末の韓国大法院の判決以降、日本の政治家が強制徴用の事実関係において反省する言葉を述べたことがない。

その通りだ。「当時のことはとても残念だけども、日韓協定があるから…」と言うのと、「そんな事は無かった。日韓協定で終わりだ」というのは異なる。この部分を日本政府は刺激している。だからこそ、今回の問題を早期に片付けることが難しい。

(5) 日本政府は見誤ったのか。日本に対し寛容な韓国内の右派の援護射撃を受けて文政権の足がもつれると思ったのかもしれない。

日本政府は韓国をよく知らないようだ。日韓関係の悪化で政府が揺さぶられることはない。日韓の間隙が広まった点を知る必要がある。日本の保守集団の中でも右側にいる安倍政権と、過去事清算をより進めようとする―うまくいっていないとはいえ―文在寅政権の関係はこれまでとは異なる。

また、文政権は過去事において、市民社会の支持を得ている。もちろん、日本の市民社会も安倍政権とは異なる見方をしているだろうが、安倍政権のように「我々に問題はなかった」という態度では答えがない。問題解決が難しい。

8月1日、タイで行われた日韓外相会談での両国外相。外務省ツイッターより引用。
8月1日、タイで行われた日韓外相会談での両国外相。外務省ツイッターより引用。

(6) 北朝鮮の非核化と共に朝鮮戦争(50~53年)の休戦協定を平和協定へと転換し、米朝国交正常化までも含む「朝鮮半島平和プロセス」を日本が阻害しているという見方も韓国内にある。

この点についても、今回の件で認識が変わった。これまで、「日本が朝鮮半島平和プロセスを望んでいない」というイメージは存在したが、それが「実際に日本が揺さぶることができる、妨害することができる」というふうに変わった。

その一つに「韓国が北朝鮮への戦略物資を搬出した疑惑」がある。事実かどうか、根拠もないことを持ち出してきた。これはこれまで無かった見慣れない光景であり、やはり受け入れられない。繰り返すが日本すべてというよりも、安倍政権が見せる態度、政策、措置が複合的に組み合わさって、過去に対し一切反省や詳察がないと感じるに至った。

ここで朴処長は筆者に対し「なぜ日本で嫌韓感情が広まっているのか」と尋ねてきた。筆者はこれに対し「政権周辺の政治家の韓国を見下した態度、これをそのまま報じ、さらに煽るメディアなどいわば『官製嫌韓』といった状況が続いている」と答えた。

(7) 韓国では日本の「嫌韓」感情をよく知らず、うまく受け入れられないようだ。

韓国の市民は日本の方々が考えるよりも日本の市民を尊重している。その上で、私は政治的に躍動感のある韓国に比べ日本は停滞していると考えている。言論の自由において日本は韓国よりも後進的な状況にあるし、いわゆる民主的手続きを重要視する点でも日本に劣っていない。

だからこそ、日本政府が私達を邪険に扱う状況を単純に飲み込むことができない。安倍政権が望む平和憲法の改定であろうが、右傾化であろうが軍国主義、集団的自衛権の行使などすべてにおいて必要なのは「脅威」だ。

朝鮮半島において緊張が低下して脅威を無くそうとしているのに、なぜ韓国を叩くのか。私達を「脅威」に仕立て上げようとしているのか?と考える。

韓国にそんな考えはさらさらない。どうやれば私達が日本の脅威になるのかと問いたい。この間隙が大きすぎる。最近、ソウル市の中区が日本を非難する旗を掲げ、市民の抗議ですぐに降ろす事件があったが、韓国の市民は成熟しているし、自負心も高い。

豊かで歴史も文化的にも深みを持つ日本で、なぜこんなことが起きるのか。安倍政権を見ると不思議でならない。

なぜ嫌韓が広まるのか。それが日本市民の本音なのかもしれないが、そうだとしても戦後に生まれた私達の世代はそれを知らずに生きてきた。後ろから強く殴られた気分だ。知らない日本が存在したという思いすら起きる。

3日のデモは、旧日本大使館前で行われた。「平和の少女像」がある場所だ。プラカードには「日本は経済報復を撤回し強制徴用を謝罪せよ」とある。3日、筆者撮影。
3日のデモは、旧日本大使館前で行われた。「平和の少女像」がある場所だ。プラカードには「日本は経済報復を撤回し強制徴用を謝罪せよ」とある。3日、筆者撮影。

(8) 参与連帯では「ホワイト国」除外が決まった8月2日に声明書を出した。その中で韓国政府に責務を果たすよう要求した。これは何を指すのか。

「後退するな」ということを婉曲に表現したものだ。参与連帯では2015年の慰安婦合意も、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も無効であり廃棄せよと主張してきた。

これらはすべて、日米間の軍事協力のための事前協議だった。GSOMIAについては、情報の取得という日本の軍事行動をどうやって公式に認めることができるのか、平和憲法改定を支持するのか?という立場だ。つまり日本の軍事行動と軍事協力はいけないというもの。

しかしこれが今や日米間の協力の象徴のようになってしまった。米国の目を気にして何も手を出せなくなった。このように、朴槿恵政権の負の遺産が多い中で、問題意識を持って外交的に解決する意志を持ち続けるべきという立場だ。

(9) 韓国政府が賠償金を払えば解決するという意見がある。韓国内の日本通の学者や元外交官もそう求めているが。

参与連帯が先日開いた討論会でも大きな議論となった。日本通の方々は早く解決するべき、という立場から主張しているのは理解する。しかし、日本政府は中国では日本企業に賠償金を払わせている一方で、今回の判決を何も認めていない。この状態では私は個人的にこの案に賛成できない。

(10) 植民地支配の不法性を棚上げにした1965年の日韓協定を変えるべきという意見もある。どう見るか。

1951年のサンフランシスコ講和条約から、韓国は除外され(筆者注:韓国と北朝鮮は戦勝国に含まれず、賠償請求権を持てなかった)、その枠組が65年の日韓協定へと続いた。朝鮮半島平和プロセスなどこの体制を揺さぶる力と、このサンフランシスコ体制を維持する力が競い合っていると見る。

韓国はこれまで、日米同盟の下位パートナーとして存在してきた。文政権も米韓同盟自体を尊重し、米韓同盟を大きく変えようとするものではない。だが、過去事においてはこれまでの政府と異なる。だからこそ、日本との関係において、下位パートナーではいられないと考えるのだろう。だから日韓関係はズレるしかない。

しかし、朝鮮半島の分断を維持する力は強く、変えるのは容易でないと感じる。最近になって、過去のどんな時よりも「韓国は東北アジアでどんな国として存在すれば良いのか」を悩むようになった。

8月2日、タイ・バンコクで行われた日米間外相会談。左から康京和外交部長官、ポンペオ米国務長官、河野太郎外相。外務省ツイッターより引用。
8月2日、タイ・バンコクで行われた日米間外相会談。左から康京和外交部長官、ポンペオ米国務長官、河野太郎外相。外務省ツイッターより引用。

(11) 米国は韓国にホルムズ連合軍への参加を求めている。

参与連帯は海外派兵に一貫して反対してきた。今回も「米国が要求するから」以外の理由がない。(派遣が噂される)清海部隊の任務は「有事の船舶保護」だが、今は有事ではない。米国とイランの核協定を問題視し葛藤が起きているだけだ。

韓国の憲法5条は国際平和の維持に寄与するとしている。今回の件は軍事的に米国とイランの葛藤に介入する憲法に反するものだ。青海部隊はアデン湾に展開しているので、それをホルムズ海峡に送るというもの。違憲的であり同意の手続きを回避するものだ。来週に記者会見を準備している。

(12)北朝鮮との非核化交渉を考えると派兵はやむを得ないように思える。

隣あう国(北朝鮮を指す)と関係改善が必要な場合、それが常に名分となるという良い例だ。この20年間、何も変わらない。米朝協議のためにと軍隊を派遣し、米国から武器を買って現状維持を図ってきた。

市民団体として、堂々と拒絶しろと言いたいが、その場合、米国が対抗措置を韓国に採ることにでもなったら一大事となるだろう。こういう論理で引っ張られる。ミサイル配備に防衛負担金に、韓国は完全にカモだ。北朝鮮が変わって、韓国政府も堂々としてほしい。

(13) 7月以降、日本の市民社会とは連絡を取り合っているのか。日韓市民社会の共同声明などを出す予定があるか。

今も核兵器廃絶の行事に参加するため、参与連帯のスタッフが日本を訪れている。8月末にはモンゴルで国際会議もある。8月15日に共同で行事を行う案があったが、今のところは決まっていない(筆者注:別の市民団体が計画している)。

日本の和田春樹さんをはじめとする知識人が出した声明(『韓国は敵なのか』)に賛同し署名する計画もあるが、それには日本の措置撤回が先だ。

今は韓国側の声明文の草案を作っている状況だ。私達が期待するのは、植民地支配、強制動員、慰安婦といった反人道的な問題はあってはならない事だという点を認めようということだ。日本にもそのように考える方は多いと思うし、ここがスタートだと思う。

参与連帯の会員加入を勧めるパンフレット。「共に作る夢が現実になる」とある。筆者撮影。
参与連帯の会員加入を勧めるパンフレット。「共に作る夢が現実になる」とある。筆者撮影。

(14) 今の日韓関係にどんな解決策があるか?

一度に大きく変わることはないと思う。日本国内の世論やメディアの状況が悪いので、これを変えることは簡単ではない。それでも私達は地道にやるしかない。日本の市民社会に韓国の市民の考えを伝えていくことを拡大していくしかない。

もう一度強調したいのは、隣の国と紛争状態になるのは互いの国民の生活にとって、良い影響が一つも無いという点だ。私達は分断体制の中で、北朝鮮と50年間以上紛争状態で生きてきた。

政府は相手をダシにして、政治的な名分を得て何でもやろうとするだろう。この点は日本も韓国も同様だ。これではいけない。互恵的な関係になるために努力しなければならない。

(15) 最後に、日本の市民に伝えたいことは。

こんなに長い期間、互いに交流してきたのに、大事な点が共有できていないと考えてしまう。それでも両国は民主主義や自由貿易において多くの進展を重ねてきた国だから、互いに認めあえれば良い。

特に前に述べたような、過去の歴史における反人道性に対し最低限の認識があるならば、日韓が友好に向かうことは難しくないだろう。

日本で今も50%以上の人々が平和憲法の改定に反対していることに心からの敬意を表明する。その上で安倍政権を支持している点が気がかりではあるが、黙々と平和憲法を守ってきた底力を信じる。今後、南北が和解しても東北アジアの平和を守る役割は日韓のものなるだろう。そこでの協力を想像しようと呼びかけたい。(了)