2度目の米朝首脳会談のカギは「同時的措置」、韓国は歓迎ムードも

昨年6月、シンガポールで歴史的な首脳会談を行った米朝首脳。写真は合同取材団。

2月27、28日にベトナムで開催されることが決まった、2度目の米朝首脳会談。これまでにない「同時的措置」が採択される可能性が高まっている。見どころと韓国内の雰囲気をまとめた。

「トランプ大統領のお年玉」

トランプ米大統領は5日(現地時間)、米連邦議会で行った一般教書演説で「金正恩委員長と私は2月27日、28日にベトナムで再会する」と述べた。これにより、昨年6月に続く2度目の米朝首脳会談が開催される見通しとなった。

なお、会談を行う具体的な都市名は明かされなかった。メディア各社の報道によると、開催地はベトナムの首都ハノイかリゾート都市のダナンに絞られているとはいえ、昨年5月のトランプ大統領による「ドタキャン騒動」もあり、開催直前まで目を離せない。

筆者の住む韓国では、いずれのテレビ局もこの内容をトップニュースとして報じている。青瓦台(韓国大統領府)も6日午後に開いた会見で「歓迎する」とのコメントを出した。旧正月の5連休最終日ということもあり、ツイッターなどSNSでは「トランプのお年玉」という表現も目についた。

こうした韓国の歓迎ムードの根底にあるのが、青瓦台のコメントにあった「ベトナムではより具体的で実質的な進展の歩みを踏み出すことを望む」という期待だ。

期待の根拠…「平和と繁栄への前進」

昨年6月の米朝首脳会談には、北朝鮮建国から70年を経て米朝首脳が初めて会ったという「顔合わせ」以上の意味があった。

金正恩委員長とトランプ大統領は以下の4項目を含む共同合意文を採択した(翻訳は筆者)。

1. 米国と朝鮮民主主義人民共和国は、平和と繁栄のための両国民の要望に基づき、新しい米朝関係を構築することを約束する。

2. 米国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島における持続的で安定した平和体制を構築するための努力を共にする。

3. 2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化のため努力することを約束する。

4. 米国と朝鮮民主主義人民共和国は、すでに発見された遺骸の即時的な本国送還を含む、戦時捕虜と戦闘中行方不明者(POW/MIA)の遺骸発掘を約束する。

この共同合意文から読み取るべきは、米朝両首脳が「朝鮮半島の非核化」の目的が「平和と繁栄」にあるという認識を共有したという部分だ。

6者協議の成果である2005年の「9.19合意」において、朝鮮半島の非核化は「東北アジア全般の平和と安定という大義のために」と位置づけられていた。

これが13年後に、より具体的な目的に更新されたことになる。そして、2度目の米朝首脳会談で、実行計画が出ることが期待されている。

どんな実行計画か?ビーガン演説から読む

会談の焦点は、1月31日に、米側の交渉代表を務めるビーガン北朝鮮政策特別代表がスタンフォード大学で行った演説で大部分明かされていると見てよい。

まず米国の要求は「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)」だが、具体的には「究極的には私たちは北朝鮮が保有する核分裂物質、武器、ミサイル、発射台そしてその他の大量殺傷武器の除去と破壊を確実にするべき」としている。

一方で、「FFVDやCVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)や他の何であれ、具体的で合意された(非核化の)定義を持っていない」ともした。

さらに、「(金委員長は)北朝鮮のプルトニウムとウラン濃縮施設の解体と破壊を約束した。単純に寧辺にある施設以外にも、こうした場所は北朝鮮のプルトニウム再処理とウラン濃縮プログラム全体を含むもの」した。

その上で、「トランプ大統領は我がチームと北朝鮮側に、非核化に関する相当な(水準の)、検証可能な進展と果敢な現実的な措置が第2次首脳会談で出てくることを期待するという点を明らかにした」と交渉ラインを定めた。

一方で「(金委員長が求める)相応措置については次の協議(6日現在、平壌で行われている米朝実務協議を指す)で議論する問題」とした。

1月31日(現地時間)、スタンフォード大学で演説する米国国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表。写真は国務省ツイッターより引用。
1月31日(現地時間)、スタンフォード大学で演説する米国国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表。写真は国務省ツイッターより引用。

キーワードは「同時に」

だが、注目すべき内容は、その方法論にある。やはりビーガン代表の演説と発言から引用する。

「我々はやはり、北朝鮮が最終的で完全に検証された非核化の約束を守る場合、双方の首脳が昨夏、シンガポールの共同声明で行った全ての約束を同時に、そして並行的に推進する準備ができている」

「私が何かをし、相手が何をし、どちらが先に行動するのか?この点こそが私たちが解決し抜け出そうとする点だ」

「私たちが話し合っているのは、関係を改善する方法、より安定的で平和で、究極的により合法的な平和体制を朝鮮半島にもたらす方法、どのように非核化を進めるのかに関する方法を同時に探すことだ」

「私たちは、相手が全てのことを果たすまでは何もしないと、言っていない」

こうした発言から、今回の米朝首脳会談では「米朝国交正常化」「(南北米中)平和協定」「段階的制裁解除と経済協力」と前述したような広義の「FFVD」をゴールに並べ、そこに至るいくつかの段階を「同時に」踏んでいくようなロードマップが示されるものと推測できる。その上で、その第一歩を踏み出すことになるだろう。

「目標はこうした全てを同時に結ぶことだ。私は最後の核兵器が北朝鮮を離れ、制裁が解除され、大使館に国旗が掲揚され、平和協定が締結されることが全て同じ時間に起きる、この完璧な結果の瞬間を思う」という言葉は示唆的だ。

韓国では「4者終戦宣言の期待」も

筆者もそうであるが、韓国内では昨年の「未完の課題」であった「終戦宣言」への期待も高い。

なお、何かと誤解が多い終戦宣言についてはこの記事を参照されたい。

朝鮮戦争「終戦宣言」の年内実現なるか…カギはやはり文在寅

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180831-00095174/

特に、香港の「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙や韓国の連合ニュースが、「米朝首脳会談が行われる時期に中国の習近平主席がベトナムでトランプ大統領との会談を行う」と報じたことから、ベトナムに文在寅大統領が合流し、そこで一気に南北米中の4者で終戦宣言を発表する可能性が取りざたされている。

この一見、常識外とも取れる発想には根拠がある。

昨年6月、シンガポールで初の米朝首脳会談が行われる際、米朝が終戦宣言に合意すれば、すぐに文大統領は現地に駆けつける予定だった。広く知られた話で、筆者も現地で、受け入れ準備をしていた韓国当局者から聞いている。

なお、韓国メディアは「青瓦台が6日、文大統領がベトナムを訪問する可能性は低いと明かした」と報じている。しかし、「昨年から準備してきたので、時間的余裕は十分」という専門家の見方もあり、予断を許さない。

いずれにせよ、実現可能性すら疑われた2度目の米朝首脳会談の輪郭が見えてきたことで、韓国政府や韓国社会ががぜん活気を帯びてきたのは間違いない。

筆者が今月初頭、政府関係者に聞いたところによると、青瓦台は一連の「好感触」を元に3月に予定されていた内閣改造も後回しにし、米朝会談と「その後」に向けた準備に全精力を傾けているという。

2月に入り、平昌五輪があった昨年と同じように、朝鮮半島情勢は再び動き始めた。