韓国世論の6割超が南北首脳会談に賛成…若者層の動向に注目

平昌五輪開幕式での韓国の文在寅大統領(左から二人目)と北朝鮮の金与正特使(右隣)(写真:ロイター/アフロ)

平昌(ピョンチャン)五輪開幕の裏で北朝鮮により電撃的に提案された南北首脳会談。各社世論調査から読み取れる韓国の有権者の捉え方は現実的なものだった。

金与正特使が提案

2月10日、北朝鮮代表団は青瓦台(韓国大統領府)で、韓国の文在寅大統領らと首脳級会談を行った。

この席で、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の実妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第一副部長は、文大統領に金正恩氏の親書を手渡すと共に、「北朝鮮への訪問」を要請、南北首脳会談を提案した。

これに対し、文大統領は「今後、要件(環境、条件)を整え、実現させよう」と答えた。実現すれば、00年、07年に続く3度目の南北首脳会談となる。

11日、三池淵管弦楽団の公演を観覧しながら涙を流す、北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長。この涙に心揺さぶられたという書き込みがネットで多く見られた。写真は青瓦台提供。
11日、三池淵管弦楽団の公演を観覧しながら涙を流す、北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長。この涙に心揺さぶられたという書き込みがネットで多く見られた。写真は青瓦台提供。

南北関係の今後について韓国内では、「返礼のための特使を五輪期間中にも送るべき」や「核凍結での合意を前提とするのでなく、ミサイル発射実験の停止で折り合えばいい」といった、やや性急とも取れる意見を筆頭に、様々な可能性が報じられている。

そうした中、韓国の市民に「南北首脳会談についてどう思っているのか」を聞いた世論調査の結果が発表された。今記事では同じ時期に発表された3社の世論調査を比較、分析する。

3社中1社目:KSOI(韓国社会世論調査)

KSOIは南北首脳会談について、他の2社と比べて多い3つの質問を行った。順に見ていく。

KSOI設問1:「北朝鮮による南北首脳会談の提案についてどう思うか」。グラフはKSOIの報告書より引用。
KSOI設問1:「北朝鮮による南北首脳会談の提案についてどう思うか」。グラフはKSOIの報告書より引用。

一つ目は「北朝鮮による、南北首脳会談の提案についてどう思うか」という質問だった。

(1)「北朝鮮の核問題および南北関係の改善意志を表明したもの」48.1%

(2)「米韓同盟の亀裂を望む、偽装平和攻勢に過ぎない」43.7%

(3)分からない、無回答:8.2%

調査概要:2月12日~13日、全国満19歳以上の成人男女1026人、電話面接調査(調査員が設問と回答を読み上げ、回答者が選択)誤差は95%の信頼水準でプラスマイナス3.1%。(以下共通)

韓国の市民が「油断していない」ことがうかがえる結果だ。

年齢別に見てみると、最も多く(1)を支持した層は40代(60.2%)で、(2)を最も支持した層は60歳以上(54.7%)だった。いわゆる進歩派(革新派)は40代に多く、保守派は60代以上に多いことが分かる。

また、五輪開幕前に、女子アイスホッケー単一チーム結成への反感を露わにした満19歳~29歳のうち47.4%が(1)を選択し、(2)を選択したのは43.8%だった。

KSOI設問2つ目:「南北首脳会談の開催と関連し、次の意見のうちどちらにより共感するのか」。グラフは同社報告書より引用。
KSOI設問2つ目:「南北首脳会談の開催と関連し、次の意見のうちどちらにより共感するのか」。グラフは同社報告書より引用。

二つ目は「南北首脳会談の開催と関連し、次の意見のうちどちらにより共感するのか」という設問だ。

(1)「北朝鮮の核凍結・核廃棄が前提とならないのならば会う意味がない」50.9%

(2)「北朝鮮の核問題解決において、南北首脳が会うくらい確実なものはないので、条件をつけずに会うべきだ」45.8%

(3)分からない、無回答:3.3%

南北首脳会談が核問題の進展をもたらすのかについて、韓国市民の意見が割れている様子が分かる。

やはり年齢別に見てみると、(1)を最も支持した層は60代以上で64.7%だった。(2)を最も支持した層は40代の65.2%となり、やはり対照的な結果を見せた。

満19~29歳では56.0%が(1)を支持し、60代以上に次ぐ高い結果となった。

KSOI設問その3:「時期と関係なく、南北首脳会談を開催することに対しどう思うか」。グラフは同社報告書より引用。
KSOI設問その3:「時期と関係なく、南北首脳会談を開催することに対しどう思うか」。グラフは同社報告書より引用。

三つ目は「時期と関係なく、南北首脳会談を開催することに対しどう思うか」という設問だった。

(1)とても賛成:30.4%

(2)だいたい賛成:47.0%(賛成合計:77.4%)

(3)だいたい反対:12.2%

(4)とても反対:8.3%(反対合計:20.5%)

(5)分からない、無回答:2.0%

こちらは賛成が圧倒的な多数だった。前の質問と合わせて見る場合、やはり目の前の課題として、核問題が南北関係に深い影を落としていることが分かる。

年齢別には60代以上を(賛成62.8%、反対32.5%)除き、軒並み75%以上の高い水準で賛成している。満19~29歳も78.5%が賛成している。

2社目:韓国リサーチ(依頼者:京郷新聞)

次は、韓国の進歩系の日刊紙「京郷(キョンヒャン)新聞」が世論調査会社「韓国リサーチ」に依頼したものだ。多くの設問の中の一つが、南北首脳会談について聞くものだった。

「韓国リサーチ」による「南北首脳会談の賛否」を問う設問。グラフは同社のデータを元に筆者が作成。
「韓国リサーチ」による「南北首脳会談の賛否」を問う設問。グラフは同社のデータを元に筆者が作成。

こちらの設問は、KSOIと異なり時期や議題を設定せず、ただ南北首脳会談への賛否を聞いたものだ。

(1)とても賛成:27.1%

(2)だいたい賛成:41.9%(賛成合計:69.0%)

(3)だいたい反対:14.5%

(4)とても反対:10.8%(反対合計:25.3%)

(5)分からない、無回答:5.8%

調査概要:2月12日~13日、全国満19歳以上の成人男女1008人、電話面接調査(調査員が設問と回答を読み上げ、回答者が選択)。誤差は95%の信頼水準でプラスマイナス3.1%。

前出のKSOIの調査と同様、南北首脳会談自体への賛成は高いことが分かる。

年齢別でも同様に、賛成は3,40代で75%を超える。反対は60歳以上で35.3%、50代でも31.0%。19~29歳では22.3%にのぼった。

3社目:リアルメーター(依頼者:tbs交通放送)

最後は、定例調査を行う「リアルメーター」社の調査だ。定例調査とは別に、南北首脳会談について聞いたものだ。

「リアルメーター」社による南北首脳会談開催に対する世論調査結果。グラフは同社報告書より引用。
「リアルメーター」社による南北首脳会談開催に対する世論調査結果。グラフは同社報告書より引用。

(1)「朝鮮半島の平和定着のための出発点として賛成」61.5%

(2)「北朝鮮制裁と圧迫が優先なので反対する」31.2%

(3)分からない;7.3%

調査概要:2月14日、全国満19歳以上の成人男女500人、自動応答(自動音声に対しプッシュ番号で回答)誤差は95%の信頼水準でプラスマイナス4.4%。

年齢別にはやはり50代(37.4%)、60歳以上(36.7%)の反対が目立った。19~29歳は賛成65.8%、反対28.1%だった。

この質問もやはり、南北首脳会談自体の賛否を聞く質問と言えるが、他の2社と比べ数値が若干落ちているのが気になるところだ。

蛇足になるが付け加えると、「数値の差は、調査方法が自動応答(あらかじめ録音された質問に番号をプッシュして答える形式)である点による」という。同社のイ・テクス代表が15日朝のラジオ番組「キム・オジュンのニュース工場」に出演した際に述べている。

これは「自動応答の方が、世論調査会社の職員との通話をするよりも正直な意見が出やすい」ということだ。

理由は「シャイ(隠れ)保守」の存在。韓国の保守層は同じ保守派の朴槿恵大統領が弾劾されたことにより、本音をさらけだすことに慎重になっているとの見方だ。

なお、リアルメーター社は2017年、韓国政治コミュニケーション学会の学術大会で、韓国内29の世論調査機関のうち、最も政治的な偏向性が少ない機関に選ばれている。

若者層がどの世代よりも冷静

今回の世論調査結果の中で、筆者が特に関心を持ったのは、19~29歳という若者層の「冷静さ」と「存在感」だった。

KSOIの調査で明らかになったが、この層は南北首脳会談自体には賛成しつつも、簡単に譲歩するべきではないという立場を明確にしている。

2月12日、「蔚山科学技術大学校(UNIST)」の卒業式に参加した文在寅大統領。写真は青瓦台提供。
2月12日、「蔚山科学技術大学校(UNIST)」の卒業式に参加した文在寅大統領。写真は青瓦台提供。

これは、現在の韓国社会を中心となって動かす4、50代の、進歩派に偏る中年層からは物足りなく映るかもしれない。実際、女子アイスホッケー南北単一チーム結成の際には、「国家」や「民族」に対するドライな反応に対し、違和感を表明する中年層の姿が目立った。

だが今後、この若者層こそが、年齢や政治理念によって偏りが激しい韓国社会における一種の「バランサー」になる可能性がある。

北朝鮮をめぐる陣営論やしがらみから唯一自由な世代かもしれない。筆者は今後、積極的にこの世代の動向を探っていきたい。