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「1月9日に高位級会談」韓国が北側に提案…金正恩氏の「新年辞」受け

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
1月2日、政府中央庁舎で記者会見を行う、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官。

韓国・統一部の趙明均(チョ・ミョンギュン)長官が2日午後記者会見を行い、北朝鮮に対し「1月9日に板門店で南北高位級会談を開くこと」を正式に提案した。

「時期・場所・形式にはこだわらず」

趙長官は会見の冒頭で「1月9日に板門店で南北高位級会談を北側に提案する」と明かし、「南北が南北改善における相互の関心事に対し、虚心坦懐に議論できることを期待する」とした。

さらに「時期・場所・形式にはこだわらない」点を付言し、北朝鮮側が柔軟に対応できる余地を残した。

金正恩氏が1月1日の新年辞で韓国に対し「平昌五輪への参加意志を示し、南北当局による対談に応じる用意がある」と言及したことに対する返事となる。

このため、高位級会談という会議の枠組みについても「今後の北朝鮮側との交渉次第」とした。

今回の会談提案と昨日1日の金正恩氏の発表について「事前の共感はなかった」と線を引きつつも「解釈は任せる」と昨年5月の文在寅政権発足後から、細かい交渉が続いてきたことをにじませた。

2日、韓国メディアが一斉に報じたところによると、12月に中国・昆明などで崔文洵(チェ・ムンスン)江原道知事などが北朝鮮側の幹部と接触し、五輪参加を積極的にうながしてきた。

報道には「北朝鮮の元山(ウォンサン)にクルーズを派遣し、束草(ソクチョ)まで輸送する」といった具体的な提案まであったとされる。

会見にはたくさんの報道陣が詰めかけ、韓国社会の関心の高さを示した。1月2日、筆者撮影。
会見にはたくさんの報道陣が詰めかけ、韓国社会の関心の高さを示した。1月2日、筆者撮影。

「米韓軍事訓練延期」は明言避ける

この日、文在寅大統領の「歓迎」コメントに続き、南北関係を主管する統一部長官が正式に会談要請をしたことにより、南北会談開催に向けてカウントダウンが始まった。実現すれば2015年12月の南北次官級会談以降、約2年ぶりとなる。

今後の焦点は本来、五輪期間中に始まることになっている米韓軍事訓練が延期になるのか、という点だ。文在寅大統領は先月19日の米メディアとのインタビューで「米側に訓練延期を提案した」とした。

趙長官はこの日「今回の韓国側の提案は米側との協議を経たもの」としつつも、この点については明言を避けた。

また、会議の議題に「非核化」がのぼるのかどうかも焦点となる。

この日、趙長官は「これまで南北対話が長いあいだ中断していたので、韓国としては様々な議論をしたいが、まず一次的には金正恩委員長の新年辞にもあったように、平昌五輪への選手派遣について集中することになる」と見通し、慎重な態度を崩さなかった。

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ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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