休校から3週間、子どもたちへの影響、何が心配か(教職員への緊急調査結果)

(写真:アフロ)

 全国的に休校(臨時休業)になってから、約3週間が過ぎた。卒業式なども終え、今日あたりからは春休みに入っている学校も多い。

 この休校中、子どもたちの様子は、どうだろうか。わたし自身、小学生と中学生の4人の子育て中でもあるので、当事者でもあるし、現在進行形の話でもある。

 「よく遊べる」、「のんびりできている」、「春休みが長くなっただけかな」という見方もできるだろうし、そう思う子どもたちも少なくないだろう。多くの場合、大人が思うよりも、子どもたちはタフだ。自分なりに時間の使い方、過ごし方を考えて、行動している子もたくさんいることだろう。

 だが、そうもいかない子もいるし、心配なこともある。子どもたちにとっては、急に3月の学校生活が断ち切られてしまったわけだし。

写真素材:photoAC
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■子どもたちの様子、学校の先生たちはどう感じているか

 子どもたちのことを一番よくわかっているのは、保護者と学校の先生たちだと思う。そこで、今回、教職員向けに緊急アンケートを実施した。インターネットで呼びかけたところ、この3、4日で600人近い回答をいただいた(※)。

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  • 2020年3月16日~20日に実施(現在も受付中)。この記事は中間集計での一部の報告。
  • 回答者は、小中高、特別支援学校等の教職員。教諭のほか、校長や学校事務職員等も含む。
  • わたしのSNSを通じて協力を呼びかけたので、回答者に一定の偏りがある可能性はある。

 次のデータは、「休校ならびに春休みの児童生徒の様子として、特に心配なことはありますか」という質問への回答結果だ。

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出所)妹尾昌俊「休校(臨時休業)中の教職員の仕事についての調査」

 「日常的な学習習慣から離れてしまう子が多くなる」、「インターネットでの動画やゲームなどへの依存が高まる」については、「大いに心配だ」という声が約半数にも上る。「少し心配だ」も合わせると、8割以上の教職員が心配なこととして指摘している。

 学校で5時間、6時間と学習していたのと大きくちがうから、こうした心配が起きるのも自然なことかもしれない。

 急な休校が決まった当初は、「仕事があるのに、家に子どもだけで留守番させておくのは心配」、「小学生の低学年だけでも、学校で受け入れできないか」といった話が多かった。これは、学校の福祉的な機能、子どもたちの居場所としての機能に注目した話だ。

 上記の機能も大事であることは確かなのだが、学校は保育所ではない。教育機関である。憲法上も、子どもたちには教育を受ける権利、学習権が保障されている。わたしたちが心配しないといけないことは、子どもたちに居場所はあるか、という点に加えて、子どもたちの学習の場が奪われてしまったのではないか、という点でもあるはずだ。この点で、上記の調査結果は、楽観視できないことを示唆する。

 もちろん、ゲームやYouTubeざんまいな毎日だったとしても、子どもたちにとっては、教育上望ましくない、とは必ずしも言えない。大好きなものにはまって、プログラマーやクリエイターなどに育っていく可能性だってある。だが、消費時間が長いだけでは、生産者側にはまわれない。世の中に、サッカー好き、音楽好きは多いが、サッカーや音楽関係でメシが食える人はごく少数なのと同様だ。

■家庭間格差や学校間格差が広がる

 「児童生徒の学力格差が広がる」という回答も約7割に上る。何を「学力」と言うのか、「格差」と呼ぶのかは、議論があるところなので、今回の調査もひとつの目安にしかならないが、心配なことのひとつと言えると思う。今回の休校を契機に、官民さまざまなところで、教材の無償提供等の動きが出た。ネット上にはたくさんの動画や教材があふれている。だが、家庭にネット環境やデバイスのない子どもの多くは、アクセスできない。

 また、より重要なことは、たとえネット環境などがあっても、学びに動機づけられていない子は、アクセスしない、あるいは続かないという現実だ。

 保護者にとっても、教師にとっても、重要なのは、子どもたちの学習への動機付けをサポートできるかどうかだ。もちろん、学習といっても、ネットの授業動画を見ることとか、机にかじりつくことだけではないが。

 学校の先生にとって、悩ましいのは、こういう問題がある、起こることはわかっていても、子どもたちと接する手段がほとんどないことだ。児童生徒にひとり一台PCなどが整備されていれば、できることはもっとあっただろうが。

 たとえば、文科省は休校中の学校等の取組について、事例集を公表している。ぜひご覧いただきたいが、その一部は下記だ。

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出所)文部科学省「学校の臨時休業の実施状況、取組事例等」

 こうした事例のように、ネットなどを活用して、児童生徒の様子をフォローしたり(先生が声をかけたり)、授業動画等を流したりしている例もあるにはある。ほかの例としては、岐阜県の白川村では、地方気象台の気象情報官が講師を務める特別授業を、Zoomというネット会議のアプリで実施した(中日新聞2020年3月20日)。白川村が豪雪地帯である理由を、気象のプロからも学ぶという、おもしろそうな授業だ。

 だが、こうした工夫を行えている学校は、全国的には少数だ。わたしの調査でも、「インターネットや動画を活用した授業等の配信」を実施しているという回答は、8%ほどにとどまっている。

 つまりは、こういうことだ。今回の休校で、子どもたちの学びを止めない働きかけ、あるいは子どもたちの好奇心が高まるようなきっかけづくりができている学校、家庭もあれば、そうではない学校、家庭も多いということだ。学力格差というよりは、内実は、学校間格差と家庭間格差が広がる可能性が高いということだ。

 4月以降、かりに無事に学校が再開されたとしても、子どもたちの学習習慣や学びの差が、多少なりとも広がったうえでのスタートである可能性が高い。教科書が途中で終わってしまったことだけが問題ではない、のである。4月には例年に増して、より丁寧な対応が学校には求められる。こういう状況なのだから、先日(3/17)、文科大臣が全国学力テストの延期を発表したのは、当然と言えば、当然のことかと思う。(個人的には、延期でなく、中止でいいと思っているが。)

 わたしの調査の自由記入のなかにも、学校の様子として、「子どもたちのために、できるかぎりのことは考えて実行している」という回答もあった一方で、「教育委員会からの指示待ちだ。思考停止状態だ」という回答もあった。「子どもたちの自主自立(自律)、主体性を育てる」などと言ってきた学校だが、自分たちの主体性があるところと、ないところがある。繰り返すが、これは教職員の意識や校長のマネジメントの問題に加えて、ICTなど予算、環境の差でもある。

■しんどい子に、だれが寄り添えるか

 「児童生徒のストレスがたまる」という回答も約8割に上った。家や学童保育にいる時間が長くなりがちだったり、友達等と遊べない子もいるなかでもある。また、この新型コロナのことで、社会もピリピリしているのは、子どもたちにも影響する。

 「給食がないので、食事や栄養で心配な子もいる」も「大いに心配だ」という回答が3割にも上る。「教職員や保護者の見えないところで、いじめやいやがらせが起こる、増える」は他の項目よりは少ないが、「大いに心配だ」も7.5%ある。

 こうした点、家庭の役割が大きい話ではある。休校や春休みになるなか、教職員ができることには限界がある。

 とはいえ、家庭頼りだ、とするだけでは、しんどい子どもたちがずっと放置されてしまう可能性もある。学校によっては、校庭を開放して遊び場として提供したり、気になある児童等には電話等でフォローしたり、SSW(スクール・ソーシャル・ワーカー)らが家庭訪問したりしている例もある。

 教材等の提供の動きは活発だが、こうした、しんどい子どもたちへのケアは、なかなか民間ビジネスにはなりづらいし、一部のNPO等にとどまっているかもしれない。家庭任せ、あるいは学校任せだけでなく、行政も動いていくべき話だと思う。

 以上、ざっとではあるが、休校中、そしてこれからの春休みになるにかけて、子どもたちに心配なことを述べてきた。家庭でしっかり考えていきたいことではあるが、学校や行政、社会としても考えたい。4月に学校が再開されたとしても、こうした問題が広がった可能性を想定して、様々な工夫を続けていくことが必要だろう。

★アンケートにご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

(参考記事)妹尾昌俊【全国休校】通知表など、たいした話ではない。教師、保護者、政府にはもっと向き合うべきことがある。