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新生マーメイドジャパンが世界水泳で披露した「美シキ歌」、14歳の比嘉にも期待

沢田聡子ライター
(写真:ロイター/アフロ)

新生マーメイドジャパンが、ブダペストで国際大会デビューを果たした。

メダル獲得はならなかった昨夏の東京五輪後、メンバーの入れ替わりがあったアーティスティックスイミング日本代表は、6月17日から始まった世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)で、世界への第一歩を踏み出した。今大会ではソロに専念している乾友紀子が、テクニカルルーティン(以下TR)・フリールーティン(以下FR)の両種目で金メダルを獲得。また、チーム種目でもフリーコンビネーション・TRで銀メダルを勝ち取った日本代表は24日、チーム種目では最後となるFRに臨んでいる(日本はハイライトルーティンには出場せず)。

帆足圭吾氏が作曲したゲーム音楽「美シキ歌」などを使用する日本チームのFRは、モダンなセンスと勢いが感じられるルーティンだ。今まで日本の弱点とされてきたリフトも、今大会では高さが増したようだ。何より印象的だったのはメンバーの生き生きとした表情で、いい雰囲気で練習を積んできたことがうかがえる。以前より関係者の中ではルーティンを振り付けるセンスに定評があったという中島貴子ヘッドコーチの手腕が、初の大舞台で発揮された。

まだ正確性において完璧ではなく、粗削りだがそれだけ伸びしろがあるともいえる日本は、チームFRで1位の中国・2位のウクライナに続き3位に入り、銅メダルを獲得した。アーティスティックスイミングで長年世界の頂点に君臨するロシアがウクライナ侵攻の影響で不在だったとはいえ、93.1333という得点は新生日本代表がメダルを争える国として世界に認められたことを示すものだ。

FRを泳いだ8人の中で、東京五輪を経験したのは4人。ちょうど半数の4人が、新たな日本代表メンバーとしてこの世界選手権に臨んでいる。その中でも最年少・14歳の比嘉もえは、当初デュエット出場が予定されていた安永真白の怪我もあり、吉田萌と組んでデュエットTRにも出場した(日本はデュエットFRに出場せず)。結果は4位でメダルを獲得することはできなかったものの、大器の予感を漂わせる比嘉が、ジュニア年齢である14歳で早くも大舞台を経験したことの意味は大きい。

2024年パリ五輪に向けて国ごとの序列が決まる世界選手権に新しい体制で臨んだ日本は、まずまずのスタートを切った。何よりも好ましいのは、チームが漂わせる清新な空気だ。今年の世界選手権は福岡で行われる予定だったが、コロナ禍により福岡での開催は来年に延期されている。一年後の福岡で、日本代表がさらに成長した姿を世界に印象付けてくれることを期待したい。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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