「雑草があれば2カ月で有機野菜作り始められる」常識を覆した土作りの方法とは?

野菜が育っている時が一番楽しいと笑う吉田俊道さん(写真提供/いただきます事務局)

 激変していく時代に、将来を見すえ、自給自足をも視野に入れて、「畑作りができるようになりたい」「自分が食べる物は自分で作りたい」という人たちが増えてきている。そこで、有機野菜農家として、25年のキャリアを持つ、吉田俊道さん(菌ちゃんふぁーむ代表)に、素人でも簡単にできる『元気野菜作り』についてお聞きした。(元気野菜の選び方、食べ方については第2回インタビュー記事にて。)(3回連載の最終回)

  吉田さんは1959年長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、農業改良普及員として長崎県庁に就職。96年から有機農業に新規参入。99年から「 NPO法人 大地といのちの会」理事長として、「生ごみリサイクル菌ちゃん野菜作り」と「元気人間作り」を全国に普及している。『生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』など著書多数。

  菌ちゃん先生とも呼ばれる吉田さんが、長年の土作り、野菜作りを通して実感する、今伝えたい『循環と共生の新時代』とはどういうものなのか。

野菜たちが元気にのびのびと育つ『菌ちゃんふぁーむ』(写真提供/吉田俊道)
野菜たちが元気にのびのびと育つ『菌ちゃんふぁーむ』(写真提供/吉田俊道)

「収穫する時より、野菜が育っている時が一番うれしい」

―― 改めて、実際に農業をやってみて、有機野菜を作るのは楽しいですか。

「何というんでしょう。人によって違うんでしょうけれども、畑にいる時って楽しいですね」―― どういう楽しさですか。

「作る喜び、生産する喜びかな。よく分からないです」

―― 例えば。

「いろんな人がいて、収穫するのが好きという人は、結構いらっしゃるんです。私の場合は、もう収穫するところまできてしまうと、少し興味がなくなるんです。収穫できる状態まで持ってくるのが楽しいし、元気な野菜が育った時はうれしいし、今日も元気に育っているな、キレイだなって見ると、やっぱりほっとします」

―― 青々と茂った畑の光景を見ると。

「そうそう、そこまで持ってくるまでが楽しいんです。それを収穫するのは、他の人にしてもらいたいなというくらい」

―― ちょっと話が変わるんですけれども、例えば、ミュージシャンの方に取材をすると、曲を作っている時が楽しくて、曲が出来上がってCDになってリリースされると、それこそ、リリース、もう手放すというか、手が離れているから、作っている時が一番楽しいと言うんです。そんな感じですか。

「そうそう、それそれ」

―― 本当に、農業はクリエイティブな仕事ですね。

「うん、だと思います」

豊富な知識とあくなき探究心で、画期的な有機農業を実践している吉田さん(写真提供/吉田俊道)
豊富な知識とあくなき探究心で、画期的な有機農業を実践している吉田さん(写真提供/吉田俊道)

―― ただ野菜を育てるんじゃなくて、それを商品として提供する、人の口に入るということでちゃんとやらないといけないし、農家として利益を上げていかないといけないし。

「そうです。そこにはやっぱり相当な知恵と、常にいろいろ考えるのが好きじゃないと駄目やけど、趣味で野菜を作る分についてはそんなに難しくないんです。はっきり言ってうちのやり方はド素人でもできるから(笑)、どこよりも難しくないんじゃないかな」

―― 全くの素人の人が研修に来たらやっぱり変わりますか。やっているうちに人間としてもなんか感じが変わります?

「変わります。変わりますが、その人その人の性格というのがあってやっぱり向き不向きがありますよね」

―― 向いている人はどんな人。

「考えるのが好きな人かな」

―― 自分でいろいろ考えてできる、知恵をどんどん出して開発していくということですか。

「開発というか、適切な判断ができる。ちょっとしたことなんだけれども、農業というのは毎日いろんなことがある。ここに来てやってみたら分かる。その場面場面でちゃんと気づいて考えて判断しないといけないことがいっぱいなんで、とにかく考えるのが好きな人がいい。そして、手先が器用でテキパキとやれるような人だったらOKです。正規スタッフとして入るにはですよ。趣味の農業ならのほほんとゆっくりできますから」

通常5年かかる有機の土作りが2カ月でできるように

―― ただ、一般的には有機野菜を作るというのは、大変なんだろうなと。お金もかかるだろうし、すごく手間がかかるだろうと思われていますけれども、作ってみてどうですか。

「いやあ、なかなかうまくいかないし、実際に大変だったんです。でも、今は原理原則が全部分かっちゃったら、簡単にできるということも分かったんです」

―― 簡単に、とはどういうことですか。

「だから今、みんなに伝えているのは、まずは土作りです。雑草だけで野菜ができますから」

―― 雑草だけで?

「そう。しかも2カ月後に種を植えられます。有機農業の土作りは、今まで最低でも5年かかっていたんです。昔の有機農家を見てみてください。『農薬を使いたくない、無農薬で頑張るぞ』と。そうすると虫が来るわけです。その虫を手で取ったりして、一生懸命頑張りながら、それでも農薬を使わずに何年もやっているうちに、だんだん虫が来ない畑になっていくわけ」

―― はい、そういうイメージがありますが、今は違うんですね。

「最近は有機野菜で虫食い野菜なんかないじゃないですか。昔、無農薬野菜は虫食いだったでしょう」

―― 虫食い野菜はおいしい証拠くらいに思っていました。

「でも今は有機、オーガニックの店屋さんに行ってみて。虫食い野菜なんかあまりないから。やっぱりそれだけ土が良くなってきたんです。最低でも5年かかっていたんです。ところが、その原理原則を応用したら、5年かかるものが2カ月でできるようになった」

―― 大発見じゃないですか。

「大発見なんです。ただ、2カ月で本当に5年分うまくいくかというのは別よ。完璧じゃないけれども、取りあえず2カ月たったら、まあまあ無農薬で野菜はできます。ただ、青虫を全然手で取る必要もないぐらいのキャベツを作ろうと思ったら、もうちょっとかかります。やっぱりプロのレベルまでにするには。でも、通常の無農薬の野菜作りなら、2カ月後にはできる」

―― それはもう完全に発明ですね。

「そうかもしれませんね。コロンブスの卵と一緒、科学的な理屈はちゃんとありますから」

今までの経験がすべて生かされている

―― ついに、吉田さんの夢がかないましたね。農学部での知識もある、農業改良普及員として現場で人に教えていた経験もある、というので、有機野菜作りを「自分がやらねば誰がやる」と始められた。多くの経験を重ねて、うまくいくことが実証できて、その成功体験を講演会や実践会で教えられているんですね。

「そうなんですよね、本当に。県職員を辞めた後も、よく農業改良普及員の時の夢を見ていたんです。よっぽどその仕事が好きだったんでしょうね。そして今は県の農業改良普及員はやめたけど、自分なりの農業改良普及員をやってるんでしょうね」

―― 夢がかなって、お母さんをはじめ、反対していた人たちは、今はどういう感じですか。

「私がやっと成功する前に、一番喜んでもらえるはずの母は死んじゃいました」

―― そうなんですか…。でも絶対に天国で見てくれていますよね。喜ばれていると思います。

「そうですね。あの母の愛情や、父や多くの人の大反対があったから、本当にここまで頑張れた」

―― 元はといえば、子どもの頃、お母さんと一緒に野菜を作ったのが始まりですものね。「そう。あの頃はフダンソウというのをよく作っていた。フダンソウというのは、夏でも秋でもできるんです。それを母親が作って、魚の煮付けに入れて、いまだに味を覚えています。今になって、そのフダンソウがすごく栄養価の高い野菜ということが分かったんで、それも今、作っています」

―― へえ。では、今までの経験がすべて生かされたということですね。

「はい、本当にそう思います」

”菌ちゃん先生“こと吉田さんの話を多くの人が聞きたがっている(写真提供/吉田俊道)
”菌ちゃん先生“こと吉田さんの話を多くの人が聞きたがっている(写真提供/吉田俊道)

年間120~130回の講演会に呼ばれて

―― 貴重な経験談も含めて、実践できることを、講演会で話されていたんですよね。今まで、月にどれぐらいオファーがあって、出かけられていたんですか。

「年に120~130回くらいですかね。だいたい3日に1回はやっていましたかね」

―― すごい。それは全国津々浦々?

「呼ばれたら行くという感じで」

―― 例えば、本来だったら4月、5月はどの辺を回る予定だったんですかね。

「もうスケジュールを消してしまっていますもん、忘れました(笑)。東京とかあちこちに行く予定だったんですけれども、なくなっちゃいました」

―― 具体的には、どういうテーマで話をしてくださいと言われるんですか。

「一番多いのはやっぱり健康の話ですかね。あとはやっぱり具体的な野菜の食べ方と作り方。私の話はあまり難しくないんで、以前、講演を聞いた人が私を推薦してオファーが来るという感じです」

―― 講演会にはどういう方が聞きに来られますか。

「いろんなパターンがあります。若いお母さんが主催の場合は聞きにくる人は若いお母さん方が多いし」

―― 教育委員会とか市の行政とか。

「が、呼ぶ場合もあります。どっちかというと一般市民が呼ぶパターンのほうが多いですね」

―― 実際の農家さんから呼ばれることはありますか。

「農家が呼ぶパターンが一番少ないです」

―― そうですか。なぜかな。

「やっぱり先入観が強すぎるから。結局農薬は絶対に必要と思っている方が多いですから。有機農業をやっている農業者グループが呼んでくれることはあるけれども」

―― そうですか。もったいないですね。やはり、ハードルが高いのかもしれませんね。

吉田さんの元気野菜作りが簡単にまとめられているDVD(撮影/淡田由貴)
吉田さんの元気野菜作りが簡単にまとめられているDVD(撮影/淡田由貴)

ベランダでも有機野菜作りができる

―― 今、自分で野菜を育てたいという方がにわかに増えていて、でも、いきなり畑を借りて、というのは難しい。手軽にベランダでできたら、と思っていたら、ちょうど、『超カンタン菌ちゃん野菜づくり』というDVDを作られたんですね。

「はい。私も出演した、ドキュメンタリー映画『いただきます ここは、発酵の楽園』のオオタヴィン監督に制作していただきました。すごくよくできたDVDなんです」

―― 拝見しましたが、ほんとに映像もキレイで、わかりやすかったです。これなら私も実践できそうと思いました。そこで、こちらでもざっと野菜作りについて、説明してもらってもいいですか。

「はい」

―― 吉田さんは『菌ちゃん先生』とも呼ばれていますが、菌、つまり、微生物に特化した有機野菜作りというのは、どういうことをするんですか。

「とにかく微生物が喜ぶ環境を作る。微生物にエサを与え、有用微生物が増えやすい環境にすること」

―― そのために、やり方としてはどういうことを。

「生ごみ、または雑草を使って、土作りをするんです。調理くず、食べ切らなかった食べ物を使って微生物を育てる菌ちゃん漬け物農法か、どこでも生えている雑草を使って微生物を育てる菌ちゃん雑草農法かのどっちかです。」

プランターでこんなにも大きく元気な野菜が育てられる(写真提供/吉田俊道)
プランターでこんなにも大きく元気な野菜が育てられる(写真提供/吉田俊道)

―― 本当にプランターですぐに作れるものですか。

「はい、作れます。しかも、家庭で出た生ごみか、道ばたの草を使って作れるので、無理なく無駄なく始められます」

―― だから、吉田さんの本のタイトルが『生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』というタイトルなんですね。

「はい。菌ちゃん漬物農法というのは、『生ごみリサイクル菌ちゃん野菜作り』の一つの方法なんです。生ごみを発酵させて漬け物にしてから、土作りをするんです」

―― なるほど。そうすると、余計な経費もかからず、生ごみも減らせますね。というか、野菜の皮も芯も生長点も今まで捨てていたところを全部食べているから、それだけでも生ごみが少なくなりますね。

「そうなんですよ。みなさん、丸ごと野菜を食べるようになって、土作りするのに生ごみが足りないとよく言われます(笑)」

―― であれば、野菜の生ごみだけじゃなくて、果物の皮、卵の殻とか、お茶っ葉とかでもいいんですか。

「全部いいです。食べ切らなかった有機物、生き物の部分なら大丈夫です」

生ごみを発酵させて、土作りをする

―― で、その生ごみをどうすればいいんですか。

「漬物にするんです」

―― え? ぬか漬けみたいにするんですか。

「そうそう。ぬか漬け。乳酸菌を培養した米ぬか、米ぬかぼかし、というのを使うんです。ネットで“生ゴミ用ぼかし”で調べたらどこでも出てきますよ」

―― それでまず発酵させて、肥料を作るんですね。

「塩もちゃんと入れないといけない。とにかく生ごみ処理をしようと思うんじゃなくて、食べ切らなかった食べ物で、漬物を作るんです。普通に美味しく食べれられるくらいに漬物にしてから、畑に入れる」

実際にプランターで野菜を作っていく過程をオオタヴィン監督が撮影(写真提供/いただきます事務局)
実際にプランターで野菜を作っていく過程をオオタヴィン監督が撮影(写真提供/いただきます事務局)

―― まず、その土作りの元々の土は、どういう土がいいですか。

「普通の畑の土でいいです。なければ市販の培養土で野菜や花を育てたあとの土がいいです」

―― なるほど。で、漬物は、どれくらいで発酵するんですか。

「漬物にするのに1カ月。土に入れて、1カ月待ちます」

―― それでもう土はできる?

「そうです。だって、1回発酵しているから、漬物になっているから腐らない、これがすごいところ。生ごみは腐敗するでしょう。だから虫も来るし、根っこは育たないし、いい野菜ができないんです。でも、いったん漬物にすれば腐らないので、虫たちは寄ってこないんです」

―― すごいですねえ。ちょっと質問なんですけれども、生ゴミからではなくて、実際に漬物を使うというのは駄目なんですか。

「いいです」

―― それもいいんですか。

「一番いいですよ、たくあんでも高菜漬けでも最高です。腐らないから、いいものができます。ただ、もったいないだけ(笑)」

―― 確かに。では、他の発酵食品ではどうですか。例えば、納豆とかでもいいんですか。

「いいです。いいけど、材料が大豆だけになるから他の漬け物も混ぜたいですね」

菌ちゃんふぁーむでは、大量の漬物を作って、畑に入れている(写真提供/吉田俊道)
菌ちゃんふぁーむでは、大量の漬物を作って、畑に入れている(写真提供/吉田俊道)

―― あとは雑草で土を作る場合は?

「こっちがオススメ。漬物のやり方は、やっぱり間違うと漬物じゃなくて腐るから。ちゃんと漬物が作れる人やったら絶対オススメやけど、漬物を作ったことがない人だったら、ちょっと心配。そういった意味で、雑草での土作りのほうが誰だってできるから一番いい」

―― どういうふうにすればいいですか。

「今まで雑草を土の上にそのまま置いていると、いろんな細菌類が食べていたんです。だからそんなにいい野菜ができるわけじゃなかった。雑草だけじゃ野菜が育たなかったんです。でも、今回のやり方は、雑草を糸状菌(しじょうきん)に食べてもらうんです。そこがこのやり方のポイントで、そのためにはどうすればいいか。それは雑草を土の上のほうに置いて、さらにその上に軽く土をのせて、そして雨が当たらないようにする、というやり方です」

フニャフニャした草より硬い草のほうがいい

―― 雑草はどんな草でもいいんですか。その辺の家の周りの雑草。

「その辺の雑草が一番いいです。強いて言えば硬い草」

―― 柔らかくて、フニャフニャした草じゃなくて?

「そうそう、フニャフニャした草は、細菌類が先に食べちゃうんですが、硬い草なら糸状菌以外はあまり食べられないんです」

―― その、硬いというのは、手で持った時に痛いぐらいの感じがいいんですか。

「そうそう、カヤとか、セイタカアワダチソウとか」

―― ちょっと、ポキッと折れるぐらいの感じですか。

「そうそう、花が咲いたあとの少し硬くなった頃が特にいいです」

―― それを取って、そのまま土に入れるんじゃなくて、それはどうしたらいいんですか。

「取った雑草を乾燥させて、土の上にのせるんです」

―― それはどれくらい乾燥させます?

「晴天日だったら2~3日ぐらい置いたほうがいいかな。理想を言えば、田舎には草を刈ったままのところがあちこちにあるんだけど、草を刈ったまま寝せておくと、1カ月もすると、だんだんぼろぼろになってきて、地面との境目のところに白い菌が付くんです。少し白いのが見えだしたら、そこにはもう糸状菌が付いているということです」

雑草だけ土に入れて、こんなに元気に育ったナバナとタアサイ(写真提供/吉田俊道)
雑草だけ土に入れて、こんなに元気に育ったナバナとタアサイ(写真提供/吉田俊道)

今から始めれば、土作りに2カ月、夏には種がまける

―― その漬物や雑草で作った土に、普通に種をまけばいいんですか。

「そうです」

―― これからオススメの素人でもできそうな簡単な野菜はどんなものですか。

「6月になって雑草を入れたとします。そうしたら野菜作りは8月からになります」

―― そうか、土作りに2カ月かかるんですものね。

「そう。8月に植えられるものといったら、人参やね。そして、9月、10月になったら、秋冬野菜は何でもいいです。中でもお勧めなのが、フダンソウやタアサイ、そして日本種のホウレンソウなど成長が遅い野菜です。遅いから農家の人は作りたがらないけど、そのぶん抗酸化成分とかの栄養が濃くなります」

―― 豆苗やカイワレ大根みたいなのは素人でもすぐに出来そうですけれど。

「いいですけれども、すぐに収穫してしまわないといけないから、もったいないです。あれは種の力、種の中の栄養がいったん水溶性に変わって芽が出るわけでしょう。土はあまり関係なくて、種の栄養が吸収しやすくなった状態ですからとってもいいものなんだけど、せっかくいい土を作ったんだから長く育てるものがお勧めですね」

―― いろいろ育ててみたほうがいいですね。夏野菜だったら、もっと前ですかね。いつ頃、種を植えたらいいんでしょう? 

「夏野菜は大きくなるものが多いからプランターでは難しいです。葉野菜ならお勧めですね。例えば、空心菜やモロヘイヤ、そして最近話題のオメガ3がとれるエゴマがいいです。どれも栽培は簡単で5月中旬から6月上旬に種まきします」

―― じゃあ、間に合わないですかね。

「そうですね。でも、秋冬野菜を作るには、今からがちょうどいいですね。6、7月に雑草を土に入れて、8月、9月になっていろんな野菜が作れますよ。草だけでいい土ができて、青々としたほうれん草が作れますから」

畑が青々と育つ野菜はベランダでも再現できる(写真提供/吉田俊道)
畑が青々と育つ野菜はベランダでも再現できる(写真提供/吉田俊道)

使い古しの培養土が復活する

―― 今、すごくタイムリーだと思うんです。だって、みんな家にいるから、庭やベランダぐらいには出られるじゃないですか。今は時間もあるし。

「うんうん。しかも、今まで何かを作ってきたプランターがあるでしょ。最初、買ってきた培養土には化学肥料が入っていて、それで、野菜を作ったり、花を作るでしょう。その後の培養土はもう肥料が抜けてしまって、しかも中の土の粒子が崩れてきて、すごく育ちにくい土に変わっているんです。そこに雑草をのせて、上から軽く土をのせて、シートをかけて2カ月置いときゃいいわけでしょう」

―― 例えば、以前は、花を植えていたけれども、花が散って、枯れて、放置したような、そんなプランターでもいいわけですね。

「そういう土でも大丈夫。もう土の粒子が小さくなってなかなか育たない土になっちゃっているから、普通は捨てるんです。だけど、その土が復活するんですよ」

―― それはいいですね。しかも、その辺の雑草で、ですものね。

「そうです」

―― すごい。

「本当にこれはすごいことなんです。雑草だけで野菜が育つなんて、今までの農学の常識でいうと、あり得ないことです。雑草を入れたら、窒素飢餓といって、逆に微生物と野菜で窒素の取り合いが起きるんです。だから雑草だけを畑に入れると野菜は育たない状況になる。これが今までの農学の常識。実際、土の中は窒素がすごくなくなった状態になるんです」

―― 飢餓状態に。

「そう。じゃあ、どうして野菜が育つかというと、野菜と糸状菌がくっついて、糸状菌が野菜の根の役割をしてくれるわけ。だから土の中にいくら栄養がなくても、草の栄養を直接野菜につなぐことができる。だから今までになかったことが起きる。そんな今までにないことを素人ができるのかと、いや、素人だからできる。ポイントはとにかく土の上のほうに雑草をのせて水を切るということ、これを今までやっていなかったんです」

どこにもないオーガニック野菜が自分で作れる

―― それはいろいろ試してみたから分かったということですよね?

「そうそう。びっくりするような、すごくいい野菜ができるんだから」

―― その雑草なんですけれども、雑草は生えたものを取らなきゃいけないんですか。例えば、落ち葉とか、花びらとかを拾っちゃあ駄目なんですよね? やっぱり雑草を抜かなきゃ駄目なんですか。

「花びらは柔らかい草と同じであまりよくない。落ち葉は、数ヶ月以上放置して、表面に白い糸みたいなものが出ていたら使えます」

―― それにしても、自分で野菜を作るっていいですね。作る楽しさもあるし、それを食べて、健康になって、家計も助かって、一石三鳥以上ありそうですね。

「しかも、その辺に売っていない野菜ができるんです。だって、草の中にはいろんなミネラルが入ってますから、草で作った土で育てると、ミネラルの多い最高級のオーガニック野菜が自分で作れるんです」

自分で作った野菜は愛おしく感じる(写真提供/いただきます事務局)
自分で作った野菜は愛おしく感じる(写真提供/いただきます事務局)

野菜を作ると、自分が地球そのものなんだと実感する

―― 吉田さんの本を読ませてもらった時にすごいなと思ったのは、2017年の本なのに、今の状況を予言したかのような冒頭があるんですけれども。そこで、「これからは循環と共生の新時代に向けた希望の動きがある」という話が書いてあって、土作り、有機野菜作りもそうだし、今、世の中に必要なことを最先端でされているなと思うんです。その、「循環と共生」という話を最後に聞きたいんですけれども、ご自身で野菜を作ってみて感じることを。

「無農薬で野菜を作ってみて、『なんだ。病原菌も害虫も、草も、モグラも、みんな敵じゃなかったんだ』と教えられたわけですよ。敵どころか大切な存在だったんですからもう本当にびっくり。自然観がひっくり返ってしまいました。自然界は本当に共生していたんです。そして自分の食べ残しや、雑草が土の中できれいに消えて、それが今度はとっても元気で美味しい野菜に変わるんですよ。その野菜の生き様を心から感謝して、食べて元気になる。こんな体験を続けていると、自分が地球そのものなんだという感じになってくるんです。特に純粋な子どもたちと一緒にその体験をしたときに、特に実感するんです」

純粋な子どもたちは土作りを通して多くのことを学ぶ(写真提供/吉田俊道)
純粋な子どもたちは土作りを通して多くのことを学ぶ(写真提供/吉田俊道)

―― 吉田さんは実際に保育園や幼稚園に呼ばれて、子どもたちに野菜作りの体験教室をされてますものね。

「幼稚園生とか小学校の低学年なんかに教えると、彼らは素直だから、例えば、生ごみを畑に入れるのを何と言うかというと、『土に食べ物をあげる』と言ったんです。それを聞いて私は、「土の菌ちゃんに食べものをあげよう」と言うようになったんです。土が食べ物を食べるんです。そこからまた、今度は土が野菜を作ってくれるわけでしょう。それをまた人間が食べるわけでしょう。だから、子どもたちは、その野菜を本当に愛おしがるんです」

土も野菜も自分もみんなつながっていると体感できる(写真提供/吉田俊道)
土も野菜も自分もみんなつながっていると体感できる(写真提供/吉田俊道)

―― それは素晴らしい食育にもなりますね。

「そうね。プラス、やっぱり自分で生きているというか、地球の命をいただいて、自分の力で生きているという実感がわきますよね。これは大きいと思います。小さい時に、自分がこうやって地球から命を頂いているということが分かったら。そして、自分はまた地球にウンチやオシッコやアカを返すわけです。それがまた回って、ぐるぐる回っているんです」

―― 自分が食べている、その野菜を作っているのは、微生物だったり、虫だったりが土を作ってくれていて、ぐるっと循環しているということが、幼いながらも分かる。

「そうなの、幼いからこそ、特に直感して分かります、本質が分かります」

―― そうすると、食べ物に対してもありがたみが出ますよね。

「それが面白いんです。例えば、みそ汁の中にキャベツの芯が入っとらんやったときに、『僕のみそ汁に、生長点が入っとらん』と言って、泣くんですもん」

―― かわいい。

「だって、生長点というのは、野菜の一番元気なところと知っているから」

吉田さん講演会などで伝えている「野菜と人間は同じ」という内容(資料提供/吉田俊道)
吉田さん講演会などで伝えている「野菜と人間は同じ」という内容(資料提供/吉田俊道)

―― 今まで、野菜の捨てられていたところがまさかの一番大事なところだったとは。そういうこともちゃんと教えられているんですね。

「教えるっちゅうか、子どもたちと一緒に生ごみをつぶして畑に入れるわけでしょう。そうしたら、菌が食べない場所があるんです。1カ月たって野菜を植えようと思ったら、芽が伸びてきてるんです、芽が。タマネギの芯とかニンジンのへたから芽が出ていたりしているわけです。何で他のところは全部消えたのに、どうしてこの柔らかい芽は菌ちゃんが食べないんだろうと、子どもたちと一緒に考えるわけです。なぜ食べないんだ。1カ月もたって、硬いところでさえも全部食べてしまったのに、柔らかい食べやすそうな芽だけ菌ちゃんが食べ残しているんです。なぜ?」

―― それは元気だから?

「そうなんです。元気過ぎるところだからです。菌は死んだものを食べているんであって、元気なものを食べる必要はない。ということは、そこが一番元気だということでしょう。じゃあ、そこを誰が食べるべき?」

―― 人間。

「そうなんです。それが分かっちゃうから、家に帰ったら『お母さん、ここを食べて、ここを捨てないで』と、『ここは一番大事なところだよ』と、真剣に子どもたちは言います」

―― なんか今の話ですごく分かったんですけれども、野菜の選び方はどうしたらいいですかとか、何を食べたらいいですかと聞く時点で、もう人間としての本能が退化しているのかもしれないです。何を食べたらいいか、本来は感覚として、分かるはずですもんね。

「うん。まあ、そりゃあなかなか難しいです」

―― すごく今、健康に対して、多くの方の意識が向いているので、食べ物を変えることで自分をよりよく変える、整える、というところに意識が向きますね。ありがとうございます。

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