「元気な野菜は皮ごと食べる」有機野菜農家が実践している効果的な野菜の食べ方とは?

豊富な知識と熱い情熱で野菜作りをする吉田俊道さん(写真提供/いただきます事務局)

 自粛生活で、家で食事をする機会が多くなった今こそ、ちゃんと食べて、健康な体作りをしたいと願う人たちも多い。

 長崎県佐世保市で、微生物に特化した土作りで話題の有機野菜農家、『菌ちゃんふぁーむ』代表の吉田俊道さん。九州大学農学部を卒業し、同大学大学院修士課程修了後、長崎県庁の農業改良普及員を経て、1996年、有機野菜農家へ新規参入。失敗の連続を得て、やがて大きな発見をする(第1回記事)。

 長年の農業経験、土作り、野菜作りのプロとして、「3日食べれば変わる」という、野菜の選び方、食べ方を講演会や書籍『「元気野菜づくり」超入門』などで伝えている。

 農業を通して培った、説得力のある現場の声、吉田さんが真摯に伝えたいこと。  

 今、もっとも大事な、腸内環境を整えて、免疫力を上げるための効果的な食事のしかたとは?

(連載3回シリーズの第2回)

厳しい冬を乗り越えてたくましく育っていくほうれん草(写真提供/吉田俊道)
厳しい冬を乗り越えてたくましく育っていくほうれん草(写真提供/吉田俊道)

―― まず、有機野菜の概念として、無農薬、減農薬とかいろいろあるじゃないですか。そもそも、有機野菜とはどういうものなのか教えてもらえますか。

「有機野菜というのは、無農薬・無化学肥料で育てた野菜です」

―― いわゆる、オーガニック=有機野菜ということですよね。

「そうそう。無農薬というか、正確に言うと化学合成農薬不使用です。あと化学肥料不使用。

ただ、今でも有機栽培というと、単にたい肥や有機肥料、有機物を入れて育てるという意味でも使われていますから無農薬とは限りません」

―― そうなんですか。今も?

「今もそう使う場合もあります。ただ、普通は有機といったらJAS法の有機農産物のことを指すことが多いですね」

「生命力のある野菜」とは、試練に打ち勝った野菜

―― 吉田さんが言われている「元気野菜」とは、どういうものですか? 有機野菜ということですか?

「元気野菜は普通に使われている言葉なので、今は“菌ちゃん野菜”って呼ぶことが多いのですが、ここで言う元気野菜というのは、言葉通り生命力のある野菜のことです。それは、1つは土の中に微生物がいっぱいいるということ。医薬品もそうだけれども、病気や健康に役立つ成分を持つものがないか、今、世界中の微生物を探しているわけです。どうも菌というのは、私たちを元気にするいろんなエキスを出すんじゃないかなと。だって彼らは、死を食べて生きているんです。私たちは生命を食べないと生きていけないのに、彼らは酸化崩壊した死を食べて元気になれるんだから、まさに命の生産者です。私たちは命の消費者で」

―― そうですね。私たちは消費者で、命をいただいているほうですもんね。

「微生物が野菜の根の周りに群がって、野菜とやりとりしてるんです。野菜と直接つながって野菜の根になってくれる微生物もいっぱいいるんですよ。そうやって野菜はたくさんの命のエキスをもらいます。元気野菜という意味の1つは、地球の元気の素である微生物とつながっているということ。だから菌ちゃん野菜って言うわけです」

―― なるほど。土の中にもいっぱい微生物がいて、野菜とつながっているんですね。

「もう1つは、どうやって元気になるかというと。生命力というのは、常に危機に瀕した時に強くなるわけです。守られたらひ弱になるんです。野菜も一緒。強烈な紫外線が当たり、雨や風が当たり、それでも頑張って生きている野菜」

吉田さんの育てる野菜は見るからに元気いっぱい(写真提供/吉田俊道)
吉田さんの育てる野菜は見るからに元気いっぱい(写真提供/吉田俊道)

―― 危機に瀕した時こそ、生命力は強くなる、とは深いですね。それこそ、今は異常気象や気候変動もあるし、そういうのに打ち勝った野菜ということですか。

「そう。ウイルスもいるし、いろんな病原菌もいるし、虫もいるし、雨も風も霜も、さらに

紫外線も。でも無農薬なのに元気に生きているんです。すごいじゃないですか」

―― ほんとに、すごい。

「それが、いわゆる元気野菜、試練に打ち勝った野菜なんです。試練、有害物質を取り除いて、保護された快適環境じゃなくて、厳しい環境のまま、それでも生きることのできた野菜」

―― つまり、有機野菜でも、ハウスだったり、防護ネットで虫が来ないように守られている野菜よりも、自然のままで育ったほうが元気になるということですか。

「基本そうなのですが、ただ自然に育てたら今の野菜は虫や病気や紫外線にやられてしまうと思います。それだけ弱いということです。でも、ちゃんと土を作って、栄養成分も足りて、微生物ともつながると、いろんな有害物に対して打ち勝てるようになるんです」

今の野菜は、昔の野菜に比べて……

―― ほんとに、土が重要なんですね。今の野菜は、昔の野菜に比べたら、栄養価が低いと聞きますが。

「はい。ビタミン、ミネラルが減ってきているといわれています。(図1)微生物物いっぱいの土作りをすることによって、当然ですが栄養価も高くなることは、私も自分でいくつか測定してわかっています(図2) 」

―― 消費者の私たちは、野菜を多く食べれば食べるほどいいと思って、一生懸命食べるんですけれども、食べても食べても昔の栄養価には届かない。相当食べないと駄目ということですか。

「違うんです。もともと弱いものを相当食べたら、もっと弱くなります」

―― え? 

「栄養価が少ないと考えると、いっぱい食べたら取れると考えるでしょう。それは数字のマジックなんです。生命力全体で考えたら、弱ったものをいっぱい食べると弱くなります。やっぱり元気なものを選ばないと駄目なんです」

―― それはやっぱり化学肥料とかが原因なんですか。

「一番の理由は、旬じゃないものが多過ぎるということです。 今は例えば、キャベツやホウレンソウ、キュウリなど、年中食べるようになったでしょう。旬ではない時季の野菜は当然栄養価も低いわけです」

―― 今はもう、旬の野菜が何かが分からないくらいになってますよね。

「そうそう。土があまり良くなくてしかも旬じゃなかったら、もうほとんど何を食べているか分かんない状態なんです。まず旬の野菜を選ぶことが重要だと思います」

―― 良い土で育てられた、旬な野菜を選ぶ。弱った野菜を食べるよりも、少ない量でもちゃんと元気な野菜を食べればいいということですか。

「そうです」

図1
図1

図2
図2

有機野菜でも弱い野菜がある

―― 元気野菜の選び方なんですが、どういう野菜がいいんですか。

「私はいつも言うんだけれども、『生で3口食べて。食べておいしかったら、その生産者の農産物を次から買ったらいいよ』と。食べずに見て選ぶ方法より単純で簡単です」

―― やっぱり、有機野菜を選んだほうがいいですか。

「基本そうなんですけれども、意外と弱い有機野菜もたまにあるんです。JAS法で有機JASに認定しているのに腐りやすいんです。だから、まず、有機野菜を選んだら、それを生で食べてみること。同じ季節の同じ野菜と食べ比べてみる。そして、おいしいというのは後味で

分かるんです」

―― 後味がいいというのは、また食べたくなるということですか。

「そう。食べ終わった後、嫌な味が残らない。ずっと食べたくなるような野菜、これは本物ですから。私たちの体にそういうものを調べる力がちゃんとあるわけ」

―― では、まず買ってみて、食べてみて、自分の体、舌、味覚で感じるわけですね。

「それで、『これはおいしい、後味がいい』という生産者の名前を覚えておいて、また買えばいいんです」

―― その農家の作り方、それが自分に合っているということですね。

「はい、同じ農家なら同じ土作りをしているはずなので、他の野菜も同じようにおいしいはずなんです。それが一番」

野菜選びは生産者選び

―― ということは、元気野菜を選ぶことは、生産者選びみたいなことでもあるんですか。

「そうです。野菜を選ぶというのも大事だけれども、どんな人が作っているのかをやっぱり見てほしいんです。そうしたら、ブロッコリーを食べようってなった時、あのおじさんが作ったんだよね、あの奥さんが一生懸命育てたんだよね、と思いをはせながら食べられるんです」

―― そう思うと、ありがたく思えますよね。野菜が愛おしく思える。

「そして、もう1つの意味は、同じ生産者のものを食べると、同じ菌が付いているんです。だって、同じ土から同じ菌がもらえるわけでしょう。オーガニックといっても、Aさん、Bさん、Cさんは、それぞれやり方が違うし、微生物が違うわけです。腸内細菌の分析をしている研究者から聞いた話なのですが、同じ微生物を続けて食べていると、数ヶ月後には腸内に定着することもあるそうです。どのような微生物がどれくらい定着するのかはまだわかりませんが、食べ続けると、微生物がまた定着することもあり得るようなのです」

野菜作りをともにする仲間たち。生産者の顔を知ると、野菜がよりありがたく味わえる(写真提供/吉田俊道)
野菜作りをともにする仲間たち。生産者の顔を知ると、野菜がよりありがたく味わえる(写真提供/吉田俊道)

―― ということは、同じ農家のものを食べると、その農家の人の常在菌が一緒に入ってくるということですか。

「いえ、農家の人じゃなくて、その農家の土地の微生物が、野菜の中に入っている、お米の中に入っているんです。いろんな菌をいくら入れたところで、私たちの体というのは、最初は排除するんです。人間同士も似たところがありますよね。新しい人が来たら、まず警戒して排除しますから。どこの人やろうかと。それが、5、6カ月もずっとしゃべっとると、兄弟みたいになるわけです。同じことが起きます」

―― 同じ釜の飯じゃないけれども、同じ土を食べているみたいな。

「同じ菌がずっと入っていくうちに、この菌はいいんだと、体がこの菌を受け入れようかというのが、5、6カ月かかるみたいなんです」

―― では、野菜を選ぶ時に、生産地をあちこちにしないほうがいいんですかね。決まった、お気に入りの生産者の人のものを同じように食べたほうがいいということですか。

「ということが、菌の定着の観点からも言えるし、もう1つはやっぱり、様子が分かる生産者のものを買う、食べることによって、心もなんか、その食べ物から命を支えてもらい、その生産者の生活を支えているという嬉しい気持ちになれるんです」

―― 確かに。

「あそこの菌が入ってくるんだと思うだけで、菌は定着しやすくなる気がします」

―― じゃあ、いつか畑を見学とか、行けたら行ったほうがいいですね。

「そうです、そうです、本当に」

いい腸内環境にするために、一番お金のかからない食べ方がある

―― まずは、旬の野菜を選ぶ。その野菜を、どう食べたらいいんでしょうか。次は、食事のしかたについて、お聞きしたいんですけれど。

「食事を通して、より楽に健康になるにはどうすればいいかということでしょうけれども、いっぱいありますよね。その中で、一番やりやすくて、できるだけ効果の高いものを2つ言いますね。1つは、腸内細菌を有用菌で活性化させるような食べ方をするんです。これで栄養の吸収率が大きく上がります。もう1つは、微量だけども実はとても重要な栄養素をちゃんと取るということです。要するに必要な栄養をちゃんと取り入れてちゃんと吸収するということ。この当たり前のことを多くの現代人ができていなかったんです」

―― つまりは、それで免疫力が上がるということですね。

「はい。では1つめの腸内細菌を有用菌で活性化させる方法ですが、一番お金がかからない方法で、昔の人がみんなやっていたことは、とにかく口の中に何かを入れたら、それを飲み込むまで液体を入れないということ。ご飯が口の中に入っている時に味噌汁を入れない、お茶を飲まない。パンを食べて、パンが口の中に残っている間に牛乳を入れない、水を入れない」

―― それは噛んで、自分の唾液で食べるということですか。

「そうです。どろどろにならないと、嚥下(えんげ)活動ができないから、どろどろにするために、私たちは味噌汁とか、牛乳を入れるわけです」

―― 喉を通って、飲み込みやすいように。

「そうしたら、その分、ツバ、唾液が出なくなります。この唾液というのが、食べ物の中の毒を消す最高の消化液なんです。唾液を使わずに食べ物をお腹に入れちゃうと、どうしてもうまく発酵が進んでいかないんです。まずは食べ物を唾液と絡ませることが大事です」

―― 例えば、唾液を出すために、どれくらい噛んだらいいですか。

「1口30回とかいいますが、それも大事だけれども、一番の基本は、とにかく口の中に何か入っている時には液体を入れないで、飲み込める状態になるまで噛めばいい。もっと言うと、最初から食べる時に、飲み物を置かない、お茶を置かない」

―― つい、飲んだりしてしまいますよね。食事と一緒に、食べて飲んでと交互に、口に含ませながらね。

「昔の人はみんなそれを教えていた。私はじいちゃんに厳しくそれを言われたから」

―― あとは、腸内環境をよくすためには。

「お腹を発酵させる。ということは、当然発酵食品をよく食べるということです。なかでも、本物の発酵食品は、いわゆる人工添加物が入っていない昔ながらの発酵食品がいいですね」

―― それはどういうものですか。

「味噌でも醤油でも、入れ物の裏を見たら分かりますよね。いわゆる原材料名以外に、カタカナ言葉が書いていないものを選ぶ。味噌だったら、麹と大豆と塩だけでしょう。それ以外にいろいろ書いていないもの」

―― そうやって腸内環境が良くなると。

「もうそれだけでうんちが変わりますよ。切れが良いのでトイレットペーパーが要らなかったり、トイレでうんちが水に沈まずに少し浮いてきたりするんです」

―― 腸内細菌が活性化して、腸内環境が良くなると、そういううんちが出るということですね。

「そうです」

植物だけが持つ抗酸化作用「ファイトケミカル」とは

―― 野菜の食べ方でも腸内細菌を活性化しますよね?

「当然、そうですね。旬の野菜を食べて、腸内細菌も活性化するということもあるけれども、さらに野菜にはとても重要な栄養素、ファイトケミカルが含まれているんです。植物だけが持つ酸化を止める力」

―― 抗酸化作用。

「そうそう。植物は問題から逃げない道を選んだ生き物だと思っています。動かないんです。だから虫が食べに来るし、紫外線にもサラされる。それでも、自分の体を守るために、自分を酸化させない力がすごく強いんです。人間は光に当たらないように逃げられるから、逆に言うと光が当たったらすぐに日焼けしてしまうんです」

―― そうか、植物は、いる場所から逃げられない、動けないわけだから。

「動けないから、どんなに光が当たっても酸化しないような薬を自ら作るしかなかった」

―― それがファイトケミカル。

「そう。そして虫からも逃げられない。だからといって虫を殺す成分は作りたくない。だって虫がいないと受精ができないでしょう。ということは、虫に対して、まだ、酸化してないよ、壊れていないよ、元気だよという成分を作らないと、虫が食べてしまうんです。その成分がファイトケミカルなんです」

―― 虫は弱ったものを食べるわけだから。ファイトケミカルは、外敵から守るバリア機能みたいなものですよね。

「そうです。そう言ってもいいけれども、虫が消化吸収できない成分と言ってもいいんです」

―― それは人間にとってはすごくいいものなんですか。

「そうなんです。不思議ですよね。でも、当たり前といったら当たり前なんです。虫と人間は全く住む世界が違うから、虫が嫌いなものは人間が好きなものであるということは、やっぱり世界の循環をうまく成り立たせるためには、そういうじゃないと困るんです」

野菜を丸ごと食べることは、土とつながり、栄養を残さず受け取ること(写真提供/吉田俊道)
野菜を丸ごと食べることは、土とつながり、栄養を残さず受け取ること(写真提供/吉田俊道)

野菜の一番栄養のある部分は、皮と芯と生長点

―― そのファイトケミカルは、野菜のどの辺にあるんですか。

「自分を守る成分ですから、当然外側ですよね」

―― だから、有機野菜は皮ごと食べたらいいというんですね。

「そうです。一番分かりやすいのがナス。ナスの紫色は外にしかないですね」

―― 食べちゃいけない皮なんてないぐらい、皮を食べるということはいいんですか。

「いいえ。栽培している野菜、人間がずっと育ててきたものの皮です。栽培していないものというのはバリアが強過ぎるんです。だから、毒と薬は紙一重で、あまりにも抗酸化力が強いと、人間もそれを食べられなくなる。消化吸収できないんです」

―― では、食卓に上るような野菜で、元気野菜だったら皮ごと食べていいということですよね?

「そうそう。玉ねぎも人参もジャガイモも大根の皮も」

―― 芯はどうですか。

「芯も食べてください。芯というのは、新しい細胞が生まれるところでしょう。1つの大きな野菜の体の中で、今、細胞分裂してどんどん新しい細胞を作っている場所が芯です。だから、そのようなところを生長点というんですが、そこを食べてほしいんです」

―― 例えば、人参や大根だったら、どこが生長点ですか。

「根っこと、葉っぱとのつなぎ目」

―― いわゆる調理するときに、切り落とすところですよね。

「そうそう、あの場所。あの場所からまた芽が出るから。芽が出るところということ」

―― ほうれん草や小松菜や水菜もいつも切り落とすところ。キャベツやレタスでいうと、芯のところですか。

「そうです。芯と葉っぱのつなぎ目のところ。1つの葉っぱに1つの生長点があります」

―― ピーマンやカボチャとか種のあるものだと種ですか。

「芽が出るところですから、種ですよね。また脇芽もそうです。ただしジャガイモの芽やトマトの脇芽など、やはり人間にも強すぎて食べない方が良い場合もあります」

―― そういうもの以外は、皮も芯も種も、つまりは今まで捨てていたところ全部ということですね。

「全部じゃないです。植物の体の中で、今まさに細胞分裂しているところ、それが生長点です」

―― そこを丸ごと食べるということですよね。

「食べるとなると、結果的にそういうことになります」

『菌ちゃんふぁーむ』から届いた玉ねぎ。吉田さんに教わった「玉ねぎの皮を入れて玄米を炊く」とふっくらジュージーなご飯のできあがり(撮影/佐藤智子)
『菌ちゃんふぁーむ』から届いた玉ねぎ。吉田さんに教わった「玉ねぎの皮を入れて玄米を炊く」とふっくらジュージーなご飯のできあがり(撮影/佐藤智子)

―― 有機野菜の食べ方として、蒸して食べるとか煮汁ごと食べるのがいいと言いますが。

「結局、皮に含まれているファイトケミカルは、どこに入っているかというと、固い細胞の中にあるわけです。細胞というのは、動物は細胞膜だけですけれども、植物の場合は必ずセルロースの壁、細胞壁というのがあるんです。これは私たちには消化できないです。最終的に腸内細菌が食べてくれますが、その手前、腸内細菌の少ない人は最後までセルロースを分解できませんから。でも、栄養はその細胞壁の中に入っているわけです」

―― それは煮れば出るんですか。

「煮ると、水の体積が膨張するでしょう。そしてついにぱりんと割れて細胞壁が破れるんです。破れたら最後、中身はどんどん外に出ちゃいます」

―― じゃあ、1回壊さないといけないんですか。

「そう。その状態が、ほうれん草が急にやわらかくなったり、人参に箸が通る状態です」

―― ということは、野菜はやっぱり火を加えたほうがいいんですか。

「火を加えることによって、そのままガリガリかじった場合と比べて、全部じゃないけれども一部の研究成果では、数倍から数十倍も吸収できるといわれています」(図3)

図3
図3

ファイトケイミカルは煮ても焼いても壊れない

―― では、生野菜、サラダよりも煮たほうがいい、温野菜にしたほうがいいんですか。

「基本的にはそっちのほうがずっといいんです。ただし、生は生の良さがありますし、煮ることによって壊れる栄養素もあるでしょう。ただ、一番大事なファイトケミカルを取ろうというんだったら、生で食べていては全然足りないです。そしてファイトケミカルは煮ても焼いても壊れません。だって、抗酸化成分だから。煮たり蒸したり焼いたりすることによって、ファイトケミカルは、はるかに多く吸収できるようになります。ただ栄養は煮汁に出ていくので、味噌汁とかスープにしたらいいわけです」

―― それは細胞壁を壊して、中の細胞が柔らかくなったということですね。

「そうそう。いくらキャベツを千切りにして、いくら噛んだところで、まだまだ潰れていない細胞があるということです。またはよく言うんだけれども、牛みたいに食べろと。牛は草を加熱して食べることはしない。その代わりに臼みたいな歯があって、二度噛みするんだと。

人間も食べてごちそうさまをした後に、もう一回うぇっと出して、もう一回噛めと(笑)」

―― 反芻しろと(笑)。それが人間はできないから(笑)、茹でて汁ごと食べたほうがいいわけですね。茹でたりした時にアクが出たりするじゃないですか。あれは大丈夫ですか。食べたほうがいいんですか。

「アクというのは二通りあるんです。本当の元気な野菜のアクというのは、ミネラル成分です。ところが、野菜によっては、硝酸とか亜硝酸とか、いろんな後味の悪い成分が含まれていて、それもアクというんです」

―― だとしたら、本当に、野菜の選び方でだいぶ変わりますね。

「そうですね。そういう意味でも元気野菜を選ぶことです」

菌ちゃんふぁーむの旬の野菜たち(撮影/佐藤智子)
菌ちゃんふぁーむの旬の野菜たち(撮影/佐藤智子)

―― もう1つの、微量栄養素のほうは何を食べたらいいですか。

「人間にとって、本当に健康のために必要な栄養素は、実は炭水化物、タンパク質、脂肪じゃ足りないんです。野菜もそうです。窒素、リン酸、カリウムは大きな、重さのある栄養素。でも、私たち生命をつかさどっている、コントロールしている栄養素というのは、すごく小さくて、いまだに分からない成分もいっぱいあるわけです。そんな中で、一応、今、分かっているのが、ファイトケミカルとビタミン、ミネラル類です」

―― はい。

「でも、ファイトケミカルは、野菜の皮や生長点を捨てているのでかなり少なくなっている。そしてミネラルも今、日本は酸性雨が多いので土の中のミネラルが溶けて流れやすくなっていて、それに対して土にミネラルを戻さなくなったから、野菜から十分にミネラルを取ることが、あまり期待できないんです。ちゃんとしたオーガニックだったら、それで十分に取れるんですけれども」

野菜だけでは取れないミネラルを海のもので取る

―― そうなると?

「どうしても海に頼らざるを得ない。なぜかというと、海には多くのミネラルが集まっているし、だからこそ海で生命は誕生したわけですから」

―― 例えば、海のミネラルを取りやすいものとしたら、どういうものがありますか。

「海の生き物の中で、人間に一番ミネラルのバランスが似ていると思われるもの、それが背骨がある、脊椎動物の魚です。その魚を丸ごと、全体を食べられるものとなると、小魚、いりことか、ししゃもとか、きびなごとかになるわけです」

―― 頭から尻尾を全部食べられる海のものを食べる。

「そう。それを、私の場合は農業から教えられていて、元気な野菜を作るために、微生物だけを増やせば良かったんじゃなかったんです」

―― というと。

「やっぱり海を畑に戻さないとうまくいかなかったんです。それがカキ殻石灰だったり、にがりなんです。人間も一緒だということです。お腹を発酵させるだけじゃ駄目で、本当に必要な材料は何なのか、それはミネラルだよと、野菜と一緒だよ。野菜にはカキ殻石灰を入れたでしょう。人間もカキ殻石灰を食べればいいんだけれども、ちょっとまずいから、だから煮干しを入れて、元気野菜を入れて、味噌汁を作って、飲めばいいんです」

―― そういう食べ方をしていたら、どれくらいで成果が出始めますか。

「ちゃんとやれば、まず3日でかなり変わります」

―― 理想を言えば。

「理想は1カ月以上続けることで、心や体がかなり変化することが、たくさんの子どもたちの食改善を通して分かりました」

野菜丸ごと、煮干し丸ごといただくことで、ビタミン、ミネラルを存分に味わう(撮影/佐藤智子)
野菜丸ごと、煮干し丸ごといただくことで、ビタミン、ミネラルを存分に味わう(撮影/佐藤智子)

―― 吉田さんのところに、講演会や著書やブログでこの食べ方を知って、感想文がたくさん届いているんですよね。どういう変化が皆さんはあるとおっしゃいます?

「いろいろあるんだけれども、よくあるのはやっぱり肌の質、爪の質が変わる。肌がツヤツヤになる、割れやすい爪が、割れにくい艶のある爪に変わる。髪の毛も質が変わりますし、伸びが変わります」

―― 体調や精神状態もよくなりますか。

「はい。体温も上がるし、夜眠れなかったのが寝られたり、朝起きられたり、集中力がアップしたり、体調が悪い人だけじゃなくて、もともと元気だと思っていた人が、さらに元気になって驚くこともあるんですね。食べ物が外食ばかりの人は、元気だといっても、それは空元気で、本当の元気はもっとレベルが高いですよ、ということが分かるんです」

―― その人が本来持っている、元々の元気なところに戻す感じですか。

「そうです」

―― 今は、自粛生活で、皆さん、家にいるわけですが、会社勤めの人も家で仕事をしたりするこの時こそ、ちゃんと食事をするチャンスですね。

「難しくないんです。味噌汁に野菜を皮ごと入れて、汁をしっかり飲むだけでいい。そしてご飯などの固形物を食べるときは、水やお茶を飲まずに、よく噛んで唾液を出して食べる。外食の場合は、野菜の皮も芯も生長点も捨てていたわけだから、自分で調理してその捨てられていた栄養も丸ごといだたくだけで、全然、今までと変わります。あとは、お腹をしっかり空かせてから食べることです。そうすることで、腸が活発に動き、消化吸収が促進され、免疫力が上がりますから」

吉田さんが講演会などで教えている食べ方のコツ(資料提供/吉田俊道)
吉田さんが講演会などで教えている食べ方のコツ(資料提供/吉田俊道)

生命力さえしっかり作っておけば大丈夫なんです

―― 免疫力を上げていくことはすごく必要なことですね。そう思ったら、今がしっかりと食べて、体を作るチャンスですね。

「そうですね。野菜にはいろんな病気や虫がいるけれども、もし野菜に農薬をかけなかったら、どうなるか。一方はもうレース状に食われるキャベツ、一方は全然食われないキャベツがあるわけです。一方だけ病原菌、例えば、さび病にやられて、隣の畝(うね)は全然やられないんです。同じ野菜で同じ病原菌なのに、なんでこんなにやられ方が違うのとびっくりするかもしれないけれども、本来そういうものなんです。人も野菜も同じことが起きているんです」

野菜作りに没頭する毎日を送る吉田さん(写真提供/吉田俊道)
野菜作りに没頭する毎日を送る吉田さん(写真提供/吉田俊道)

―― つまり、野菜でいうところの土作りをするような感じで、人間も食べ物で自分の土台をちゃんと作っていくということですね。

「生命力をしっかり作っておきさえすれば、全然問題ないです。大丈夫なんです」

―― それはやっぱり自分を食べ物で変えていくということが重要ということですね。

「そうそう。だって土を変えただけで病原菌が来ないんだから」

―― そういうのも、やっぱり農業をしていると実体験として分かりますよね。

「これは本当にどこまで分かってもらえるか。もうあり得ないぐらいのことが現実に起きているんです。同じ土地に同じ人が植えて、ちょっと土が違うだけで一方だけ、隣の畝だけ虫が来るんだから」

―― それはすごいですよね。それを実際に見ちゃうとね。

「すごいことなんです」

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