サクラは移動するし、モミジはあえて二番手を狙う  森の案内人が明かす木々の秘密

週の半分以上はどこかしらの森を訪ねているという三浦さん撮影/NiwaMori

「一本一本の木には特徴や性格がある」。木の種類を1000以上は見分けられるという「森の案内人」三浦豊さん。そこに「木がある」ではなく、「木がいる」と表現する三浦さんの木に対する深い愛情、リスペクト。私たちの忘れていた感覚を呼び起こす刺激的な話を聞いた。

木と人間の遺伝子は約4割が同じ

―― 三浦さんは、木のどこに一番魅力を感じているんですか? 

「同じ生き物だなあと思えるところかな。木と人の遺伝子は約4割が同じなんです」

―― じゃあ、木と人間はよく似ているということですか?

「そうですね。木を見ていると、突如、感動が湧いてくるんですよね。そのとき僕は笑っているわけでもないし、泣いているわけでもない。極めてニュートラルで、自分の境界があやふやというか、自分という膜が薄まっていって、木とつながっているような感じですかね。木を僕は人よりよく見ているので、木との境界が分からなくなってきました(笑)」

木を見すぎて「木との境界線がなくなってきている(笑)」と  撮影/佐藤智子
木を見すぎて「木との境界線がなくなってきている(笑)」と  撮影/佐藤智子

「日本は、自然という言葉を明治になって作ったと聞いて。自然というのは、ネイチャーに対する言葉で、もともと『じねん』と読んでいて、『おのずからしかる』。だから、人工と自然というものに境はなかった。人も自然も一体だというね」

―― 自然は、今の言葉だと、植物とか、海とか川とか、環境や場所みたいなイメージに使われていますけれど、それが一体化していたということですね。

「対立するものではないのかなと」

―― 私たちが「最近、自然に触れていないなあ」とか言っているけれども「あなたのいるところはすでに自然ですよ。自然の中にいますよ」ということですよね。

「『居心地がいいこと』は、僕にとっては、最も価値のあるもの、最もかけがえのないもので、別に環境を守ろうとか、そんなスペックの高い人間ではないんです。単なる欲望。居心地がいい、気持ちがいいとは何なんだろうかと探しているうちに、森はすごいと感じるようになりました」

―― それを伝えていきたい。感じてもらいたいということなんですね。

木々たちが生い茂る恵まれた環境にある日本 撮影/Yutaka Miura
木々たちが生い茂る恵まれた環境にある日本 撮影/Yutaka Miura

日本は森林率が世界の先進国の第3位

―― 日本は世界の中で、森林率が3位なんですってね。

「はい。先進国の中で、フィンランドが1位で森林率73.1%、2位はスウェーデンの68.9%。日本は次いで、68.5%。世界の平均が約31%だから、2倍以上はありますね」

―― そう思うと、日本ってすごく恵まれた環境ですね。森林率が0%の国もありますよね。

「カタールとかね。エジプトは0.1%」

―― 日本は、外に出れば、すぐに木がある。だけど、その恩恵に気付いていない。

「当たり前になっていてね。日本は本当にいろんな木が生えていて、いろんな森があるのに、多くの人が森と出会っていない気がするんですよ。それはもったいないなと。視界には入っているし、森という空間に身を置いたことはあるけど、後ろの森よりも前のショッピングモールみたいな(笑)。日本中が今、街の生活をしていて、『木は生きている』『木も我々と同じ生き物』となかなか感じることができずにいる。昔は薪を伐りに行ったりして、否応なしに森と出会っていたわけで、今はきっかけがないので。もし、きっかけ一つで出会えたら、各々の森を感じられると思うんですけれど」

森にはたくさんの種類の木が共生している。1000以上の木の生態を知る三浦さん 撮影/Yutaka Miura
森にはたくさんの種類の木が共生している。1000以上の木の生態を知る三浦さん 撮影/Yutaka Miura

「木にもそれぞれの生き方がある」

―― 今、木の種類は1,000ぐらいご存じと言われていましたが、豊富な知識を何か披露していただきたいんですが。難しい木の名前を言われても分からないから、誰もが知っている木を5つぐらい考えたんですよ。

「ありがとうございます」

―― サクラ、マツ、タケ、イチョウ、モミジで説明していただきたいんですよ。

「熱いセレクトですね(笑)」

―― 花や葉っぱの形や色で分かるけれども、くわしい生態を知りたい。どういう環境に住んで、どういう木なのかを。例えば、サクラは?

「春になれば、キレイですよね。サクラは光が当たって、土が肥沃で、水が結構ある所を好みます」

―― だから川べりに咲いている?

「そうですね。サクラがまさに好きな環境ですね。だけど、土が肥沃で光がよく当たる所なんて、森にはそんなにないんですよ。いろんな木が生えているから。だから、おのずとピンポイントで生きざるを得なくて、森で生えている姿を見ると、孤独な木なんですよね。ただ、伐採した後は、ウヨウヨ生えるときがありますけれども、基本的に、シイノキとかカシノキなどの強い木が生えてくると、サクラは勝てないんですよ。明るい光が必要なんで。なので、点在して生きざるを得なくて」

―― 他の木より離れていないといけない。でも、どうしてあんなに花を咲かせる必要があるんですか。

見事な花を咲かせるサクラにも生き抜く知恵がある 撮影/Yutaka Miura
見事な花を咲かせるサクラにも生き抜く知恵がある 撮影/Yutaka Miura

「サクラは、1本で雄花と雌花を両方咲かせるので、1本で受粉ができると思いきや、できないんですよね。自家不和合性というんですけれども。自分のおしべとめしべでは受粉できないようになっているんですね。自分のおしべの花粉を付けた虫がどこか遠くに飛んでいって、別のサクラのめしべに行き着いたら受粉できる。自分のおしべとめしべを虫が行き来してできると、遺伝子が自分と一緒で自分のコピーです。でも、自分と遠く離れたサクラだと、両方の遺伝子を持っている子どもが生まれるんで、より多くの可能性を持ったサクラになる」

―― 生命力が強いサクラになる。

「今後起こるであろう気候変動に適応できる子どもができると。サクラのふるさとは元々ヒマラヤなんですよね。鳥が実を食べて排せつすることで、徐々に東に移動してきた」

―― 他の木との距離を保ちながら、遠くのサクラと受粉できるようにして、品質改良というか、環境に適応できるようになったと。

「だから、少しでも遠くのおしべとめしべが行き来してもらうためにここに咲いているよということで、あんなに一生懸命に花を咲かせるわけです」

サクラは「動く木」と言われている

―― 日本中、桜並木がすごいじゃないですか。サクラは植えやすいんですか。

「よく川沿いにサクラを植えるのは、サクラが咲いたら、人が見に行きますよね。で、川の堤防を踏み固めると。これは、徳川幕府八代将軍吉宗公が考案したと言われているんですけれども、画期的ですよね。それで人が踏み固めて、川の堤防が頑丈になったということもあって、川沿いに植えたとも」

―― 今、サクラは日本に何本ぐらいあるんでしょうね。

「100万本は下らないでしょうね。並木だけでも40万本以上は生えていますし、並木以外もいっぱい生えていますしね」

―― 昔より花見客が増えているような気がしません? 

「我々の内なる自然がアップしているんですよ」

―― みんな、「花見に行きました」とSNSで投稿している。わざわざ海外からも見に来たりしますよね。それくらい注目されている。木を見に旅行に来るなんて、すごいことですよね。

「サクラは浅く根っこを広げるんですよ。その根っこに太陽が当たることで、温かくなりますよね。それでまた芽が出るんですよ。同じ体で、根っこから新しい芽が出てくるので、本体が弱る。若いときは花が咲かないです。大きくなることが第一なので。でも、サクラにとっては、光がよく当たる、土が肥沃、周りの木との距離が重要ですよね。だから、少しずつ根を張って、移動する。自分の生える場所を、生きるべき場所を調整していくんですよね」

浅く根をはって、徐々に移動をしていくサクラ 撮影/Yutaka Miura
浅く根をはって、徐々に移動をしていくサクラ 撮影/Yutaka Miura

―― 木は動かないと思っていたけれども、移動しているんだ。

「サクラは動く木なんて言われます。すごいですよ。これができる木はなかなかいない。今度見てみてください。根っこから、芽が出ることはすごくあります。その根っこは、結構強い力があって、若いサクラが出てくると、必ず枯らします。ライバルには、手厳しいです」

―― 新しい芽を枯らすんですか。

「自分の体から根っこは出ることはあるけれども、種から出てくる芽は殺します」

―― 殺すとはどういうこと?

「根っこから物質を出して妨害します」

―― えっ。

「ライバルになるから。わが子であっても容赦なしです。根元に芽吹くと枯らしますね」

―― サクラは花が咲くのに、どれぐらいの年月がかかるんですか。

「環境が良かったら、10年ぐらいで立派に咲くと思いますけれども。成長が早いですからね」

―― すごく環境に適応している、適応してきたということですね。

「そうですね」

マツは過酷な環境ほどパワーを発揮する

―― 次はマツですが、マツというと、何かこう和風なイメージがしますけれど。

「マツはここぞというところに生えているんですよね。パワースポット、神社仏閣とか。やっぱり、それは人がマツを植えたからなんです。昔は『門かぶりの松』と言って、家の入り口にもいたりしますけれども、マツにはすごい力を感じていたからですね。特に日本人はマツに対する信仰心というものを強く持っていて」

―― 実際に木としても強いんですか。

「強いです」

―― 防風林にもなりますもんね。

「これも人と一緒ですが、置かれている環境によりけりですね。マツは痩せ地では抜群の力を発揮しますね」

―― 過酷な場所ほどパワーを出すんですか。

「他の木が生きていけないような岩山とか海岸、波しぶきを浴びるような所、森林限界といって、標高が最も高いところは森にならないんですけれども、森にならないぎりぎりのところまで生えている木が、ハイマツ。日本列島の上から下まで、マツが押さえているというか。かなりどこでも生きていける。そして、強力な火力も持っています」

昔から人は生命力の強いマツに憧れてきた 撮影/Yutaka Miura
昔から人は生命力の強いマツに憧れてきた 撮影/Yutaka Miura

―― 燃えやすい。

「ものすごく燃えます。1年中変わらない姿というのも、すごいですね。日本は、季節を愛でることが多いんですが、昔はもっと半ば暴力的なまでに季節感があったと思うんですよ。夏は暑くて、食べ物がすぐ腐るから、病気も流行りやすい。冬は寒く、季節の変化がいろいろあって。ですが、マツは強いです」

―― 夏も強くて冬も強い。確かに海水浴場の近くにもあるし、雪景色にも合うし。

「1年中、姿が変わらないというのがすごい。だから禅寺にもよく植えられます」

―― しかも形状が格好いいですよね。絵にも描かれていますけど。庭園のマツは伐りそろえられたりもするじゃないですか。どうとでもなる木ということですか。伐っても燃やしても。マツはそういう強さがある。

「昔、人は病気になって簡単に死んだじゃないですか。マツは変わらない姿で、痩せ地でも生き続ける。そういうものに人は憧れたと思うんですよね。あやかりたいと。だから、神社なら神様が降臨する特別な木はマツがよく選ばれました。マツの霊力、パワーに人は惹かれたのかなと思います」

タケは成長も早く、素材としても万能

―― 次にタケですが。タケは子どもでも絶対分かると思います。

「タケは和風みたいですけれども、タケの原生林は日本にはないんです。中国からです。でも、日本に文字がなかった以前から来たと思うので、もし、日本にタケの原生林があれば、パンダみたいな動物もいたはずなんですけれども。なんで、タケを生やしたかというと、便利だったからですね」

―― 早く成長しますしね。

「素材として万能ですね。よくしなるので竹細工として、あらゆる器にもなるし、籠もつくれるし、とがらせたら武器にもなるし」

―― 竹やりとか。

「中が空洞で節をくり抜いたら、管になるから、水道管にもなるし、葉っぱに食べ物を置いておいたら、抗菌作用があるので長持ちするとか。タケノコが採れておいしいとか」

よく見かける群生するタケの光景は実は一個体 撮影/Yutaka Miura
よく見かける群生するタケの光景は実は一個体 撮影/Yutaka Miura

―― タケは1本だけじゃ生えられないんですか。群生しているイメージが。

「あれは根っこでつながっているんですよね」

―― 1つの家族みたいな感じですか。

「一面竹やぶでも、一個体だったりします。根っこがつながっていて、ネットワークですよ。だから、家の地面からぴょこって出てくるのは、根っこでつながっているから」

―― お互いに共存しているから、邪魔しないですね。タケは早く伸びるでしょう?

「もうすさまじいですよ」

―― 1年でどれぐらい伸びます?

「1年で完全に大人の大きさになります。10メートルぐらいはありますね」

―― 伐っても伐っても生えてくる印象が。

「根っこがつながっているから。1日で1メートル伸びたと聞いたことがあります」

―― タケにはたくさんの利用価値がある。

「今はタケを使わなくなったので、どんどん広がっていますね。生えているところは里に近いですから」

松竹梅が選ばれたワケは?

―― せっかく、松竹と聞いたから、一応、ウメも聞いておこうかな(笑)。

「ウメもいい木ですね。ウメはどんなに大きくなっても10メートル以上にはならないですよね。ウメの巨木は見たことがないと思うんですよ。大きくなりすぎないので、庭や公園に生えて、花が咲いていい香りがする。ちなみに、松竹梅になぜウメが入っているかというと、最も厳しい冬に花が咲くから。タケもマツも冬にも姿が変わらない。ウメはそのとき花を咲かせる。だから、すごい生命力ということで、縁起がいいとしてあやかった。やっぱり生命力をもらいたかったんですかね。元々ウメも日本の木ではなくて中国です。だから森にはいないんです。森には外来種は世代交代できないんですよ」

―― 山にある森は、在来種が生えているということですか。外来種ではなく。

「そうです。まれにね、時々頑張っているやつがいるんです。ニセアカシアとかキリとか。時々紛れていますけれども、原生的な森になっていくと、いなくなりますね」

―― タケとウメは中国から連れてきた。

「特にウメは実が良かったみたいですね。ウメイと言っていたんですけれども、実を食べると薬用があって、食べたら風邪になりにくいという」

―― 見栄えもいいし、強い。そして、生命力があって、花を咲かせて、実が食べられる。万能な木ですね。

「梅雨は梅の雨と書きますから。ウメがちょうど実る頃に梅雨入りしますから」

―― それで、梅雨なんですか。

「だから、ウメの実が実るのは大ごとやったと思うんですよ。恵みの雨だという」

イチョウは恐竜と同期の木

―― 次に、イチョウですが、今、何本ぐらいあるんですか。

「イチョウは今、日本で最も並木がたくさん植えられている木で、データは古いですが、2007年で57万本の並木が。今はもっといるかもしれません」

―― 並木道に利用するのにいい、イチョウの特徴というのは?

「剪定しても強いのと、季節感がある。秋には色づくというのと、昔はギンナンが採れたというのも良かったみたいです。体に水分が多いので、火事はイチョウで止まるんです。だから、昔、日本は木造家屋が密集していたからイチョウを植えられたんです」

―― 焼けないんですか?

「焼けないんです。水分が多いから止めるんです。だから、伝説で火事があったとき、イチョウが涙を流して、火が止まったと言うんですけれども。今も神社仏閣で本殿の横とか宝物殿の横に立派なイチョウが残っているのは、守るためです」

―― イチョウはどこにでも生えるものなんですか。

「いや、イチョウも元々日本の森にはいないんですね。平安時代に日本に渡ってきた。厳密に言えば、日本には100万年以上前は生きていたんですけれども、絶滅したんですよね。ギンナンを食べて、どこかで排せつしてくれる大型動物がいなくなったからだと言われているんですけど。世界中にいたのがいなくなって、日本もそうで。中国の奥地でひっそりと生きていた生き残りで、恐竜と同期の木です」

圧倒的な存在感のイチョウ。「1本で森ですよ、完全に」と三浦さん 撮影/Yutaka Miura
圧倒的な存在感のイチョウ。「1本で森ですよ、完全に」と三浦さん 撮影/Yutaka Miura

―― それがどうして現代に復活したんですか。

「平安時代に珍しい木だということで、日本にもたらされて。圧倒的に大きくなるというのもいいですし、他にはない異形の姿というか」

―― それで、環境に合ってきたということですか。みんなが伐らないようにしたということですか。どうして、イチョウがこんなにも長生きできているんだろう。

「北に行けば行くほど元気ですね。日本で一番大きいのは青森県深浦町というところにいるやつですけれども、すさまじいですよ。幹の太さは、7メートルぐらいかな。枝が伸びて、途中から木根を出して、それが支柱みたいになっている。マイ支柱みたいな。北金ヶ沢のイチョウという木です」

―― すごいですね。イチョウは並木に適しているんですよね。どのぐらい間隔をあければいいですか。

「あればあるほどいいですよ。ものすごく大きくなる木ですからね」

―― 近いと遠慮をしながら大きくなるということですか。

「詰まりますね」

―― 並木道のイチョウは隣との間隔が迫っている気もしますが。

「並木はわりと横から光が当たるので、詰めてもそれなりにも生きますけれども、どうしても成長に応じて、間引くことにはなるんでしょうね」

モミジは率先してナンバー2になりたがる木

―― 最後はモミジですが。

「モミジだったら、自然樹形を見てもらえたら、すごくうれしいですね」

―― それは、どこに行けば見られますか。

「東京だったら、明治神宮とか。奥多摩の渓流とか。川の水が好きなので、川近くにいて、圧倒的に横に広がるんですね。木漏れ日が好きな木です。縦に伸びずに横に伸びて、傘みたいに木漏れ日をいっぱい浴びて。大きな木とは張り合わない。ケヤキ、エノキ、ムクノキという3本、川沿いによく生える木がいるんですけれども、その下が好きですね。京都だったら下鴨神社のところの糺の森にも立派なのがいるんですけれども」

―― 木の中でも、上に、上に、他よりも上に行って、日を浴びたいというより、横に伸びていくわけですね。

「率先してナンバー2になるみたいな。上には行かない。森の主にはならない」

―― それはどうして。やっぱり上に行くと、雷が落ちるとかそういうこと? 

「上に行くとなると、サクラみたいな生き方しかないんですよね。張り合うというか。上は席が決まっているんで。戦わずして勝つことを選択しているんです」

―― 木をいろいろ見ていたら、木にもやっぱり性格はありますか。

「ありますね。木の種類にも、木によっての個性もあるし、木は光を求めて大きくなろうとしますが、モミジは2番、3番でいいという木。でも一番大きいやつよりも、のびのび生きている気もしますね」

木漏れ日が好きなモミジ。横に伸びていく姿と葉の色が美しい 撮影/Yutaka Miura
木漏れ日が好きなモミジ。横に伸びていく姿と葉の色が美しい 撮影/Yutaka Miura

―― 三浦さんは個人的にどんな木が好きですか。

「それを聞いていただくと、いつも困るんですよね。選びにくい(笑)」

―― じゃあ、気が合うなあ、自分みたいだなあと思えるのは?

「今は、憧れはエノキですかね」

―― エノキはどういう特徴があるんですか。

「街の中でもよく生えるんですよ。実がオレンジ色から赤色になって、9月の中旬から10月ぐらいに熟すんですけど、食べたらほんのりおいしい。元々、川の近くにいた木なので、わりと痩せ地でも頑張って生きるんですよね。アスファルトでも。街の中でも森になろうとする先頭バッター的な木でもあるんで、とても大きくなって。生える場所と環境にもよるんですが、環境が良かったら、150歳、200歳ぐらいにはなりますね」

―― 三浦さんは木を見たら、だいたい何歳でどういう性格かも分かる?

「だいたい。生えている環境や種類によって。同じエノキでも森の中で生えていたら負けまいとして伸びますけれども。1本だけだったら、悠然と」

「木陰で昼寝したら一番居心地がいいのがエノキ」と三浦さん 撮影/Yutaka Miura
「木陰で昼寝したら一番居心地がいいのがエノキ」と三浦さん 撮影/Yutaka Miura

―― どうして、エノキが自分と合うと思えるんですか。どこが似ているんですか。

「合うと言うと、おこがましいですね。やっぱり憧れです。エノキの語源が『枝の木』なんですよ。枝ぶりがとても細かくて、木漏れ日ができて、木陰で昼寝したら一番居心地が良かった木ですね。1本で森みたいになって。漢字で書いたら、『榎』。エノキの下なら、夏でもすごく涼しくて、気持ちいいんです」

―― エノキは居心地がいい木なんですね。

「グッドな木」エノキに憧れて

「そもそも木陰は日当たりのいいところと気圧が違いますから、風が吹く。昔、東海道や中山道の一里塚に植えられた木ですね。ただ、街の中で大きくなると、伐られることが多いんですけど。それでも懲りずに大きくなる。エノキの葉っぱが好きなのが、タマムシ。オオムラサキという日本の国蝶に指定されているチョウチョウの幼虫がエノキの葉っぱを食べて」

―― 木から派生して、今度は虫にも詳しくなっていってるんですね。

「今、頑張っているところですね。エノキが生えるといろんな虫がやってきて、その虫を食べに鳥がやってきて、鳥が実を食べてという生態系が豊かになる。エノキの落ち葉はいい土になりますから。『え』は大和言葉でグッドという意味みたいなんですよ。だから、『え』のきはグッドな木みたいな。江戸時代の頃は吉の木と書いて、エノキと言ったりしていたそうです」

―― 生態系が豊かになる木。命を育む木。素敵ですね。三浦さんの目指すところですか。

「そうですね。憧れますね」

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