「出る杭でも打たれない」絵本作家五味太郎に聞く3~子どもから心配される親になりなさい

撮影/ナカンダカリマリ http://nakari5.tumblr.com

●子どもから絶大な信頼を受ける生き方

著書378冊、世界一の絵本作家、五味太郎に聞く

「子どもが自主性を持ったら、困っちゃう大人たちがいるのよ」

子どもの読者から圧倒的な支持を受け続ける絵本作家、五味太郎氏。

その子育て、教育論が度肝を抜く。

「“五味太郎は裏切らない”って、小学生から手紙が来てさ」

「俺、裏切る気もないし、テクニックもないから、“五味太郎が好きなことを描いているんだ”っていう安心感でみんな読んでいるわけ」

「子どもってのは基本的にいい子だから、一生懸命やってるんだよね。無理して付き合ったり、空気読んでたりして」

「極端までに子どもを追い込んでるこの社会は異常な感じ。大人のほうはもう面倒くさいから、無視してるよね」

「子どもと携わっている人って、“人間は、ほっといたら、サボっちゃう”と思っているタイプの人なんだよね。俺のまわりは、“人間、ほっとくと、なんかやるよね”っていうやつばかりだよね」

「しんどければ、やめればいいのにっていう感じを言わないで、ちょっとサポートしてあげるのは親の仕事かなと思って、するよね」

「学校に行きたくないって、これほど言っているんだから、何か理由がある。それを何が何でも“学校に行くべき”ってやっちゃうとね」

「子どもたちは付き合う能力はつくんだけど、心の真ん中はどうも熱くないっていう。生きていく元気は、むしろそがれている」

「言われるよ、“五味太郎の親にだけはなりたくない”って(笑)」

「彼らは、うすうす気がついているわけ。ずーっと絵本を読んでて、楽しい話で、結局仲良くしなさいって話なんだ、あるいは、失敗してもみんなで助ける話なんだ。なめてるよ。ところが、五味太郎の本は、逆に、あれ? って思うわけ」

「娘は面白いよ。すごく心配してくれてね、俺のこと。唯一言える成功例は、子どもから心配される親になりなさいということ。子どもがよく育ったっていう意味なんだよ」

「たかだか80年、100年でしょ。先に生まれたのが、なんで、えらいんだ?!」

「これが大好きって実感の中で生きてくのがすごくやりにくい社会だよね」

「引きこもりも、幼児虐待も、みんなネグレクトなんだよ」

独創的な考えと直感的な行動力に裏付けされる五味語録。

楽しいことをやり続けている人の人生っていったい。

好きなことを見つけて、それを生業にして、

成功している人って、どんな発想を持っているのだろうか。

独自の視点が際立つ、驚きのアーティスト生活とは?

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Q 私事ですが、キッズスクールのティーチャーをしているんですけど、今回取材するにあたって、授業で、五味先生の本を何冊か読んでもらって、「この作者はどんな人だと思いますか」っていう質問をしてみたんですよ。本の感想じゃなくて。そしたらね、どんなことを言ったかというと。小学校1年生の子たちです。「小学校1年生の人がつくったんじゃないの?」って言うんですよ。あとは「命知らずの人」「あちこち行っている人」「20代の女の人」「旅行に何回も行ったことのある人」「変なことばかりする人」、ふふふ(笑)、というような意見があったんですね。

A なるほど。

Q はい。「実際は、こういう男性で、71歳の人なんだよ」「へえー」って、写真見せたら、「かっこいい!」とか言っていたんですけど。五味先生は、ご自分のことを、どんな人だと思いますか、ズバリ。

ズバリって。どんな人だろうなあ…。ほんとにわかんないね、そんなのはね。

Q 今言われたことは当たっていますか。あ、いや、何言われても「合ってる」と思うんですよね。

A 合ってる、合ってる。「ああ、なるほど」と思うし。それはもうガキの頃からそうだよね。いじわるって言えば、いじわるみたいな気もするし。「冷たいよね」って言われたら、「冷たいかなあ」とも思うしね。だから、一つには、言う人のことだよね。俺を冷たいと捉える人がいて、そっちのほうに興味があるよね。「なるほど」と思う。

Q そういうときって、追究するんですか。

A しない(笑)。絶対しないよ。

Q 「どうして冷たく思うの?」とか。

A いや、全然しない。たとえば、お金に細かいかもしれないし、ズボラかもしれないし。それは、その人たちが考える像だよね。でしょ?特にまた、今ちょっと贅沢に、外国に広がっているから、人間関係が。いろんなこと言うよね、みんな。「日本の人ってさ」みたいな。「五味太郎はさ」って。みんな、まあ、半分ほめてくれたりするんだけど、それも「そうやって見えているんだなあ」って。その人たちの考えがわかるよね。

Q つまり、作品と似ていますね。自分の作品がどう思われるとか。

A そうそう、そうそう。

Q この作品がどう思われようと、一人歩きしようと。

A 結局、「語るに落ちる」という言葉があるよね。「語るに落ちる」って、「その人が言っているのは、その人の問題なんだよね」っていう感じがあるじゃないですか。だから、「なるほどな」と思うと、たぶん人間関係っていうのは、そういうとこで成り立っているんだろうから、「何言われても平気」って意味であり、その、言う人のことが興味深いよね。うん。

Q じゃ、五味先生は自分がこういうふうに思われたいとか、こういうふうに理解してもらいたいとか、あんまりないんですか。

すごくあるんだけど、無理だよね、それは(笑)。ガキの頃は思ったよ、俺。

Q どういうふうに思われたいんですか。

A いやいや、言わないけどさ。

Q はい、へへへ(笑)。言わないんですか、そこまで言って。興味そそりますけど。

A あるじゃない、たぶん無意識に。「でも、全然違うな」みたいなのは、いっぱいあるんじゃないですか。

Q そういうときはもう、悪あがきせずに、思われっぱなしで済むんですか。

A いや、そういうことが楽しいよね。たとえば、スキーをやってて、ビュー、シャッと滑って、「みんな見てるな」と思っても誰も見てなかった、みたいのあるじゃない。それなんだよ、へへへ(笑)。あるいは、誰かが見ていて、「うまいですね」って、「おお、見てたか」とかさ。そういう視点と人間のやることって、いつもファジーに生きている。だから、絵本を描くっていうことは、まさにその代表で、俺は割と早いけども、3日、1週間かかって描きました。それだけなんだよね、作業は。そこから何を言われようと、お楽しみと思わないかぎり。

Q だんだん、わかってきました。たとえば、ある人が自分は暗い性格なんだけど、暗いと思われたくなくて、明るく振る舞っているとするじゃないですか。誰かにこう思われたいとか、こういうふうにしたいということで、自分を変えていくとかじゃなくて、こうやってて、誰がどう言おうと、それはその人の勝手だから、って、なんて言うかな、手放すというのか、任せられるというか、一つの作品として。

そうじゃなければ作家って立場はとれないよ、という意味だよ。少なくとも、今ちょっと弱気だから、部数少なくなってるけど、初版について、7000部とか8000部とか5000部とかって…出るわけじゃないですか。そういうときに、1軒ずつ訪ねていって(笑)、「こうなんですよ」って説得できない仕事なわけ。だからもう、あきらめるしかない…っていうことでしょう。音楽は、すごい難しいのは、ライブでピアノを弾いていて、「あっ!」って音間違えるわけよね、弾き直したいんだけど、もうどんどんいっちゃう。ああいうライブ感覚が、絵本の場合、ちょっとのんびりしてて、一回「大丈夫かな?」というのがあったりする。でも、手放したら、おんなじことなんだよね。ただ、ライブの場合は、記憶だけ残っているけど、俺の友達なんか「大変いい演奏でした。半音の半音が、なかなか微妙でした」「お前、やなこと言うな」みたいなことがあって。でも、消えちゃうじゃないですか、ライブは。でも、絵本は残るよね。

Q ねえー。

残したいと思っているわけだし。それをいうと、その呼吸が、俺はやっぱライブはちょっとしんどい人なんだろうね。講演会でしゃべって、「適当に」とか「さっき言ったけど、あれ違った」って修正するとか。作品をライブで、たとえば、踊りをピシッと見せるとか、そのための緊張感とか、そういうものがあんまり好きじゃないんだろうな。

Q うーん。

A 冗談だからやっているけども。そういうのも、時々やってるんだね。へへへ(笑)。あの緊張感は、弾き終わって、笑って「まあね」とか言いながら、汗びっしょりかいて。

Q つまり、話をお聞きしていると、嫌だなあと思うことと好きだなあと思うこと、すごくはっきりと肌身でわかるんですね。たとえば、たくさんの中でやって、人に気を遣うのは、一回はいいけど、2~3年はやめておいたほうがいいなあとか、人にサービスするんじゃなくて、一人でやっていきたいのも。そういう肌感覚というか。

A それはもう、俺は、極端に言えば、ガキの頃からじゃないかなあっていう気がすごくする。だから、付き合う付き合わないは別としてもね、「やだな」って思って。たぶん、うちの娘たちも、そこんところは俺も敏感だったから、「なんか、この子、腑に落ちてないな」「なんか付き合ってるな」というのは、気がついて。

Q うんうん。

で、子どもってのは基本的にはほとんどいい子だから、一生懸命やってるんだよね。一生懸命無理して付き合ったり、それこそ空気読んでたりする子って、あんまりエネルギー使わないほうがいいじゃないかって思うから、「しんどければ、やめればいいのに」っていう感じを言わないで、ちょっとサポートしてあげるっていうのは親の仕事かなと思って、するよね。

Q なるほど。そうですね。

A いや、だから、今の子どもたちがとっても厳しいのは、きついのは、世の中がシステム化してくでしょ、どんどん、どんどん。学校にしろ何にしろ。で、終わった後、学童へ行けとか、〇〇(なんとか)行けとかって。そういう中で言うと、付き合うって形のものばっかり多くなってくるんだよね。で、大人のほうが鈍いから、大人ばかりに説明しないとOKでないわけだよ。

Q あー。いろいろ理屈こねてね。大人が納得することを言わないとと。

A 自分でもよくわかんないけど、なんか気持ちが落ちてるってとき、あるわけだよ。

Q 子どもだってね。

A 当たり前にあるわけ。

Q 人間だからね。

そういうことを、汲んであげられない。なんか、それこそ学校に行きたくないって言う子がこれほど言っているんだけど、何か理由がある。それを何が何でも付き合わせて、「学校に行くべき」にやっちゃうんだよね。その「付き合う」っていう能力はつくんだけど、でも、心の真ん中のところはどうも熱くないっていう。いわゆる、なんて言うんだろう。単純な生きていく元気といったようなものは、むしろそがれている。

Q だから、引きこもりとか不登校とか、強制終了みたいな感じで、「もう無理、もう絶対無理」ってなるんですかね。

A そうだね。極端まで追い込んでる、この社会について異常な感じっていうのが、大人のほうはもうめんどくさいから、無視してるよね。学校の中で、いっぱいいじめがあるわけ。だけど、そのいじめをどうやってなくすかって、みんなで、いろんなこと考えて。でも、学校というシステムについて考えたことないものね。あのシステムを一回解体してみようかって、勇気のある、本気で考えているやつは誰もいないもんね。

Q ルールが多いですからね、学校は。

A だから、問題が起こるわけ。実際、「学校」っていう言葉はとっても不健全なんだよね。あれを、どうして健全にしないんだろうって、ずうーっと思っていて。

Q たとえば、どういうふうにしたら、健全になると思います?

A 簡単に言うと、その子の自主性っていうことだよね。

Q やらされている感じじゃなくて?

A あのね、子どもの文化に携わっている先生だとかっていうのは、残念だけど、結構エネルギーの低い人が多いんだよね。

Q 元気がないみたいな。

A うん。つまり、もっと言うと、大人の世界だったら、ちょっと危ないけど、子どもだったら大丈夫だ、ぐらいな。これ、言っちゃうと、波風が立つんだけど、実際そうなんだよね。現場で会えば、わかるもん。

Q ちょっと疲れている感じがするとか。

A ついでに言うと、子どもの本に参加してくる作家たちっていうのも多い。「大人の世界だと、ちょっと自信ないけど、子どもだったら、この程度でいいんじゃないだろうか」って。「たぬきがやってきました」って、「きつねがやってきて、けんかして別れて、くまさんがダンスしました おうちへ帰ってよかったね」って。大人じゃ、全然無理だけど、子どもだったらいいのかなっていうようなレベル。で、大人の世界の絵ってのはきついけど、子どもの絵だったらいいのかな、っていうんで、参加してくる。これ無意識だよ。だから、レベルがものすごく低いんだよ。

Q 失礼な話ですね、子どもにしては。

A そう思ってほしい。子どもにとっては、ものすごく失礼なことなの。だから今、子どもの世界の教育の中で、はっきり言うと、上から目線の厳しい先生みたいの多いわけ。ところが大学まで行くと、「ふざけんじゃねえ」って、体力もついてくるから、先生ったって、インストラクターになれるわけよ、ちゃんと。

Q ああー。

A 実際、その、子どもの指導をするみたいなのが、たかだか教員課程だけ通った? あんな素人に子どもをなあ。「導いたりするんじゃないよ」ってことなんだよね。

Q 「指導するんじゃないよ」と。

A たとえば、高校生の男の子、女の子がちょっと恋をしちゃったりして、そして先生に呼び出されて、「ね、とりあえず、恋愛問題は二十歳(はたち)すぎてから」とか。

Q 言われて(笑)。

A それで「はい」みたいになるわけ。でしょ? で、こっちで先生はもう、何していいかわかんないから、時々お金使っちゃったりというようなものが、今の時代の雰囲気をつくっていて。誰も子どもを導くなんてことしないんだから。はっきり言って、会話をすればいいんだよ。

Q もっとね。

A でも、今、利権があるから、学校のことは学校がやるっていうのがあるんで、それだけで、いろんな浅知恵でやるんだけど、なんの解決もならない。極端な話、最終的には殺しがあったり、飛び降りがあったり。

Q そうですね。いろいろありますものね。

A それで、コメント出すっていったら、すぐわかるでしょ。「うちに、僕に責任はないです」っていうのを、みんな一生懸命言うでしょ。責任があったら詫びちゃう。そうじゃなくて、「基本なんだよね」っていう形。その、子どもの文化っていうのが、いつまで経っても元気になれないのは、やっぱりみんながネグレクトなんだよね。はっきり言って、ネグレクトだよ。今の子ども関係の人。少なくとも、本つくるっていうときに、「真剣にやろうぜ」って話を、今、若い編集者なんかには、生意気だけど、言うよね。「本気にやろうよ」って。だから、ちょっと手抜くと、一般理論で判断をしたりして、「これはこうだからこうですね」みたいな。それを、もっと子どもの、理論なんかじゃなくて、実感で。ここだけは完全に俺の自慢なんだけどさ。ガキが俺の本読んでんだけど、「五味太郎は絶対に裏切らない」って。俺、裏切る気もないし、テクニックもないから、「五味太郎は、五味太郎が好きなことを描いているんだ」っていう安心感でみんな読んでいるわけ。

Q それは、子どもにこう思わせようとか、教えてやろうとか、そういうことじゃないということですね?

彼らは、それについても、うすうす気がついているわけ。ずーっと読んでて楽しい話で、「結局、仲良くしなさいって話なんだ」あるいは「失敗しても、みんなで助ける話なんだ」。なめてるよ、あいつらは。ところが、五味太郎もそうかなと思って、逆に「あれ?」って思うわけ。

Q あっはは(笑)、そう。読んだら、実際に「あれ?」って言いますよね。

A だから、要するに、これは事実。手紙が来て、俺もびっくりしたんだもん。「五味太郎は裏切らない」って。えっへっへ(笑)。

Q いくつぐらいの子が?

A 小学校半ばとか。

Q へえー。信用のおける大人ですね。

A それは翻って…、それを「裏切り」って言葉で言うのは、あまりにも酷かもしれないけれども、うすうす、みんなが自分の価値観ではない、一般論でやっているということに気づいている。編集者も一般論で、「一応文科省がこう言っていますから」とかっていうサポートをするならば、やっぱり、そこのところに止まっちゃうでしょうね。結局、教育的配慮っていう形の中で。

Q さっき言われたネグレクトとか、指導するとか、そういうことではなくて、自主性を持つために、ちゃんと本気で付き合っていくっていうことですか。

A ここにインタビューに来てくれたのと同じように、「五味太郎は、あの人なんだよね」っていうことは、結果的に、それ以外はまた俺の中にはないわけだよ。彼らを導こうなんて気も全くないし。

Q でも、一つ言えることは、「こんな子どもに育てたい」ともし思ったとしたら。たとえば、将来ね、うちの子が、好きなことをして、それが生業になってね、楽しそうにワクワク生きてほしいって。

A でも、言われるよ、「五味太郎の親にだけはなりたくない」って。

Q (笑)でも、お父様も少し変わっているんですよね?

A 変わってるかな? 「変わっている」って言えば、変わってる、変わってなければ、変わってないし。

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Q それはそうなんですけど(笑)。どういう教育をされていたのかなと。お祖父さん、お父さん、五味さんとつながる、何か教育方針みたいなものはあるんですか、子育てについての共通点というのは。

興味がないとこじゃないのかな。

Q ん?

A 興味がない。

Q 子育てに?

A うん。

Q 子育てをしたという感覚がないということですか。

A 一緒に暮らして、「早くメシ食って、寝ろ」って感じじゃないですか(笑)。それ以外にあまり興味がなく。

Q じゃ、あんまり「ああするな、こうするな」とか言ったことないですか。

A 皆無じゃないかな。

Q はあ! 娘さんたちにも。

俺が? 俺が娘に? ないよ、それは。

Q 自分もそれを言われたことないんですか、お父さまから?

A ないない。俺、息子がいるんだよね。ちょっと、ずいぶん後でできた子で、今22歳になったのかな。四十いくつぐらいのときに。そいつと、時々メシ食って「あのさあ」みたいになって、俺も一応人の親だなと思うからさ、「お前さあ、将来のこと、考えてんのかよ」とか言ったわけよ。そしたらさ、「あのさ、ちょっと質問なんだけど」って、「太郎がさ(あっ俺のこと太郎って言うの)、19ぐらいのときにさ、将来のこと、考えてた?」って言うわけ。「あんまり考えてなかったなあ」って言ったら、もうそれで、話が次。

Q あっははは(笑)。

A 「お前、今ズルしたな」って言ったら、「何が?」とか言って、賢いんだよ。

Q はああー。

A 俺は、できれば「ごめんなさい」ってあやまらなくちゃいけないぐらいに。そうなんだよ。そういういい子なんだよ。

Q へええー。

A で、「ぶっちゃけた話さ。お前、どうなの?」ったら、「うーん。なんとかやれるような気がするんだよね」って言うんだよね。

Q へええー。

A なんともやる気ないんじゃないの。はっはっは(笑)。必ず「金ねえな」みたいで。そんなやつよ。うちの娘たちも、それなりに、なんだかわかんないんだけど、幸せに暮らしているでしょう、たぶん。うんうん。

Q その、娘さんが、ある時期、不登校になられたこともあるっていうときは。

A 「不登校」って言葉を使うんじゃなくて、学校行かなかったって、それだけの話。

Q そういうときも、どういう対応を。「なんか、学校好きじゃないのかな」ってときも、ちょっと距離を置いて、間接的に見ていたんですか。

でも、その子の人生じゃない。だから、子の視点が全然少ないよね。だって、「その子の読書じゃない」ってことだよね。

Q やっぱり、一貫している、話が。なるほどね。

A すごい簡単でしょ?

Q 簡単。

A だから、うちの親父なんかも「お前だろ」って言う。穴掘って落っこっても。なんかしたときに、「ふーん」とか言うわけ、うちの親父は。子供の頃に、車にいたずらなんかして、警察がゴタゴタ来て何か言われても「ふーん」とか言って、警察には「ご苦労さま」とか言って、「それで、お前さ、面白いの? そんなことやって」「そんなに面白くないです」って言ったら「あー」とか言ってたよ。

Q (笑)。そこでこう、教えを諭すというようなことはなかったんですか。

A うん。全くないんだよね。だから、翻って、世間の親みたいのって「ちょっと、いいなあ」って。よく俺の友達なんか、怒られてて、「お前、座れ!」とか言って、ちょっと厳しくて、いい感じだなと思って。

Q うへへ(笑)。

A 「うちの親父、ないな」みたいのがあって。全然ないの、そういうの。

Q へええ。

きついよね、考えてみたら。「それはお前の人生だから、お前が決めればいいんだよね」って、きついじゃないですか。

Q ほんとに自主性、「自分で生きろ」みたいなことですかね。

A 親父の言うことは、「へえ」と「ほー」とかばっかりだよ。

Q えっへへえ(笑)。

A 自分のことが大事だから、みんな。だから、総論として、なるべく人の話聞かないほうがいいよね。でもこれ、インタビュー来ているときに、矛盾するんだけど。

Q わははは(笑)。

A 人の話はなるべく聞かないほうがいいっていうのが俺の持論。

Q それはどういうことですか。

「自分で考えろ」って意味だよね。

Q ああー。なるほど。そういう意味ですね。

「参考程度に聞け」って意味だよね。「人の話をしっかり聞いちゃだめだよ」「うんうん、そういうことあるよね」ぐらいにして。

Q じゃあ、鵜呑みにして、その通りにしたり、まねしたりしたら愚の骨頂ですか。

A もう愚も愚も愚だよね。まあ、できないしね、はじめから。だから、なんかね、長生きする人のタイプってね、人の話聞いてないって人が長生きしてるね。

Q あははははーは(笑)。

A ほんとだよ。見てごらん。まわりで、ほんとにいい加減に長生きしている人って、ほんとに人の話、聞いてないよ。うちのおっ母が今95歳かな。もうほんと、いい加減よ。でも、しゃっきりしてるよ。人の話、全然聞いてないもん。

Q (笑)じゃ、長生き、もっとしますね。

A 耳はあんまよくないから、電話代かかるけど。時々俺かけたりすると、「なんとかで、なんとかで、なんとかで」って。で、自分のことだけ言ってガチャって切る。親父も「ほー」しか言わないし。

Q でも、その結果、今の五味先生がこういう感じになったっていうことは、育て方としてはいいですよね。

A そう? 知らないよ(笑)。

Q ああしろ、こうしろって、いろいろしつけられて、

A それで立派になるなら、いいじゃないですか。

Q なんかこう、五味さん流子育て。子育てで悩んでいる人、いっぱいいるんですよ。

A いや、暇だからだよ。

Q へへへ(笑)。なんかこう、ヒントを教えてほしいです。子どもが自主性をもつためには。

いや、だから、自主性をもったら、困っちゃうよ、そういう人たちは。

Q ああ、そっか。

A 子どもが、自主性を持って良しとしないもの、そういう人たちは。「ぼくねえ、これからお寺に行くんだ」って、「お寺に行って坊主になりたい」って言っても「ちょっとやめなさい」って必ず言うだろ? 「それ、面白いな」って、うちの親父はそういうタイプだよね。

Q はー。へえー。お母さんは、絵本作家でやっているのはどういうふうに言われます?

A 「あら、うまくいっちゃったわねえ」って、へへへ(笑)。

Q あははは(笑)。

A うふふ(笑)。すごいよ。おふくろとたまに話すと、「あんた、子どものときからさ、なんかこちょこちょやってたけど、おんなじねえ」とか言って、「いや、努力したんですよ」みたいな。「そうよねえ」みたいな。全然、話聞いてないから。

Q 娘さんたちはどういうふうに思っているんですか。

娘は面白いよ。すごく、心配してくれてね、俺のこと。あっ、唯一言えるのは、成功例っていうのがあって、「子どもから心配される親になりなさい」という意味だよ。

Q はあー。

それは、子どもがよく育ったっていう意味なんだよ。「ねえ、太郎、大丈夫?」って、うちの娘もよく電話かけてくる。「もしもし、ねえ、太郎、大丈夫?」って。

Q どういう意味で言ってるんですか。

A いや、よくわからないんだけど、「おかげさまで」って俺、へへへ(笑)。

Q えーーっ!

A っていうのが、だいたい会話よ。うん。

Q へえー。素敵な。

A 今、上の娘がロンドンにずっといるけども、向こうで赤ちゃん産んで、「お前、ハーフ産んでえらいな」みたいなやつがいるんだけど、その子が「ねえ、太郎、大丈夫?」って聞くから「何が?」「いや、いろいろとさ」って。「いやあ、おかげさまで。で、お前、大丈夫?」って、そういうような会話よ。

Q へえー。

A もっとねえ、小学校のときに俺が本を出して、あいつら一生懸命、ま、自分の問題もあるっていうのはわかってたんだな。図書館の中で、俺の本もあるじゃない。そうすると、こう、裏見てさ。貸出量の少ないのがあるじゃない。そういうの全部、借りてくれたりして、えっへっへ(笑)。

Q ええー。「この本はちょっと、あれだよ」って?

A そうそう。「これ、ちょっとマイナーかな」って。それから、「本屋さんに行って、太郎の本、平積みにしてきちゃった」って。

Q ええー。小学校のときに?

A そう。

Q なんて、素敵な。可愛い。頼りがいがある。

そうそう。娘にお世話になったの。

Q すっごおい。

A それから、友達に勧めたりしてね。

Q じゃあもう、親子関係もいい感じなんですね。

A 親子関係じゃないもんね。

Q 友達?

友達。だから、ずっと「太郎」、「太郎」って言ってるわけでしょ。

Q はああ。

A 「うちの太郎が」って言ったときに、学校の先生に怒られて、「『お父さん』って言いなさい」って。で、「お父さん」とか言ってね。「気持ちわりいな」みたいな。ね。

Q なんか、すごく安心する。なんか、読者の子どもさんには好かれてるけど、自分の娘には嫌われてます、じゃ、悲しいなと思ったから。

A 嫌われてるのかもわかんないけどさ。しょうがないじゃないすか。あと、金の力っていうのもあるしね。

Q 金の力?(笑)

A おさえるべきところはそうなんだよ。

Q あんまり、子どもとか大人っていうのを、区別はしないっていうことですよね。

区別するしないじゃなくてねえ、たかだか80年、100年のスパンの中で、あんまりカテゴライズしないほうがいいと思うんだよね。めんどくさい。

Q じゃあ、子どもだからこうとか、子どもってこういうもんですとか、そういうのは、全然カテゴライズしたくないんですね。そういうふうに思ったことあります?

A できない、できないだろうね。

Q もし、五味先生が「子どもってどういうものだと思いますか」みたいな質問をされたら。

寸法が短いやつだよ。

Q 丈が?

A それから、単純に、時間が足りないやつ。

Q あ、まだ生きて年数が少ないみたいな。

A そうそう、そうそう。それだけの話。

Q 生まれてきて、生きて間もない。

A 間もない。だけど、平行移動してるでしょ、ずっと。

Q 大人は生きて長いというだけの話ですか。

A それだけの話。だから、「先生」は、先に生まれたのが先生って書いてるじゃない。

Q うんうん。そうですよね。先に生まれたって書いてる。

「先に生まれたのが、なんで、えらいんだ?!」ってやつだよね。そしたら、おじいさんが一番えらいよね。

Q あははは(笑)。

A そのままいけばね。おばあさんの言うことも全部聞かないといけないよね。うちのおばあさん、いい加減だから。

Q ちょっと、まじめな話を聞くとですね。

A ずっとまじめだもん、僕は。

Q あははは(笑)。じゃ、堅い話で。少年犯罪とかね、幼児虐待の話をよく耳にするでしょ、ニュースで。そういうのって、どう思われます?

A 基本は、だから今言った、その、好きなことを人生でやっていない人々、やれなかった人々。だから、ほんとに教育の犯罪なんだよね。教育の、要するに罪なんだけど、誰も自覚していない。今の教育システムの、子どものシステムの失敗なんだよね。だけど、誰も反省してない。これ、時々こういう、ちょっとまじめなインタビューのときに答えるんだけど。文科省がやってきた、この体たらくのシステムの中で子どもたちがほとんど伸びない、ほとんど暗い人生やってる。それで、あいまいな大人ができてきてる。

Q 労働力にしても。これだけ、仕事もやりたくてもできなくって。就職がなかなかできなくて。家に引きこもっている人の労働力とかも考えたら。

A それをさらに言うならば、好きなことやってないということだよね。で、今、好きなことやる、数字に置き換えない幸せ感みたいなもの、みんなが好きなことをやっている、「この仕事大好き」までいかなくとも、「この仕事がとても愛している」っていうようなものの率を上げるしかないんだよね。

Q ですね。

A うん。だから今、すべてが。若い男が、子どもの頃から釣りが大好きで、おさかなが大好きで、それで中学へ行っても釣りに行って、自分で解剖して食ったりして、いろいろやって。おさかなの人生をやりたいとずっと思ってて。さかなクンみたいなやつとはちょっと違うんだけど、魚が好きで、水産大学入って、それで魚の研究をして、漁業を手広くやっている会社に就職した。そこまでいったら、すごく図式がいい感じでいって、そいつは高校のときから時々うちに遊びに来ていて、「おー、水産大学、すごいね」とか言って、それで、やっているうちに、しばらく連絡なくて、ぷつっと連絡があって、会社に入ったら「魚が見えない」って。「なんにも魚がない」。要するに、貿易をやっているからよ。コンピュータでずっとやってて。「で、お前、何やってんの?」って言ったら、「なんか、あのー、鯨油の輸出とかなんとかばかりなんですよね」って言って。「お前もまあ、頑張れ」みたいな話をしていて。その次に連絡があったときに「僕、やめました」つって、「どうした?」って言ったら、「故郷(くに)に帰って、親父が魚屋やってるんで、親父の魚屋継ぎます」って言って、魚屋になったやつがいるの。そっから、ハッピーで終わりたかったんだけど、やっぱりその魚屋も大変で、スーパーとかあるし。今、それなりに元気で生きてるけど。つまり、逆に言うと、実感で「これが大好き」っていう形の中で生きてくっていうようなものが、すごくやりにくい?

Q 時代ですか。

A だから今、学校を出て、経済学部あるいは経営学部あるいは文学部、〇〇(なんとか)学部っていうのが、「ほんとになんになるの?」っていうぐらいな。

Q ふふふ(笑)。とりあえず、みんな行って。

A 今、絵本専門店なんてやってる方、有名大学の経済学部なんか出てて、「お前、すごいな」みたいなやつが、みんな、「それはさておき」みたいな感じでしょ。それは要するに教育システムも含んで、自分の人生ってどうやって組み立てていくかということを含んだ、そういうことに完全に失敗してるんだよね。

Q なるほどね。

A だから、すっごい赤字がついてる。

Q そう。だから、やりたいことをやりたい、好きなことをやりたいと思っていても、システムもあれだし、どこからどうしていいか、よくわかんない。

A 子どものことについて、さっきとおんなじ話になっちゃうかもしれないけど、子どもと携わっている人っていうのが、割と「基本的に人間というのは、ほっといたらサボっちゃう」と思っているタイプの人なんだよね。ほっとくとサボる人なんだよね。ところが、俺たちのまわりの、本つくったり何したりしてワイワイやっているやつっていうのは、そういうのはまずないって思っているよね、みんな。「人間、ほっとくと、なんかやるよね」っていうやつよね。

Q うーん。なるほど。

A そこの差なんだよ。だから、夏休みの宿題、出すんだ、あいつら。だって、「夏休みだったら、夏休みっぽいことやるよね」って、信じられないわけだよ。

Q だから、指導して。たとえば、絵本作家になりたかったら、学校に行くんでしょうね。教えてもらわないとと。

A そう。「チェロをやります」「誰に習ってるんですか」って必ず聞くよね。「いやあ、いないんですよ」って。「えーっと、あえて言うと、ロストロポーヴィチと…」なんて、ははは(笑)。「えっ?」みたいな。「ロストロポーヴィチさんはもう亡くなられましたよね」なんて、訳のわかんないこと言って、「冗談だよ」。でも事実、ロストロポーヴィチ聴いてて、そういうの、実際は。

Q 聴いて、ほんとに。

A うーん。だから、ヨーヨー・マとかかっこいいの、いろいろいるのよ。

Q うんうんうん。

A 「あれはちょっと無理だな」とかって、あるのよ。そういう、自主的に動くっていくことがあり得ないんだと思っちゃうわけよ。すべて、カリキュラムなんだよ。だから、学校に行って、ほったらかしておいたら、ほったらかされちゃうんだよ。

Q なんか、すっごい、わかってきました。「いつの間にか絵本作家やってた」っていうのは、自然発生的な言い方をされているけど、「そんなはずはないだろう、そんなはずはないだろう」と思ってましたけど、ほんとに「そんなはず」なんでしょうね。

A 「そんなはず」だから、やや俺っぽく、自分が大事っていうタイプの人間っていうのは、みんな動きたいんだけど、学校のシステムが忙しいから、ある程度こなさなくちゃいけないから、時間とられてるわけよ。

やらざるを得ないことをやらされているから。

A だって、実際に、たとえば、ちょっと面白い本読んで、谷川俊太郎さんだとか、「面白いな」って読んでて、ちょっと入れ込むと、もう次の時間のベルが鳴って、次やんなくちゃいけないでしょ。それで、理科の時間になったときに、まだ谷川俊太郎読んでたら、「それ、しまえ」って言われるだろ? そんな環境に生きてるんだよ、やつらは。

Q 時間割でね。

A うん。それで、理科もしょうがないから付き合ってると、「ちょっと面白いな、昆虫」って思うと、今度は水泳だとか言うんだよ。「昆虫、面白いな」と思ったら急に、「パンツはきかえて、泳げ」とか言うんだよ。そういう中にやつらは生きてると。じゃあ、何の能力がつくかというと、付き合う能力だよ。理科は適当にやっといて、水泳は適当にやっといて、給食も適当に早く食っといて、「次は何?」って「次は音楽だ」って。付き合う能力がつくんだよ。それで、付き合う能力の人が出てきて、付き合う能力で、今仕事してるじゃない。

Q 確かに。だから、そういうのに気づいて、パッと社会に放り出されて、誰も教えてくれないし、なんの時間割もなくなったときが「どうしたらよかったんだろう」ってなっちゃうんですよね。

A そうすると、休みがこんなにうれしくて、ベースアップがちょっと期待していて、で、ボーナスもらってっていう、その喜びを発見するしかないでしょう。

Q なんか、悲しくなっちゃう感じ。いやあ、なるほど。でも、もしこの記事を読んでいる人が、たぶん仕事の合間にこれを読んでくださっている人とかが、「でもちょっと、これから軌道修正したい」って思うかもしれない。

A 無理でしょ。

Q 無理? そんなあ、またはっきりと。

「エンターテイメントで読んでください」ってことよ。

Q エンターテイメントでね。なるほど、堅苦しく、深刻な話じゃなくて、楽しく読み物として、読んでくれと。こういう生き方、考えもあるということですね。

A そうそうそう。

●第4回に続く(4月27日配信予定)

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