育児に自信が持てないお母さんたちへ、プロからのアドバイス

写真と本文とは直接的な関係はありません。(写真:アフロ)

 核家族化や少子化によって、「自信を持って育児ができない」と考えているお母さんたちが増えている。ある調査【※1】によると、「子どもの食事に心配事がある人」は「ない人」に比べて、「育児に自信が持てないことがある」割合が、2倍近くにもなることが示されている。つまり、食事の心配事がなくなると、育児に自信が持てることにつながるらしいのだ。

 また、同じ調査で、子ども(2歳~6歳)の「偏食」「少食」「食べ過ぎ」などで困っている人が4割近くいることも示されてある。乳幼児の食行動問題に詳しい保健学博士・管理栄養士の堤ちはる氏(相模女子大学栄養科学部健康栄養学科教授)は、中でも「よく噛まない」「食事に時間がかかる」の2点に着目し、その対応策と予防法を伝えている。

■子どもが「よく噛まない」のには必ず理由がある

 食べ物をよく噛まないで呑み込んでしまう子が多く、喉を詰まらせるなどして、致命的な状況を招くことも少なくない。こんなとき、やみくもに「よく噛んで食べなさい」というだけでは改善されない。子どもが「よく噛まない」ことには、たとえば次のようなそれなりの原因があるからだ。

・食べ物が子どもの歯の状況や咀嚼力に合ってない。

 このような状態では、よく噛めないのは当然で、丸呑みや早食いなどの癖がついてしまう。たとえば1~2歳児が「食べにくい食品」としては、弾力性の強い物(こんにゃく、イカ、タコなど)、皮が口に残る物(豆、トマトなど)、口の中でまとまりにくい物(ひき肉、ブロッコリーなど)、ペラペラした物(わかめ、レタスなど)、唾液を吸う物(パン、サツマイモなど)、誤嚥しやすい物(餅、こんにゃくゼリーなど)、噛みつぶせずに口にいつまでも残る物(薄切り肉など)がある。

 これらを与えるときには、あらかじめ切ったり、とろみや水を加えて調理をしたり、皮をむいたりするなどの工夫をすること。また、物によっては「そもそも与えない」という配慮が必要なこともある。

・子どもが前歯を使わない。

 食べ物をまず前歯で噛み切ることによって、脳で「咀嚼のスイッチ」が入ると考えられている。最初の一口は「子どもが前歯でかじりとる」ようにする工夫が必要。「食べやすいように」という親心から、食べ物を一口サイズにして子どもの口に入れてしまうと、前歯を使うことがないので「咀嚼のスイッチ」が入らない。そのために、よく噛まずに丸呑みしてしまうことにつながりやすい。

 おおよそ生後9ヶ月あたりからは、前歯でかじりとれる固さの「少し大きめの食べ物」を与えて、子どもが手づかみで食べ、前歯でかじりとるという体験をさせるようにしたい。

■食事に時間がかかる

 子どもが「よく噛まない」ことに原因があるように、「食べるのに時間がかかる」ことにも、もちろん、原因がある。上記の「噛みにくい物を与える」こともその一因だが、それ以外にも次のような理由がある。

・食事に集中できない環境で食べさせている。

 たとえば、テレビがついていたり、おもちゃや絵本が近くにあったりする状態では、子どもが食事に集中できず、いたずらに時間がかかってしまう。

・お腹がすいてない。

 いつでも飲食物が買える24時間営業のコンビニや自動販売機が身近にあるので、「食事タイム」に限らず食べ物を与えてしまうことが多くなる。すると、空腹の状態で「食事タイム」を迎えることがなくなるため、ダラダラと食事をすることになり、時間がかかってしまう。「空腹」という感覚は、子どもにとても大切な感覚なので、大事にしたい。

 食事タイムを空腹で迎えられないのは、親の「普段の養育態度」とも深く関係する。子どもの感情に対して安易に食べ物を与えることで対応したり、子どもを統制する手段として食べ物を使っていたりすると、その子は成長してもストレスに対して食べ物で解消しようとする行動をとりやすくなる。その結果「満たされるまで食べ続けようとする」傾向がある。

 子どもが「お腹がすいた」と言ってきたときに、すぐに食べ物を与えるのではなく、「あと少しだから夕ご飯まで待とうね」、「おうちに帰ってからみんなで食べようね」などと対応して、「少しの我慢・少しの辛抱」を体験させることが大切である。

 このような工夫で、空腹感を一定時間継続させることが重要な対応法となる。空腹であれば、子どもは食事に集中するので食事時間は短くなる。なお、食事タイムを空腹で迎えられるようにするためには、食事だけに注意を払うのではなく、遊び、睡眠、排泄といった一日の生活リズム全体の見直しが必要である。

 このことは、食べすぎを助長することを防いで「肥満予防」にもつながる、幼児期の食育の重要なポイントとなる。   

    ☆

 「よく噛まない子」への工夫として話題に出た「食べにくい食品」への配慮については、近年大きな問題となっている「咀嚼機能が低下した高齢者」にそのまま応用できる対応策でもある。また、「食事に時間がかかる子ども」への工夫は、体の発育だけではなく、心の発達にも大きな影響を与える可能性が示唆され、当日、参加した子どもの保護者や子育ての支援者たちへの貴重な情報提供となったようだ。

 この原稿は、平成29年9月10日、東京都江戸川区で開催された平成29年度市民公開講座「こどもの食事、これで大丈夫?」(公益財団法人小児医学研究振興財団主催)の中から、堤ちはる氏の講演内容を元に執筆した。

【※1】幼児健康度に関する継続的比較研究、平成22年度厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(平成23年3月)