Yahoo!ニュース

英国ナッソーS(G1)連覇を目指すディアドラの近況とライバル達

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
昨年、ナッソーSを優勝したディアドラ(左)。鞍上はO・マーフィー

ディアドラが連覇を目指し、今夜、出走

 ナッソーS(G1、3歳以上牝馬、イギリス・グッドウッド競馬場、芝1マイル1ハロン197ヤード)が日本時間の今夜、行われる。昨春以来、かの地のニューマーケットをベースに仕上げられている日本馬ディアドラ(牝6歳、栗東・橋田満厩舎)が同レース連覇を目指しここに出走する予定なので、今年の展望を記そう。

ナッソーS連覇を目指すディアドラとマーフィー騎手。写真は2月のサウジアラビアでのもの
ナッソーS連覇を目指すディアドラとマーフィー騎手。写真は2月のサウジアラビアでのもの

 ディアドラの前走は7月5日に行われたエクリプスS(G1)。エネイブルも出走し、JRAでも馬券の発売されたレースなのでご覧になったファンの皆さんも多い事だろう。結果、ディアドラは7頭立ての5着に敗れた事で、がっくりと落胆される声も聞こえてきた。しかし、彼女に先着した4頭は皆、実績のある馬達。加えて2月のサウジアラビア以来のレースという事で、休み明けの馬が苦戦する傾向の強いエクリプスSでは明らかに不利。私自身、新聞上の予想では断腸の想いで無印にせざるを得なかった。結局、先述した通り5着に沈むのだが、ゴール寸前には再び盛り返す脚を見せており、叩かれた今回は上積みを見込んで良い。何よりも昨年、制している牝馬同士のレースであり、巻き返しがあって不思議ではないだろう。

強力なメンバーが揃った前走は泣く泣く無印とせざるを得なかったディアドラだが、叩かれた上に昨年勝利しているレースの今回は話が違う
強力なメンバーが揃った前走は泣く泣く無印とせざるを得なかったディアドラだが、叩かれた上に昨年勝利しているレースの今回は話が違う

 ちなみにその昨年は現地で観させていただいたが、今年はコロナ禍の真っ只中。空港などを利用して現地へ乗り込めば、自分がウィルスを媒介してしまう可能性がないとは言い切れず、そうなればディアドラ陣営を含む多くの人に迷惑をかけてしまう。そこまでの事態にならなくても、結果的に良かったね、ではなく、そうなる可能性の芽を摘まなくてはいけない。実際、子供達でも我慢しているこの時期に、己の欲求のままに行動する大人のせいでいつまで経っても収束しない現状を見ると、今年は現地入りを我慢するのが一丁目一番地である。東京から応援させていただこう。

ライバル陣営は?!

 閑話休題。ディアドラの連覇を阻もうとするライバル馬達も紹介しよう。

 ディープインパクト産駒のG1馬という事で話題になったのがファンシーブルー(牝3歳、愛、D・オブライエン厩舎)だ。前走のディアヌ賞ではコロネーションS(G1)の覇者アルパインスターを競り負かした。また、同レースの3着ピースフルは愛1000ギニー(G1)勝ち馬だし、ファンシーブルー自身、キャリアは少ないもののここまで大崩れがない事から現地でも人気に推されている。元々はエイダン・オブライエンの管理馬だったが、ドナカ・オブライエンの開業祝い代わりに転厩。ドナカにとって調教師として初G1制覇を成し遂げたのが前述のディアヌ賞だ。ちなみにこの馬のデビュー戦では当時まだジョッキーだったドナカ自身が騎乗。見事に勝利している。

 更に今回、注目すべきはR・ムーアが騎乗する点。おって紹介するエイダンのマジックワンドがいるにもかかわらず初騎乗となるこちらに乗って来た。本人は常に「どれに乗るか皆で相談はするが、最終的に決めるのはボス」と言うものの、陣営はこちらに脈があるのかな?とも思ってしまう。

昨年のグロリアスグッドウッド開催でのドナカ・オブライエン。当時は騎手だった
昨年のグロリアスグッドウッド開催でのドナカ・オブライエン。当時は騎手だった

 前走のファルマウスSで上位横並びの一戦を制したのがナジーフ(牝4歳、英、J・ゴスデン厩舎)。ヨーロッパにありがちな少頭数での上がり勝負ではあったが、2着のビルズダンブルックは一昨年の1000ギニー(G1)勝ち馬で、昨年もサンチャリオットS(G1)を勝っている実績馬。3着のテレベリウムも直前にロイヤルアスコット開催のクイーンアンS(G1)で2着。それも最後の最後に実力馬サーカスマキシマスに差されたものの、頭差に健闘。その直前にG2を着差以上の好内容で楽勝していただけの事はあると思わせた。また、4着のワンマスターもG1馬。同馬は日本でも馬券の発売された香港マイル(G1、18年)に出走していたので覚えておられる方もいるだろう。いずれにしろこれらの実力馬を相手に勝ったのがナジーフなのである。

 日本ではお馴染みであろうという意味ではマジックワンド(牝5歳、愛、A・オブライエン厩舎)も同様だろう。

昨年、オーストラリアでマッキノンS(G1)を勝った際のマジックワンド。手綱を取ったR・ムーアは今回、ファンシーブルーに騎乗する
昨年、オーストラリアでマッキノンS(G1)を勝った際のマジックワンド。手綱を取ったR・ムーアは今回、ファンシーブルーに騎乗する

 前走のエクリプスS(G1)ではディアドラ(5着)に先着する4着。昨年のアイリッシュチャンピオンS(G1)でもディアドラ(4着)に先着して2着。同年の香港カップ(G1)ではウインブライトを追い詰める2着。マッキノンS(G1、豪、19年)勝利の他、G1で再三2着に健闘している。エクリプスSの上位3頭がいずれも実力馬だった事を考慮すると、今回は確実に着順を上げて来るのではないだろうか。

 そして、先述した通りムーアがファンシーブルーに乗る事で、こちらの鞍上はL・デットーリとなった。本来ならこのような場合、S・ヘファーナンかW・ローダンになるのだろうが、コロナ禍による騎手の移動制限もあり、ドリームコンビで挑む事になった。天才騎手が勝ち切れないイメージも強いマジックワンドから新たな味を引き出すか。楽しみだ。

エイダン・オブライエン厩舎のマジックワンドに乗るL・デットーリ。1月のサウジアラビアで撮影
エイダン・オブライエン厩舎のマジックワンドに乗るL・デットーリ。1月のサウジアラビアで撮影

 また、クイーンパワー(牝4歳、英・M・スタウト厩舎)は前走のデュークオブケンブリッジS(G2)でナジーフの3着。好スタートを切りながらもS・デソウサ騎手が折り合いを気にし過ぎたか中団まで下げる競馬。結果的にナジーフと並走する場面もあったが、先に仕掛けた分、ナジーフばかりか人気薄のアジンコートにも差され、最後は差を広げられてしまった。その他にエントリーしている馬達も含め、正直、ここに入ると少々実力的に苦戦と思われる。

関係者が語るディアドラの近況

 さて、お分かりいただけたかと思うが、連覇を狙うディアドラにとっては必ずしも与しやすいメンバー構成というわけではない。少頭数ではあるがクセ者揃いと言って良い面子が揃った。しかし、日本の女王には実際にこのレースを制しているという実績がある。最後に関係者の弁を記させていただこう。まずはメッセンジャーでの質問に答えてくださった橋田宜長調教助手。

 「負荷よりもしっかりと体を伸ばすイメージだった追い切りを良い感じでこなしてくれました。昨年同様、競馬を使って状態が更に上向いているし、筋肉ももう一段、締まった感じです」

 また、当方がワッツアップで質問を送ったところ、すぐに折り返しの電話をくれたのが騎乗するO・マーフィーだ。

 「ディアドラは追い切りも良い動きに見えたし、コンディションは良さそうだよ。見た目にはフレッシュでファンタスティックだね。昨年は強い3歳馬が相手にいたし、スローペースになりそうという不安があったけど、結果としては完勝してくれた。それだけ彼女にはグッドウッドが合うのだと思う。勿論、今年も自信を持って臨むよ!!」

 当日朝の5時、ディアドラは1頭で馬運車に積まれてニューマーケットを出発し、約4時間かけてグッドウッド競馬場入りする予定だと言う。強敵相手ではあるが、是非、海の向こうから朗報を届けていただきたい。

昨年ナッソーSを勝利した際のディアドラ。鞍上はマーフィーで、左端が橋田調教助手
昨年ナッソーSを勝利した際のディアドラ。鞍上はマーフィーで、左端が橋田調教助手

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

平松さとしの最近の記事