「コンビニ大量出店やめろ」が逆にオーナーを苦しめるワケ

(写真:アフロ)

コンビニ大手3社は出店抑制に迫られた

 コンビニエンスストア業界は人手不足に起因する24時間営業を巡る問題や加盟店オーナーの疲弊を巡る問題で揺れている。コンビニ各社は対応に迫られており、特に大手3社の対応に注目が集まっている。そうしたなか、4月11日に出そろった2019年度での対応で共通していたのが「出店の抑制」だった。

 最大手のセブン-イレブン・ジャパンは新規出店を抑え、国内コンビニ店舗の純増数を前年度比8割減の150店とした。18年度の616店、17年度の838店と比べるとその少なさのほどがわかる。ファミリーマートもかつてない少なさで、ローソンに至ってはゼロだ。3社とも新規出店を抑えて既存店の改革に注力する考えだ。省力化を進めたり加盟店サポート策を講じるなどして問題の解決を狙う。

 コンビニ各社は「大量出店」と特定の地域に集中的に出店する「ドミナント出店」を合わせることでこれまで店舗数を大きく伸ばすことに成功してきた。そして全国津々浦々に広がったコンビニは、もはや日常生活になくてはならない生活インフラとなった。

 大量出店やドミナント出店で成長したコンビニが人々の生活を豊かにした。もちろん問題も一方であったが、恩恵が強かったこともあり、問題が表立って批判されることはあまりなかった。しかし、ここ最近は24時間営業を巡る問題が発生し、それに伴い大量出店やドミナント出店が加盟店オーナーを苦しめているとの批判の声も上がるようになった。

 その言い分はわからなくもないが、大量出店やドミナント出店をやめても問題は解決しないし、現実的ではない面がある。さらにいうと、逆に加盟店オーナーを苦しめる可能性がある。それはなぜか。

大量出店は悪なのか?

 まずは大量出店について考えてみたい。

 最近、「コンビニ各社は大量出店はやめるべきだ」との声が強まっている。コンビニの数は十分に多く、これ以上増やす必要はないとの観点からだ。

 3月末時点のコンビニ国内店舗数は、セブンが約2万900店、ファミマが1万6400店、ローソンが1万4700店。大手3社だけで約5万2000店にも及ぶ。こうしたことからコンビニは飽和に達しており、これ以上増やしても意味がないとの主張だ。

 ただ、筆者の感覚ではコンビニはまだ出店の余地があると考えている。また、コンビニはもっと必要だと考える。コンビニの最大の売りは名前にある通り「利便性」だ。コンビニは近くにあればあるほど便利だし良いに決まっている。一方で、生活者の近くにコンビニが存在しない地域は今でも少なくない。

 また、今後も電子商取引(EC)が増えることが見込まれているが、その受け取り拠点としてもコンビニは最適だ。24時間、安心して受け取れる拠点があればより便利だし、いま問題になっている、ネット通販の需要拡大に起因する物流の逼迫の解消にもつながる。これは一例に過ぎないが、コンビニにはまだまだ果たすべき役割がある。そして、こうした利便性を享受してきた我々がそれを放棄することは現実的には困難だろう。人間の欲望に際限はない。

 店舗数が多いことは加盟店にとってもメリットがある。商品力が高まる可能性があるためだ。

 コンビニが高い競争力を発揮できているのは、プライベートブランド(PB=自主企画)商品が充実していることが大きい。それを実現するにあたって店舗数の多さが大きく影響しているという側面がある。

 コンビニのPB商品を製造しているのは外部企業のメーカーだが、そういった企業がコンビニのPB商品の製造に力を入れるのは、万を超える店舗で販売できるので、単純に儲かるためだ。これほどの規模で販売できるチャネル(流通経路)は他にはない。そのため、実力のあるメーカーがこぞってコンビニのPB商品を作りたがっている

 売れる店舗の数が多ければそれだけ良い商品を製造しようとするインセンティブが働くのでPB商品の魅力は高まりやすい。こうした原理で商品力が高まっていることは、加盟店にプラスの作用を及ぼしているといえるだろう。

 セブンが強いのはこのことが影響している面が強くある。

 セブンの全店日販(1店舗の1日当たり売上高)は突出している。2018年度は65.6万円だった。ローソン(53.1万円)とファミマ(53万円)よりもそれぞれ12万円以上高い。セブンは圧倒的な販売力を誇っている。

 セブンにはグループで販売するPB「セブンプレミアム」がある。高い競争力があるため、売り上げはうなぎ上りで増えている。18年度の売上高はグループ全体で前年度比7%増の1兆4130億円にもなった。メーカーが競うようにして製造しているため、高い競争力のセブンプレミアムが生まれ続けている。

 それは、業界最多の店舗数を誇るセブン-イレブンがあってこそだ。先述した通り3月末時点のセブンのコンビニ国内店舗数は約2万900店で、ファミマよりも約4500店、ローソンよりも約6200店多い。この差が有力なメーカーを引きつける要因となり、そのことが商品力の差につながっている。そして、商品力の差が日販の差につながっているといえるだろう。逆にいえば、店舗数が増えなければ、商品力と日販が低下しかねないのだ。そうなってしまえば、オーナーは苦しむことになるだろう。

 そして、「コンビニをやるならセブン」という声が少なくないと言われているが、それはこのことが強く影響している。セブンであれば高い競争力があるPB商品を販売でき、それにより高い日販を実現できるためだ。オーナーの成り手が販売力のあるブランドで営業したいと思うのは当然だろう。それも、元をたどればセブンの店舗数の多さにたどり着く

 以上の理由により、消費者、本部、加盟店の3者にとってコンビニの数は多ければ多いほど良いと筆者は考える。

ドミナント出店は悪?!

 次はドミナント出店について考えてみたい。

 ドミナント出店が加盟店オーナーを苦しめているとの見方がある。自社競合が発生し、1店あたりの収益力が低下するとの観点からだ。

 コンビニのフランチャイズ(FC)方式では、商品の売上高から原価を引いた粗利益を本部と加盟店で分け合う。そのため、本部は商品が少量でも売れれば大抵儲かることになるが、加盟店は粗利益から人件費などのコストを差し引かなければならないため、需要が大きく減ったり人件費などコストが上昇してしまうと利益が大きく減ってしまう。

 コンビニ各社は、自社・他社にかかわらず、売れているコンビニの近くにあえて出店することが少なくない。本部としては、たとえ自社で競合が発生したとしても、FC方式のため、トータルでみれば儲けが増えることが少なくないためだ。一方、既存の加盟店としては、競争相手が増えることになるので収益は厳しくなる。

 ドミナント出店をすると、既存の加盟店の収益は低下する。オーナーを苦しめることになるため、批判の声は少なくない。また、無理矢理なドミナント出店をなくすため、負担が大きい店舗人件費を本部も負担するようにせよとの声も上がっている。

 本部が店舗人件費の一部を負担する余地はあるように思う。ただ、「ドミナント出店をやめろ」というのは現実的ではない主張だ。需要がある場所に出店するのは当然の話だし、1社がたとえ自主規制したとしても、他社が出店しないとは限らない。むしろ、儲かる場所があるのなら当然に出店してくるだろう。であれば、自社競合してでもドミナント出店した方がいいのは明白だ。

 近年は1人のオーナーが複数店舗を経営するケースが増えているが、儲かる場所でオーナーが複数店舗を経営すれば、オーナーにとってもメリットが大きい。他者に良い立地を取られるくらいなら、自らの手でその良い立地で経営した方が良いだろう。既存店の収益は減るが、トータルでは増える可能性があるし、少なくとも他者に取られるよりはマシだろう。

オーナーが疲弊している問題とは切り離して考えるべき

 加盟店オーナーの疲弊の元凶として大量出店とドミナント出店を批判する向きがあるが、こうしたことから、むしろ、大量出店とドミナント出店をやめることは多くのオーナーのためにはならないのではないか。もちろん問題がないわけではないが、自由競争社会の日本では致し方ない面もあるだろう。

 今回3社が出店を抑えるのは、いったん既存店に注力するということで評価できる。しかし、中長期的にはまた別に考える必要があるだろう。いずれは大量出店を進めるべきと筆者は考える。もちろんオーナーが疲弊していいわけはない。ただ、大量出店・ドミナント出店の問題とオーナーが疲弊している問題は切り離して考えるべきだろう。