「セブンは24時間営業やめろ」と無責任に主張する人に欠けた視点

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

セブンは24時間営業をやめるべきではない

 セブン-イレブン・ジャパンに対して大阪府東大阪市の加盟店オーナーが時短営業を求めて対立していることが話題になっている。同オーナーは深夜に人手を確保できないとして店舗の24時間営業をやめて、午前6時から翌午前1時までの19時間営業に変更した。これに対しセブンが契約違反にあたると指摘し、両者が対立している。

 セブンは直営店とフランチャイズチェーン(FC)加盟店で時短営業の実験を開始する方針を表明し、事態の沈静化を図った。しかし、その後に加盟店オーナーらが作る団体がセブンに24時間営業見直しを要求するなどしており、対立が収まる気配はない。

 この問題に対し世論の大半は同オーナーに同情的で、セブンに対しては批判的のように見える。「オーナーを搾取するな」「24時間営業はやめるべき」といったセブンを批判する声が少なくない。

 確かにオーナーを搾取することは許されることではないし、オーナーの処遇は改善されるべきだとは思う。ただ、「24時間営業をやめろ」という主張に筆者は全面的に同意できない。もしセブンが「24時間営業の看板」をおろしてしまえば、多くの人が不幸になると考えられるからだ。

 なぜセブンが24時間営業の看板をおろすと多くの人が不幸になるのか。

 セブンは1975年6月に福島県の店舗で24時間営業を開始した。「いつ行っても営業している」という利便性を売りとするため24時間営業店を増やしていった。「コンビニは24時間が当たり前」というイメージを定着させたのは、セブンの努力に依るところが大きい。こうした努力が実を結び、セブンを含めたコンビニは、24時間営業しているのが当たり前の「社会インフラ」として多くの人に認識されるようになった。これが一種の「ブランド」となっている。

 24時間営業のコンビニはありがたがられた。深夜に活動する人が利用できるのはもちろん、深夜に活動しない人も深夜に急に何かが必要になって買わなければならなくなった時に利用できる。コンビニが社会全体に浸透するようになったのは、いつ行っても営業していることが大きかっただろう。

 セブンは24時間営業を40年以上も続けてきた。このことはセブンの「ブランド力」に大きな貢献を果たしている。セブンは40年以上にわたって24時間営業の看板を掲げ続けることでブランド力に磨きをかけてきたのだ。

 ブランド力は消費者の選好に大きな影響を及ぼす。ブランド力が高ければ集客力が高まる。目には見えない力が働き、消費者を引きつけるのだ。ブランド力は目に見えないため過小評価されがちだが、経営において重要な役割を担っている。

 ところで、ブランドコンサルティング会社の米インターブランド社は、ブランド価値を金額に換算する試みを行っている。企業の「財務データ」や「ブランドが購買意思決定に与える影響力」などを独自に分析してブランド価値の金額を算出している。同社の日本法人が2月14日に発表した、2019年のグローバルに展開する日本企業(海外売上高比率が30%以上)のブランド価値ランキングによると、トヨタ自動車が11年連続で首位で、価値は534億ドル(約5.8兆円)にも上った。これは、トヨタ自動車というブランドに5.8兆円の価値があることを示している。目に見えないブランド力にこれほどの価値があるのだ。

 なお、公表されたランキングにセブンは入っていないが、国内を軸に展開する日本企業(海外売上高比率が30%未満)のブランド価値ランキングにおいて、ローソンが8.8億ドル(約960億円)で13位、ファミリーマートが5.9億ドル(約650億円)で22位にランクインしている。

 いずれにせよ、ブランド力は経営において重要な役割を果たす。セブンは24時間営業の看板がブランド力を高める上で大きな役割を果たしている。そのため、セブンは24時間営業の看板をおろす気はないだろう。特例で時短営業を一部の店舗で認めることはあるかもしれないが、特例とは言えないレベルで認めることはないのではないか。

24時間営業をやめることの弊害

 ブランド力は消費者の選好に大きな影響を及ぼすため、ブランド力が低下すれば集客力も低下してしまう。集客力の低下は全時間帯に影響を及ぼすため、24時間営業をやめた店舗は深夜だけでなく昼間の客も減ってしまうだろう。深夜の客数を単純に引き算するだけでは済まなくなるのだ。

 さらに問題となるのが、24時間営業を続ける店舗にも悪影響を及ぼすことだ。当然だが、セブンのブランド力はセブンの名がつくものすべてに影響を与える。24時間営業を続ける店舗にも当然に影響を与えるため、セブンのブランド力が低下してしまえば、24時間営業を続ける店舗の集客力も低下してしまうだろう。

 セブンは全国に約2万1000店を展開しているが、そのほとんどがFC店だ。セブンが24時間営業の看板をおろすとなると、2万店以上のFC店に影響が及ぶことになる。2万店以上のFC店の客数が低下する可能性があるのだ。「24時間営業をやめろと」と言う人は、はたしてこのことを理解した上で言っているのだろうか。

 もっとも、「24時間営業は続ける(時短営業は認めない)」の一点張りでは世間の反発を抑えることはできない。反発が収まらないことでブランド力が低下してしまえば元も子もないので、セブンは時短営業の実験を行うことで反発を和らげようとした。ただ、心の中では「24時間営業の看板をおろす気はない」と思っていると筆者は考えている。

 「セブンは24時間営業の看板をおろす気はない」と言うと、「加盟店オーナーが搾取されてもいいと思っているのか」といった批判の声が出てきそうだが、筆者はオーナーが搾取されていいとはもちろん思っていない。聞こえてくるオーナーの状況に鑑み、セブンが何かしらの対策を講じて当然だと考えている。深夜の人手不足を解消するためのサポートを強化するほか、加盟店の経営指導料をさらに減額するといったことが必要だろう。

 筆者はセブンを擁護しているわけではない。加盟店が深夜に人手が確保できていないという事情があるようにセブンにも事情がある。オーナーらは交渉相手のセブンの事情を理解した上で交渉にあたった方が得策だということを主張しているに過ぎない。「セブンは24時間営業をやめろ」と一方的に主張しても、実りがある結果は得られないのではないだろうか。