「不適切動画」投稿者だけを批判する人に欠けた視点

(ペイレスイメージズ/アフロ)

「ゴミ箱の魚をまな板に戻す」動画は衝撃的だった…

 外食チェーンやコンビニエンスストアの従業員による不適切な動画が投稿される問題が相次いでいる。

 「すき家」で撮影された「股間にオタマをあてる」動画や「くら寿司」の「ゴミ箱の魚をまな板に戻す」動画、「セブン-イレブン」の「しらたきを口でくわえる」動画、「バーミヤン」の「鍋の炎でタバコに火をつける」動画、「ファミリーマート」の「商品をなめる」動画がインターネット上に投稿され、マスコミに報じられた。

 こういった不適切動画投稿問題に対し各社は謝罪や対応に追われた。中でも「くら寿司」を運営するくらコーポレーションの対応は強硬だ。不適切な動画に関わった従業員2人との雇用契約を終了し、刑事と民事での法的措置の準備に入ったと同社は発表した。「セブン-イレブン」では、不適切な動画に関わった従業員2人を加盟店オーナーが解雇し、法的措置を含む厳正な処分を検討していると運営会社のセブン-イレブン・ジャパンが発表している。

 こういった不適切動画投稿問題に対して、雇用契約を終了したり、損害賠償を請求したりするなどの強硬な態度で臨むことに対して異論を挟む余地はないだろう。そういった強硬な措置を講じることで抑止力が働くことが期待できる。

 ただ、損害賠償請求など厳罰に処すことによる抑止力には限界があるように思える。もちろん一定の抑止力は期待できるが、これだけで完全に抑え込むことは難しいだろう。

 例えば、昨今「あおり運転」が社会問題化し、それを糾弾するなどの厳しい声がマスコミを通して広まったが、それでもあおり運転をする人が絶えない。結局、他人の運転に頭にきたら、世間の厳しい目などは忘れて、怒りに任せてあおり運転をしてしまう人は一定数存在してしまうものだ。もちろんこれは良くないことなのだが、人間にはこういった「タチの悪い性根」が一定の割合で存在してしまうことは認めざるを得ないだろう。

 不適切動画投稿問題も同様だ。法的措置を講じて厳しい判決が下される事例ができたとしても、「目立ちたい」「面白いことをしたい」といった衝動に駆られることで、厳しい判決事例や世間の厳しい目などは忘れてしまい、不適切動画を撮影し投稿してしまう人がまた出てしまうだろう。

 繰り返しになるが、こういった厳しい対応をとることを否定しているわけではない。相応の厳しい対応を講じる必要はもちろんある。

 ただ、憂慮するのが、「不適切動画に関わった人だけが全面的に悪者であり、雇用主の企業は一方的な被害者」という構図だけで騒動が終わってしまうことだ。これは避けなければならない。

雇用主の企業にも当然に大きな責任がある

 従業員が問題を起こした場合、雇用主の企業にはその従業員を採用した責任が問われる。そうならないように、従業員が問題を起こさないように教育する責任があるだろう。教育を通して「働くことの意味」などを教えたり、おもしろ動画を撮影して投稿することがつまらないことだと思えるほど「仕事が面白い」と思わせるような動機付けを行っていくことなどが必要だ。「そういった人間に教育は通用しない」と言ってしまったら何も始まらない。人を教育することは難しいことだが、はなからできないと決めつけてしまうようでは運営者として失格だろう。

 従業員を雇うか雇わないかの選択肢は企業側にある。本当にどうしようもない人間は最初から雇わなければいい。採用面接の段階でどうしようもない人間であることが見抜けなかったのなら、分かった後に雇用契約を終了すればいいだけだ。

 そういったことをしないで問題行動が起きてしまったのであれば、企業の監督責任が問われることは免れないのではないか。それを無視して一方的に「問題を起こした従業員“だけ”が悪い」と決めつけて話を進めてしまっては、健全な議論はできないだろう。

 法的措置を講じるなど事後的な対応での抑止力には限界がある。やはり、未然に防ぐことが重要となる。継続的に教育を実施することに加え、問題行動を未然に防ぐための仕組みやルールを構築することも必要だろう。企業はこういったこと全てを高いレベルで実施していくことが求められている。「不適切動画に関わった人だけが全面的に悪者であり、雇用主の企業は一方的な被害者」の構図で終わらせてはならないだろう。