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ウクライナ軍、ロシア製防空ミサイルでロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」爆破

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

監視ドローンも撃墜しておくことでミサイル攻撃アピール

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また監視・偵察ドローンも両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍ではロシア軍への攻撃の様子や、破壊された両軍の兵器などを写真や動画でSNSに公開して世界にアピールしている。

ウクライナ軍はロシア製の短距離防空ミサイル9K33M3を使用してロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」を撃墜している動画を公開していた。ロシア軍はロシア製の監視ドローン「Orlan-10」をよく使ってウクライナ軍やウクライナの様子を上空から偵察している。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。短距離防空ミサイル9K33M3は明らかにハードキルだ。

爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。特に偵察ドローン「Orlan-10」は飛行する際に大きな音がするので察知されやすいため、攻撃もしやすい。ミサイルは地対空ミサイルシステムのようなハードキルで爆破するしかない。

地対空ミサイルシステムや今回の防空ミサイルのような大型システムで監視ドローンを攻撃するのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。だが、監視ドローンは検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。

また現在のロシア軍は破壊された監視ドローンを回収して部品の再利用をして、監視ドローンを作っているようだ。そのため、監視ドローンといえども、中途半端な機能停止や撃墜によって落下させるのではなく、他の戦車やミサイルと同じように上空で徹底的に破壊しておきたい。そうすれば部品を回収されて監視ドローン製造に再利用されない。

さらにたとえ監視ドローンに先に察知されたとしても、監視ドローンを防空ミサイルで撃墜することによって、ミサイルが飛んできても防空ミサイルがあるので撃墜できるという敵へのアピールにもなる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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