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ウクライナ軍 トルコの軍事ドローンでロシアの装甲車破壊 トルコ「軍事支援でなく民間企業のビジネス」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナの国防大臣「追加で納品」

ウクライナ軍はトルコから購入した軍事ドローンがキエフ北西約100キロの町でロシア軍の進軍を防ぐことに成功したと発表し、軍事ドローンがロシア軍の装甲車を破壊する動画も2022年2月27日に公開した。

今回、ウクライナ軍が使用したのはトルコの軍事企業が開発した軍事ドローン「バイラクタルTB2」で、トルコが輸出しているし、ウクライナ現地での生産も発表していた。ウクライナの国防大臣のオレクシー・レズニコウ氏はトルコから新たな「バイラクタルTB2」も納品されていることを発表していた。

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいるが、バイカル社はその中でも代表的な企業である。同社の軍事ドローン「バイラクタル TB2」はウクライナだけでなく、ポーランド、ラトビア、アルバニア、アフリカ諸国なども購入。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。

ロシアと対峙しているウクライナにも既に軍事ドローンを提供しており、ロシアにとっても大きな脅威になっていた。そして実際にウクライナに侵攻してきたロシア軍への攻撃に利用された。

ウクライナのゼレンスキー大統領とトルコのエルドアン大統領は2022年2月、ロシアが侵攻してくる前に共同会見を開催。ゼレンスキー大統領はエルドアン大統領に向かって「ドローン開発技術はウクライナの防衛力強化になります」と語っていた。

そしてウクライナの国防大臣がトルコから新たな軍事ドローンが納入されたことについて、NATOにも加盟しているトルコの副外務大臣のヤブズ・セリム・キラン氏は「現時点ではウクライナへの軍事支援をすることが目的で軍事ドローンを提供しているのではなくて、あくまでも民間企業のビジネスです。ウクライナ軍がトルコの民間企業から購入してくれた軍事ドローンです。もちろん、私たちはトルコで開発された軍事ドローンの性能には誇りを持っています」とコメントしていた。

▼ウクライナ軍によるトルコ製の軍事ドローンでの攻撃の映像

攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

攻撃ドローンの大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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