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世界ユダヤ人会議 SNSで「#WeRemember」キャンペーン「若い世代にホロコーストを伝えたい」

佐藤仁学術研究員・著述家
(チェルシーFC提供)

2017年からSNSで「#WeRemember」(私たちは忘れない)

世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress)は今年もからソーシャルメディア(SNS)での「#WeRemember」(私たちは忘れない)の投稿を呼びかけるキャンペーンを開始した。2017年から続けている。

キャンペーンは1月27日の国際ホロコースト記念日に向けて、世界ユダヤ人会議では「2度とホロコーストの悲劇を繰り返さない。1月27日はアウシュヴィッツ強制収容所がソ連軍によって解放されたため、国際ホロコースト記念日である。ナチスドイツによって、ユダヤ人やロマ、政治犯など約600万人が殺害された。現在でも世界中で氾濫している差別や人種主義、ヘイトスピーチに反対する」ことを目的としてSNSで「#WeRemember」(私たちは忘れない)の投稿を呼びかけている。

ホロコーストの歴史を忘れないでもらうことが目的でありホロコーストの生存者や世界中の著名人らが「#WeRemember」(私たちは忘れない)と書かれたボードや紙を持った写真をTwitterやFacebook、インスタグラムなどSNSに投稿して「ホロコーストを2度と繰り返さない」ことを呼びかけている。またボードを持った写真の掲載ではなく「#WeRemember」(私たちは忘れない)をハッシュタグ表示で投稿している人も多い。

第2次世界大戦が終結して70年以上が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進んできた。生存者が心身ともに健康なうちにホロコースト時代の経験や記憶を証言として動画で録画してネットで世界中から視聴してもらう「記憶のデジタル化」が進められている。世界ユダヤ人会議でもホロコーストの記憶のデジタル化に積極的に取り組んでおり、多くのホロコースト生存者の証言や歴史的な動画を撮影、後悔している。またUNESCOと連携してホロコーストの歴史教育に関するデジタル教材も多く提供している。

世界中の多くのホロコースト博物館、大学、ユダヤ機関がホロコースト生存者らの証言をデジタル化して後世に伝えようとしている。ホロコーストの当時の記憶と経験を自ら証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。

世界ユダヤ人会議のSNSでの「#WeRemember」(私たちは忘れない)の投稿キャンペーンもホロコーストの歴史を伝えるための、ホロコーストの記憶のデジタル化の取り組みの1つである。

世界ユダヤ人会議の議長のロナルド・S・ラウダ―氏は「世界規模で反ユダヤ主義や、ホロコースト否定、ヘイトスピーチが起こっている。ホロコーストの犠牲者は年々少なくなってきている。そしていずれいなくなってしまう。これは仕方ないことだ。だから今こそ、ホロコーストの記憶を通じて、若い世代に人種差別や世界規模でのヘイトスピーチ拡散や人種間の憎悪の脅威について伝えておく必要がある」と述べていた。

また同氏は「現代のデジタル社会においては、SNSこそが世界中にメッセージを伝える最良の手段だ。草の根で『#WeRemember』のメッセージを世界中に拡散していきたい」とコメントしていた。

▼「#WeRemember」の投稿を呼びかける動画(2020年)

▼「#WeRemember」の投稿を呼びかける動画(2018年)

▼「#WeRemember」を開始した時に呼びかけた動画(2017年)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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