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AI研究者「キラーロボットは映画ターミネーターとは違う」BBCで「既に実現化され精確に標的を攻撃」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

AI技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエルなどは反対していないので、このように積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。

カリフォルニア大学バークレイ校(UCB)のAI専門のスチュアート・ラッセル教授は以前からキラーロボットの脅威を訴えていた。2016年の世界経済フォーラムでもキラーロボットの脅威を伝えており、2017年には自律型殺傷兵器の脅威を伝える「Slaughterbots」という動画に登場。いろいろなメディアにも登場している。

ラッセル教授は2022年1月に英国の公共放送BBCに登場。ラッセル教授は「最近、キラーロボットや自律型殺傷兵器の報道で、多くのメディアや有識者がキラーロボットを映画「ターミネーター」に例えられてるが、それをやめてほしい」と訴えていた。

映画「ターミネーター」は1984年のアメリカのSF映画。主演のアーノルド・シュワルツェネッガーがサイボーグの暗殺者「ターミネーター」として2029年から1984年にタイムスリップしてくるストーリー。

多くのメディアがキラーロボットの問題を報じる時に映画「ターミネーター」に例えることに対してラッセル教授は以下の理由からやめてほしいと訴えていた。

1.映画「ターミネーター」はSFの世界のフィクション。人間型のロボットが登場しているが、そのような人間型のロボットではなく、小型のドローンや小型の兵器としてすでに自律型殺傷兵器は現実の脅威になっている。そして安価に製造することが可能で誰もが簡単に購入できる。

2.映画「ターミネーター」の中では銃で狙って撃つ時に標的を外してしまうが、実際のキラーロボットはAIが搭載されていて、狙った標的を精確に攻撃してくる。

3.映画「ターミネーター」ではスカイネットという人工知能がコントロールしているが、実際のキラーロボットはそれぞれの兵器ごとにAIが標的をプログラムしており、そのプログラムによって標的を攻撃してくる。

2021年12月にスイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催されており、自律型殺傷兵器について議論されていた。

人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエルなどは反対していないので、このように積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。実際にすでにリビアで使用された可能性があると国連も報告している。CCWの会合でも国際社会での一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」となった。

▼映画「ターミネーター」

▼2016年の世界経済フォーラムでキラーロボットの脅威を訴える動画

▼自律型殺傷兵器「Slaughterbots」の脅威を伝える動画とスチュアート・ラッセル教授(2017年)

写真:ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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