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国際赤十字委員長 キラーロボット使用の禁止訴え「人間の生死を判断できるのは人間だけ」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2021年12月にスイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催されて、自律型殺傷兵器について議論されていた。AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

国際赤十字社は自律型殺傷兵器の開発と一般市民(非戦闘員)を標的にした攻撃の禁止を訴えていた。今回の会合においても国際赤十字社の委員長のペーター・マウラー氏は、人間の生死の判断を人間の軍人ではなくてロボットやソフトウェアが行うことの非人道性と倫理的な懸念から、国際人道法による自律型殺傷兵器の開発や使用の禁止を訴えていた。

マウラー氏は「自律型殺傷兵器は受け入れられない脅威があります。また自律型殺傷兵器の標的が人間である場合、標的にされる人間が攻撃を予期することができません。国際人道法で開発と使用を禁止すべきです。もちろん、自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止において唯一の解決策はありません。しかし、人間の生死をロボットやAIに任せてはいけません。人間だけが判断できることです。そのためにも、少しでも合意に向けた取り組みとレコメンデーション(勧告)が必要です。早急に決定的な実行が求められています」と語っていた。

AI技術の軍事への活用は積極的に行われており、アメリカ、中国、ロシア、イスラエル、トルコなどでは自律型兵器の開発が進められており、現実的な兵器となってきている。新たな技術の発展が軍事分野で利用されるのは歴史的にも常であり、そのようにして軍事技術も民生品も発展してきた。

現在、世界で30か国が自律型殺傷兵器の開発や使用に反対しているのは中小国がほとんどだ。アメリカやロシアなど大国は開発も使用も反対していないため、国際社会での足並みがそろっていない。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していないことから、おそらく開発は進められているのだろう。今回のCCWでも一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」こととなった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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