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トルコ「攻撃ドローン迎撃システム」2022年に実用化へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(Transvaro提供)

トルコの軍事企業HavelsanとTransvaroが共同で攻撃ドローン迎撃システム「Fedai」を開発した。2022年初めの商用化を目指している。試験運用も行っており5キロ先の上空のドローンも撃墜できる。このドローン迎撃システムは、上空の攻撃ドローンを察知するとレーザービームでドローンの機能を停止させることができる。またドローンを発射で上空の攻撃ドローンを爆破することも可能。いわゆる"ソフトキル(soft kiill)"と"ハードキル(hard kill)"を搭載している。

ドローンの大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。またドローンはコストも高くないので、大国でなくとも、テロリストでも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人やテロリストが傷つくリスクは低減されるので、攻撃側にとって優位であり有益だ。そのためドローン迎撃システムの開発と対策はトルコだけでなく、あらゆる国の防衛において重要である。

攻撃ドローンの開発にも積極的なトルコ

トルコはドローン迎撃システムだけでなく、軍事ドローンの開発技術も世界的にも進んでいる。多くの周辺諸国にもトルコ製の軍事ドローンを輸出している。そして多くの紛争でトルコの軍事企業が開発した攻撃ドローンが使用されている。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノ・カラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。トルコの軍事企業は攻撃ドローンの開発だけでなく、今回のようなドローン迎撃システムの開発にも注力して、攻撃から防衛まで幅広くカバーしている。

また2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行うものは自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。

攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。

▼「Fedai」紹介動画

(Transvaro提供)
(Transvaro提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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