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パキスタン 国連で「自律型殺傷兵器が地域と国際社会の安全と平和に大きな影響」国際社会での規範形成訴え

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

パキスタンの国連大使のカーリル・ハシミ氏は軍縮は安全保障問題を議論する国連総会第一委員会で、軍縮に向けた世界規模での秩序や規範が重要であると訴えていた。パキスタン自身も核兵器保有国でインドと対峙している。核兵器保有によってインドや中国、ロシアへの抑止力にもなっている。

ハシミ氏は「現在は過度の軍拡競争が続いています。核兵器だけでなく、特に人工知能(AI)、サイバースペース、宇宙での兵器化、軍拡競争が行われています。その結果、政治的な緊張や軍事的な緊張も起きています。長期的な視野で、グローバルレベルでの軍縮に向けた世界規模での秩序や規範が必要です。世界規模での兵器の販売も拡大しています。南インドでも軍拡が続いています。世界中で我々は衛星攻撃兵器や弾道弾迎撃ミサイルの脅威に晒されています」と語っていた。

またハシミ氏は「自律型殺傷兵器の開発が国際人道法の観点から地域と国際社会の安全と平和に大きな影響を与えようとしています。国家間での信頼醸成措置と地域の軍縮がますます必要になってきます」と自律型殺傷兵器の脅威をあげていた。

AI技術の軍事分野での活用で、自律型兵器の開発は進んできている。人間の判断を介さないでAI技術を搭載した兵器自身が判断して標的に攻撃を行うことが非倫理的であると国際NGOや世界の30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用に反対を訴えている。パキスタンは核兵器保有国だが、AI技術の開発と軍事への活用では敵国のインドには遅れをとっている。インドは既にAI技術を搭載した軍事ドローンを披露しており、パキスタンにとっては脅威である。

国連のグテーレス事務総長も自律型殺傷兵器の開発には反対を訴えている。しかし安全保障理事会の常任理事国5か国のうちアメリカ政府、ロシア政府、イギリス政府、フランス政府は自律型殺傷兵器の開発にも使用にも反対していない。中国政府は自律型殺傷兵器の使用には反対を表明しているが、開発することには反対していない。インド政府も自律型殺傷兵器の開発には反対していない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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