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米国共和党議員、バイデン大統領のワクチン接種呼びかけをナチスのヒトラー発言と比較

佐藤仁学術研究員・著述家
(イーストマン氏のツイッターより)

バイデン「我々の我慢も限界です」ヒトラー「もう我慢しなくて良い」

米国のアラスカ州の共和党議員のデイビット・イーストマン氏が自身のツイッターでバイデン大統領の新型コロナウィルスのワクチン接種政策のスピーチを、ナチスドイツが1938年にチェコスロバキアを解体した時のヒトラーの演説に例えていた。

バイデン大統領は新型コロナウィルスの感染拡大(パンデミック)防止のためにワクチン接種を呼びかけている。だがアメリカにはワクチン接種に反対する人も多い。バイデン大統領はそのような現状に対して「私たちはずっと我慢していました。でももう我々の我慢も限界です。ワクチン接種を拒否する人たちが私たちの我慢を台無しにしてしまいます。すぐにワクチン接種をしてください(We’ve been patient, but our patience is wearing thin. And your refusal has cost all of us. So, please, do the right thing)」とスピーチしてワクチン接種を呼びかけていた。

このバイデン大統領のスピーチの「patience(我慢)」という言葉にかけて、アラスカ州の共和党議員のイーストマン氏は1938年にナチスドイツがチェコスロバキアを解体した時にヒトラーが発言した「もう我慢しなくて良い(my patience is now at an end)」を自身のツイッターに引用して、当時のヒトラーの写真と反ユダヤ主義のページのリンクを投稿していた。ヒトラーが念願のチェコスロバキア解体を成し遂げ「もう我慢する必要はない」と発言したことを引用して、新型コロナウィルスのワクチン接種やマスク着用義務、ワクチンパスポート提示を強要するバイデン政権を批判していた。

ナチスドイツやホロコーストに例えられるコロナ政策

欧米ではワクチン接種を希望している人も多いが、政府からワクチン接種を強制されること、レストランなどに入る際のワクチンパスポートの提示の義務化に反対している人も多い。ナチスドイツ時代にユダヤ人に強制的に着用させた黄色い星で、ユダヤ人を差別・迫害していたように、ワクチン接種を受けていない人に対して「ワクチンを接種していない」ことが外見からもわかるようにバッチをつけさせられることを懸念してのデモや抗議運動が多く行われている。欧米ではワクチン接種の強制に反対する運動や抗議、デモ、SNSの投稿では、ユダヤ人に着用させていた黄色い星を着用したり、ナチスドイツのカギ十字を掲げて抗議している。

欧米では「ロックダウンで外出が制限されたり、マスクの着用を義務付けられたり、ワクチン接種を強要させるといった、不自由な生活=ホロコースト時代のユダヤ人がゲットーに閉じ込められて迫害された不自由な生活」、「政府による強制的なロックダウンやマスク着用、ワクチン接種=ナチスドイツの全体主義」というイメージを持つ人が多い。

そして欧米では新型コロナウィルスのパンデミックの不自由な状況やマスク着用の義務化、ワクチン接種の強制をホロコーストに例えるたび、当時のユダヤ人の悲惨な境遇や生活とは異なると、「ホロコーストに例えることは犠牲になったユダヤ人に失礼だ」「迫害されていたユダヤ人とは状況が違う」などと言われていつもネットで炎上している。

イーストマン氏のツイッターより
イーストマン氏のツイッターより

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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