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米国議員「ワクチン接種の義務化をナチスの政策」に例えてカギ十字をツイッターに掲載して抗議

佐藤仁学術研究員・著述家
ケリー・タウンセンド氏のツイッターより

「ワクチン接種を拒否したい人たちは、本当はワクチンに効き目がないってこと知っているんです」

米国アリゾナ州の共和党上院議員のケリー・タウンセンド氏が新型コロナウィルスによるワクチン接種の政策について、ホロコースト時代のナチスドイツの政策に例えて炎上していた。

ケリー・タウンセンド氏は自身のツイッターで「ワクチン接種を拒否したい人たちは、本当はワクチンに効き目がないってこと知っているんです」と書いて、ナチスドイツのシンボルだったカギ十字(ハーケンクロイツ)のイメージを掲載していた。

欧米では「ロックダウンで外出が制限されたり、マスクの着用を義務付けられたり、ワクチン接種を強要されたりといった、不自由な生活=ホロコースト時代のユダヤ人がゲットーに閉じ込められて迫害された不自由な生活」、「政府による強制的なロックダウンやマスク着用、ワクチン接種の強要=ナチスドイツの全体主義」というイメージを持つ人が多い。

欧米ではワクチン接種を希望している人も多いが、政府からワクチン接種を強制されることに反対している人も多い。ケリー・タウンセンド氏も「ワクチンを接種したくないのに、ワクチン接種を強要されることは、ナチスドイツの全体主義と同じことだ」ということを主張して、ワクチン接種の義務化を反対している。

そして欧米では新型コロナウィルスのパンデミックの不自由な状況やマスク着用、ワクチン接種の義務化をホロコーストに例えるたび、当時のユダヤ人の悲惨な境遇や生活とは異なると、「ホロコーストに例えることは犠牲になったユダヤ人に失礼だ」「迫害されていたユダヤ人とは状況が違う」などと言われていつもネットで炎上している。

ユダヤ団体「ワクチン接種の義務化反対にナチスのイメージは全く必要ありません」

ケリー・タウンセンド氏の投稿に対して、アメリカ最大のユダヤ人組織の名誉毀損防止同盟は「このような攻撃的で情けない投稿はすぐに削除すべきです。ナチスのカギ十字(ハーケンクロイツ)の掲載には時効はありません。このカギ十字の元で何百万人ものユダヤ人が殺害されました。コロナ政策でのワクチン義務化とナチスを比較するのはおかしですし、コロナと戦っている人たちに対しても失礼です」とツイッターに投稿して怒りを表明していた。この名誉毀損防止同盟の投稿に対して、ケリー・タウンセンド氏は「歴史を学びなさい」とさらに反論。

また地元のアリゾナ州のユダヤ人団体も「ワクチン接種の義務化を反対するのにナチスのイメージは全く必要ありません。すぐにやめるべきです。恥ずべき事であり、攻撃的です」と抗議していた。

アリゾナ州では約400万人がすでに1回目のワクチン接種を済ませており、人口の半分の360万人が2回目も終わらせている。アリゾナ州保健当局のスポークスマンのスティーブ・エリオット氏は「12歳以上の方にはワクチン接種を強く推奨しています。ワクチンは安心で安全で無料で接種できます。新型コロナから命を守るためにも是非接種してください。接種を拒否し続ける人に対しても、ヘルスワーカーが順次、ワクチン接種のメリットを説明して、説得をしていきたいと思っています」とコメントしていた。

▼ケリー・タウンセンド氏のツイート

ケリー・タウンセンド氏のツイッターより
ケリー・タウンセンド氏のツイッターより

▼名誉毀損防止同盟の抗議のツイート

▼アリゾナのユダヤ人団体の抗議のツイート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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