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スペインの大学「アウシュビッツ絶滅収容所とガザ地区」を比較する講座を開講しようとし炎上・開講中止へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

スペインにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学で9月から始まる予定だった比較文化学の講座で「Auschwitz/Gaza: A Testing Ground for Comparative Literature」(アウシュビッツ絶滅収容所とガザ地区:比較文学に向けたテストケース)とクラスがあった。

第二次世界大戦時にナチスドイツが支配下の地域でユダヤ人を差別、迫害して約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴的な存在の1つがアウシュビッツ絶滅収容所。アウシュビッツ絶滅収容所では欧州からのユダヤ人やロマ、政治犯ら110万人以上が殺害された。

そのアウシュビッツ絶滅収容所と、現在、イスラエルと対立しており、イスラエルと対立関係にありイスラエルの攻撃の標的にされているパレスチナのガザ地区を比較するというテーマの講座だった。このアウシュビッツ絶滅収容所でのユダヤ人の悲劇と、現在のパレスチナ人の置かれた状況を比較するという講座に、ユダヤ人団体らが抗議をするなどネットでも炎上していた。

2021年7月に開催された東京五輪で関係者が過去にユダヤ人ホロコーストを揶揄していたことから、サイモン・ウィーゼンタールセンターが怒りの抗議文を表明して、即解任されていた。そのサイモン・ウィーゼンタールセンターもスペインの当局に対して「このような講座のタイトルは表現の自由の域を脱しています。ホロコーストを矮小化しています」と抗議文を発表していた。他にもスペインのユダヤ団体も、「このようなテーマは明らかに反ユダヤ主義でホロコーストを矮小化している」と授業に反対する抗議文をFacebookで掲載していた。

そしてネットでもユダヤ団体やユダヤ人のようにアウシュビッツとガザ地区を比較するのは「ホロコーストの犠牲者に失礼だ」といった授業の開催に反対する意見や、「現在のイスラエルのユダヤ人はガザ地区のパレスチナ人に対してもっと酷いことをしている」とった大学の講義のテーマ内容を擁護する意見など、様々な意見で炎上していた。そしてついにサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学では「アウシュビッツ絶滅収容所とガザ地区」の授業の開講をキャンセルすることを決めた。

▼サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学の「アウシュビッツ絶滅収容所とガザ地区」を比較しようとした講座のポスター

(サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学提供)
(サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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