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アフガニスタンから避難民を移送したデルタ航空パイロットはホロコースト生存者の子供「特別な任務でした」

佐藤仁学術研究員・著述家
デルタ航空のパイロットのアレクサンダー・カーン氏(CNNより)

「私の父はたった一人で、英語も全くできませんでしたが、アメリカに来ました」

アメリカ政府は2021年8月にアフガニスタンからの緊急避難に、民間の航空会社を動員する民間予備航空隊の活用を発表していた。そしてユナイテッド航空、アメリカン航空、アトラス航空、デルタ航空、オムニ航空、ハワイアン航空の18機が避難民をアフガニスタン国外の安全な場所へ移送した。

そしてアフガニスタンからの避難民を乗せたデルタ航空のパイロットのアレクサンダー・カーン氏の父はホロコースト生存者だったことがアメリカやイスラエル、ドイツでもネットで話題になっていた。カーン氏はアフガニスタンからの避難民をドイツの米軍基地から移送した後に米国のメディアCNNに出演して、アフガニスタンからの避難民移送への想いとホロコーストから生存した父の境遇を語っていた。

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが支配下の欧州で約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。ユダヤ人という理由で差別迫害されて、殺害された。カーン氏の父はブーヘンヴァルト強制収容所で終戦を迎えて、アメリカ軍によって解放されて、戦後にアメリカに移住してきた。

カーン氏は「今回の任務は私にとっても特別な経験でした。私の父はホロコースト生存者です。パイロットとして彼らの移送を担当したときに、自分が彼らと同じ立場だったら、どのような想いだろうか?と考えてみました。私の父はたった一人で、英語も全くできませんでしたが、アメリカに来ました。ほんの少しの洋服だけをもって。そして幸運なことに、アメリカで新たな生活をスタートすることができました。彼らにとってはタリバンによる政権奪取は非常に怖い経験だったと思います。しかしこのようにアフガニスタンから脱出することができました。私自身が今、自分が存在していることと、アフガニスタンからの避難民の方が母国を逃れて新しい生活をスタートするということを改めて認識しました。私の父もホロコーストという地獄を生き抜いて、アメリカに来ることができて、英語を勉強して医者になることができました。そして何年も経ってから冷戦終結を迎えようとしている時に、アメリカ軍の軍医として、かつて父を差別して殺害しようとしていた西ドイツに行って従軍していました。アメリカは自由の国です。アフガニスタンからの避難民の方にも希望があります」と語っていた。

またカーン氏は「フライトの前夜にはクルーやスタッフがキャンディーやおむつなど日用品や必需品も買いそろえてフライトに臨みました。私たちは避難民がそのような必要なものを準備する時間もお金もなかったことを知っていましたので」とも語っていた。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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