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米国統合参謀本部議長 新技術の軍事活用の重要性を語る「戦争に負けるのが一番お金がかかる」

佐藤仁学術研究員・著述家
統合参謀本部議長のマーク・ミリー氏(写真:ロイター/アフロ)

「新しい技術の軍事への活用は敵国への抑止になります」

米国の統合参謀本部議長のマーク・ミリー氏は2021年8月に開催された Navy League of the United States' Sea-Air-Space Global Maritime Expoに登壇した。そのなかで、人工知能(AI)技術などに関する新技術と軍事についても語っていた。

ミリー氏は「AI技術、無人技術、バイオテクノロジー、極超音速機(ハイパーソニック)、3Dプリンティングなど新しい技術の軍事への積極的な活用は、アメリカの軍事力にとっても重要ですし、敵国に対しての抑止にもなります。そして、このような新しい技術は戦争の在り方そのものを変えていきます」と語り、新しい技術を搭載した兵器が敵国に対して抑止になることを主張していた。

さらにミリー氏は「ただし、このような新しい技術は、世界中のどの国でも開発して入手することが容易になりました。アメリカだけが開発できるという特殊技術はほとんどありません。新しい技術をどこよりも速く開発して、軍事に活用していくことが重要で、アメリカにとってのアドバンテージとなります。ただ新しい技術を開発して軍事に活用していくことはお金がとてもかかることです。また戦争をすることはとても費用がかかります。でも戦争を行って負けてしまうと、最もお金がかかります」と述べて、戦争に負けないために、軍事で活用できる新しい技術の積極的な開発と活用を促していた。

進むAI技術の軍事への活用と懸念される自律型殺傷兵器

特にAI技術の軍事での活用は、アメリカだけでなく、ロシア、イスラエル、中国、イギリスなど、多くの国が積極的である。さらにAIを搭載し、人間の判断を介さないで標的を攻撃する自律型殺傷兵器が開発されようとしている。国連の安全保障理事会の専門家パネルでは、自律型兵器によってリビアで人間が殺害された可能性があると報告していた。また人間の判断を介さないで標的の人間を攻撃して殺傷することが非倫理的、非道徳的であることから国際NGOらが自律型殺傷兵器の開発や使用には反対している。

攻撃する兵器もAIを搭載して、AIが判断して攻撃をしかけてきて、防衛側もAIで察知して、攻撃をされる前に敵軍の兵器を破壊しようとしている。ミリー氏が指摘しているように、将来の戦場の在り方、戦争での戦い方や軍人の役割が大きく変わろうとしている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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