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英国の旅行会社、アウシュビッツ博物館ツアーに「笑顔の絵文字」で炎上・謝罪

佐藤仁学術研究員・著述家
ヘイズ・トラベルのFacebookより

「アウシュビッツ絶滅収容所で殺害された人たちに対して失礼だ」と大炎上

第二次世界大戦時にナチスドイツが支配下の地域でユダヤ人を差別、迫害して約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴的な存在の1つがアウシュビッツ絶滅収容所。アウシュビッツ絶滅収容所では欧州からのユダヤ人やロマ、政治犯ら110万人以上が殺害された。

アウシュビッツ絶滅収容所は現在でも世界中からの観光客や欧米、イスラエルの学生らが社会科見学で訪問しており、2019年には過去最高の230万人以上がアウシュビッツ絶滅収容所を訪問していたが、2020年は世界規模でのパンデミックの影響で、アウシュビッツ絶滅収容所博物館も一時閉鎖しており、昨年の訪問者数は52万人程度だった。最近ではオンラインやバーチャルでの展示にも注力している。それでも現在でもアウシュビッツ絶滅収容所は世界的な観光名所の1つである。多くの旅行会社がアウシュビッツ絶滅収容所へのツアーを提供しており人気コースの1つだ。

そして英国の旅行会社ヘイズ・トラベルがポーランドにあるアウシュビッツ博物館へのツアーの広告をFacebookなどウェブに掲載していた。その広告でアウシュビッツ絶滅収容所の入り口の写真があり、その下にツアーの概要とともに「笑顔の絵文字」が4つ掲載されていた。この広告に掲載されていた「笑顔の絵文字」が、「アウシュビッツ絶滅収容所で殺害された人たちに対して失礼だ」「笑顔の絵文字は非常識だ!」とネットで大炎上していた。

歴史学者のロバート・ブルークス氏は「信じられないことです。アウシュビッツ絶滅収容所は週末に遊びに行くスパやリゾートではありません。死のキャンプと呼ばれた絶滅収容所です。あまりにも非常識です。このような場所へのツアーの広告にはもっと慎重になるべきです。ここで殺害された人々への敬意がありません」と怒りを露わにしていた。

今回の広告が炎上していることからヘイズ・トラベルは「大変申し訳ございません。アウシュビッツ絶滅収容所へのツアーの広告については今後、慎重かつ適切な広告をしていきます」と謝罪を表明していた。

ヘイズ・トラベルのFacebookより
ヘイズ・トラベルのFacebookより

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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