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米国共和党議員がコロナ政策をナチスと比較:アウシュビッツも反論「モラル低下と知的衰退の象徴で悲しい」

佐藤仁学術研究員・著述家
ローレン・ボーベルト(写真:ロイター/アフロ)

もはや確信犯?コロナ対策をホロコースト時代のナチスに例えて、また炎上

アメリカのコロラド州の共和党の政治家のローレン・ボーベルト氏が新型コロナウィルスによるロックダウンやマスク着用などのバイデン政権の政策について、ホロコースト時代のナチスドイツの政策に例えて炎上していた。

欧米では「ロックダウンで外出が制限されたり、マスクの着用を義務付けられたりといった、不自由な生活=ホロコースト時代のユダヤ人がゲットーに閉じ込められて迫害された不自由な生活」、「政府による強制的なロックダウンやマスク着用=ナチスドイツの全体主義」というイメージを持つ人が多い。

そして欧米では新型コロナウィルスのパンデミックの不自由な状況やマスク着用の義務化をホロコーストに例えるたび、当時のユダヤ人の悲惨な境遇や生活とは異なると、「ホロコーストに例えることは犠牲になったユダヤ人に失礼だ」「迫害されていたユダヤ人とは状況が違う」などと言われていつもネットで炎上している。

ボーベルト氏は今年初めにも新型コロナウィルス対策での公共衛生政策をナチス時代の親衛隊の「褐色のシャツ」に例えて炎上していた。そのためローレン・ボーベルト氏の発言もアメリカでは「またか・・」と思っている人も多い。だが、それだけ炎上してメディアでも取り上げられるので、あえてホロコースト時代のナチスドイツに例えて発言をする”確信犯”的な政治家も多いのだろう。

ボーベルト氏はツイッターでも「バイデン政権は(コロラド州の)メサ群にもナチスの政策を導入しています。私の地元の人たちの方がよほど賢明です。自分自身の判断でワクチン接種もしていますので、政府による強制は必要ありません。私は共産党国家の中国で目を覚ましたのでしょうか?」と投稿していた。

アウシュビッツ博物館「モラルの低下と知的衰退を象徴すべき悲しい現象」

このボーベルト氏の投稿に対して、アウシュビッツ博物館も公式ツイッターで「1933年から1945年のナチスが政権をとった時に、多くのユダヤ人が差別され、迫害され、殺害されました。そのようなホロコースト時代の悲劇を矮小化すべきではありません。ホロコースト時代のナチスドイツの憎むべき全体主義と、人々の命を救うワクチン接種などの新型コロナの対策を比較することは、モラルの低下と知的衰退を象徴すべき悲しい現象です」と訴えていた。

第二次世界大戦時にナチスドイツが支配下の地域でユダヤ人を差別、迫害して約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴的な存在の1つがアウシュビッツ絶滅収容所。アウシュビッツ絶滅収容所では欧州のユダヤ人やロマ、政治犯ら110万人以上が殺害された。

▼ボーベルト氏の投稿に対して、アウシュビッツ博物館も公式ツイッターで反論

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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