「戦争の本質が変わろうとしている」

2021年6月14日にNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議がベルギーのブリュッセルにある本部で行われた。バイデン大統領にとっては初の参加となった。NATO首脳会議での首脳宣言でも中国とロシアの軍事的脅威についての懸念が多く示されていた。なお首脳宣言の中で中国(China)が登場したのは10回で、ロシア(Russia)は62回とロシアへの言及の方が多かった。

そして首脳会議後のプレスカンファレンスでもNATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグ氏は中国の軍事的な脅威について語っていた。ストルテンベルグ氏は「中国と新たな冷戦になるようなことは求めていません。中国はNATOにとって敵ではないです」と語りながらも「中国は既に世界でも2番目の軍事予算を持っています。そして世界最大級の海軍も保有しています。さらに様々な軍事の近代化に予算を投資しています。特に自律型システム、顔認識機能やAI(人工知能)技術など最新の技術を破壊的な軍事力に活用しようとしています。そして、そのような新しい技術の軍事への活用は戦争の本質を変えようとしています」と具体的に中国の軍事的な脅威を語っていた。

今回、ストルテンベルグ氏は自律型システム、顔認証機能、AI技術の軍事分野への活用と、それによる破壊的な軍事システムの登場への懸念を示していた。特に中国やロシアではAI技術の軍事への活用は積極的に進められており、「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器の開発が進められている。人間の判断を介さないで標的を攻撃して、人間(軍人も民間人も)を殺傷することができることが非倫理的であると国際NGOなどは自律型殺傷兵器の開発や使用には反対している。

だが、人間の判断を介さない自律型殺傷兵器は、AI技術を搭載し、顔認証技術と自律型システムによって、標的である敵の建物や人、民族などを判定し、検知して攻撃を行うことができる。人間の判断を介さないこと、人間の軍人が戦場に行かないようになることなど、ストルテンベルグ氏が述べているように、AI技術を活用した自律型殺傷兵器によって「戦争の本質」が変わろうとしている。

また同氏は「中国がNATOの安全保障にとって脅威になりそうだが、だからといってNATOの安全保障の軸足がロシアから中国に移ったわけではない。ロシアは中国と協力している」とロシアに対する脅威も強調していた。