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「ヒトラーは天使だった」などパキスタンで反ユダヤ主義の動画氾濫にユダヤ団体が懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
Jewish Chronicle提供

イスラエルとハマスの紛争が勃発した2021年5月以降、ムスリムからの反ユダヤ主義の動画がYouTubeやTikTokに溢れている。ユダヤ系メディアのJewish Chronicleが、パキスタンでの過激な発言の反ユダヤ主義の動画を纏めている。

パキスタンのニュースキャスターでYouTubeのフォロワーが160万人を超えるイムラン・カーン氏 の「ユダヤのロビー団体がアメリカやヨーロッパを仕切っている」といった、いわゆる陰謀論や、キャスターのザイド・ハミド氏の「ヒトラーは天使だった。ヒトラーはユダヤ人を殺してくれた」といった反ユダヤ的な発言が繰り返されている。またフォロワー数62万人を超える有名なYouTuberのシャハブ・ウディン氏は「シオニズムを批判すると、ユダヤ人はすぐに集団で攻撃をしかけてくる」といったコメントもしている。

欧米やパキスタンなど中東諸国では反ユダヤ主義が根強く、ユダヤ人はSNS上でもヘイトスピ―チや民族憎悪の対象になりやすい。このような反ユダヤ主義的な発言の動画やユダヤ人が世界の経済を牛耳っているといった陰謀論の動画はパキスタンだけでなく欧米諸国でも多く再生されるし、SNSでも拡散されやすい。つまり発信するYouTuberにとっては大きな広告収入源にもなるので、ますます過激な発言の動画を配信する。特にイスラエルとハマスの紛争が激化した5月にはかなりの反ユダヤ主義的なヘイトや民族憎悪の発言がSNSで見られた。

2度とホロコーストの悲劇を繰り返さないという強い信念を持って全世界の反ユダヤ主義やナチスに関わる動向を監視している団体のサイモン・ウィーゼンタール・センターは、今回の反ユダヤ主義の動画が氾濫している状況に対して、「これは表現の自由ではありません。ソーシャルメディアや動画サイトにただ乗りしている極悪非道な反ユダヤ主義です」とコメントを寄せている。

▼Jewish Chronicleが纏めた反ユダヤ主義の動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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