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リビアでトルコ製の自律型攻撃ドローンで初の人間への攻撃か:国連が報告書

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。その中で、2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると報告していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。

トルコの攻撃ドローンKargu-2は大群(一度に20機程度)で上空を回遊して、ドローンのセンサーとカメラで敵を察知し、顔認識機能も搭載している。標的を認識すると突っ込んでいき爆破することから「神風ドローン(Kamikaze Drone)」とも呼ばれている。ドローンの大群はいっせいに敵に突っ込むこともできるし、別々の場所に敵がいてもそれぞれに突っ込んで攻撃をすることができる。敵に突っ込むと大破するので再利用はできない。

神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行う自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じている

神風ドローンのKargu-2敵を察知してから、遠隔地にいる人間が攻撃判断をしてから攻撃を行う。ドローンが察知してから、遠隔地の人間が判断するまでに時間差があり、敵を逃がしてしまったり逆襲されることもありうるので、自律型殺傷兵器のように敵を認識したら即座に攻撃を仕掛けられる方が効率が良いという意見もある。また、遠隔地にいるとはいえ神風ドローンに攻撃の判断を行い敵を殺害する人間にも精神的な負担がある。さらに攻撃側の軍人にとっては戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の"人間の安全保障"は確保されるようになる。

一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

▼STM社が公開しているKargu-2の紹介動画

▼STM社のKargu紹介動画

▼神風ドローン開発までのプロジェクト紹介動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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