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ロシア、中国と協力してAI搭載のロボット兵器の開発へ:米国シンクタンクが報告

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

アメリカのシンクタンクのCNAは、ロシアが中国と提携してAI(人工知能)を搭載したロボット兵器(自律型殺傷兵器)の開発を積極的に進めていると報告書「Artificial Intelligence and Autonomy in Russia」を発行した。ロシアはAIの軍事への活用を積極的に推進し、兵器の近代化を進めている。

報告書ではロシアの軍事戦略が、戦場におけるAI活用を主力にしようとしており、中国とAI技術の開発で協力していると述べており、中国はロシアにとっての重要なパートナーと位置付けている。CNAのサミュエル・ベンデット氏はロシア政府と中国政府の協力関係は軍事防衛分野の枠も超えて、民生品やアカデミック分野など様々な分野で協力していると述べている。

ロシアと中国は特に軍事でのC4ISRと呼ばれる、指揮(Command)、統制(Control)、通信(Communication)、コンピューター(Computer)、情報(Intelligence)、監視(Surveillance)、偵察(Reconnaissance)の分野で協力関係を強化している。

進むAIの軍事への活用と自律型殺傷兵器の開発

AI技術の発展で、AI技術の軍事分野での積極的な活用が進められている。AI技術を搭載することによって、兵器の無人化も進んでいる。兵器の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。またロシアの国防大臣のセルゲイ・ショイグ氏は「キラーロボット」と称されるAIを搭載した自律型兵器を大量生産していくと明言していることから、ロシア軍では今後自律型兵器が主流になっていくだろう。

一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

ロシア政府は自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していない。むしろこのように積極的にAI技術を軍事に活用しており、このままいけば近い将来「キラーロボット」と呼ばれる自律型殺傷兵器が登場して、戦場でも利用されるだろう。プーチン大統領もロシアにおいて軍事だけでなくあらゆる分野でのAI技術開発を積極的に推進しようとしている。

また自律型殺傷兵器(キラーロボット)による攻防が行われるようになると、人間の軍人が戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の"人間の安全保障"は確保されるようになる。戦場と戦争の在り方が変わってくる。

ロシアだけでなくアメリカ、イスラエル、中国、インドなどでもAI技術の軍事への活用は積極的に進められている。中国政府は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していない。中国とロシアの共通の敵はアメリカと西側諸国であるため、このような中露の協力関係は欧米諸国にとっては脅威であり、抑止にもなる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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