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英国の戦争博物館、第2次大戦とホロコーストのギャラリーを秋に開設:7年間・約47億円かけて制作

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:Shutterstock/アフロ)

7年間、約47億円かけて制作

イギリスのロンドンにある帝国戦争博物館ではイギリスや世界の歴史上の戦争に関する展示を行ってる。そして10月に第二次世界大戦とホロコーストに関する展示を披露する新しいギャラリーをオープンする。この展示のために3070万ポンド(約47億円)規模で、世界80ヶ国から1500点以上の展示物を7年間かけて収集しながら、制作している。

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが支配下の欧州で約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。ホロコーストを展示するギャラリーではユダヤ人やロマ、政治犯らが収容されていた強制収容所のバラックをイギリスで初めて展示する予定。

帝国戦争博物館のディイレクターのダイアン・リーズ氏は「20世紀の歴史において第二次世界大戦とホロコーストを学習することは、現在を生きる我々にとって、とても重要なことです。当時の記憶や兵士やホロコースト生存者らの証言を元に、帝国戦争博物館としては彼らの世代の記憶や経験を新しい世代にも体験してもらえるような展示をしていきます。この展示は帝国戦争博物館の歴史でも最も野心的なプロジェクトの1つです」と語っている。

進むホロコーストのデジタル展示とバーチャルツアー

帝国戦争博物館では5月16日から6月30日まで、オンラインでバーチャルホロコースト展示ツアーも行う。オンラインなので世界中のどこからでもアクセスしてツアーに参加が可能。帝国戦争博物館ではバーチャルホロコースト展示以外にも様々な戦争に関するバーチャルオンラインツアーを提供している。

戦後70年以上が経過しホロコースト生存者らの高齢化も進み、多くの人が他界してしまった。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。またホロコーストの犠牲者の遺品やメモ、生存者らが所有していたホロコースト時代の物の多くは、家族らがホロコースト博物館などに寄付している。特に新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウンで多くの博物館が閉鎖されてしまってからは展示物のデジタル化が加速されており、バーチャルツアーで世界中の人が閲覧できるようになっている。

欧米では主要都市のほとんどにホロコースト博物館があり、ホロコーストに関する様々な物品が展示されている。そして、それらの多くはデジタル化されて世界中からオンラインで閲覧が可能であり、研究者やホロコースト教育に活用されている。いわゆる記憶のデジタル化の一環であり、後世にホロコーストの歴史を伝えることに貢献している。

バーチャルホロコースト展示(帝国戦争博物館提供)
バーチャルホロコースト展示(帝国戦争博物館提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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