オランダの政党、ナチスからの解放記念日にSNSに「自由だった75年間を思い出す」ネット大炎上

2021年オランダ戦没者追悼記念日(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「自由だった1945年から2020年までの75年間を思い出します」

5月4日はオランダの戦没者追悼記念日で、5月5日は第二次世界大戦時にナチスドイツに占領されていたオランダの解放記念日。戦没者追悼記念日には毎年記念式典も行われている。

この戦没者追悼記念日、解放記念日に向けてオランダの政党の民主主義フォーラムが自身のインスタグラムに下記のような「5月5日、私たちは自由だった1945年から2020年までの75年を思い出します」という文章(原文はオランダ語)を投稿していた。これがネットが大炎上している。

つまり、1945年から2020年までは自由だったが、2021年からは新型コロナウィルス感染拡大のロックダウンで自由ではなくなくなった、不自由になったとアピールしている。

現在の新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウンなどで不自由な状況を嘆いている。そして1945年から2020年までは自由で、現在の状況はナチスドイツに占領されていた時のように不自由で圧迫されていた時代を思い出させるという内容から、オランダの政治家やオランダ人、またナチスドイツのホロコーストで迫害、殺害されたユダヤ人の生存者や家族らが非難しており、ネットは大炎上している。

ナチスドイツに占領れていたオランダでは当時、オランダに住んでいた14万人のユダヤ人のうち75%が殺害された。アンネ・フランクもそのうちの1人だ。現在ではアンネ・フランクの隠れ家はオランダのアムステルダムを代表する観光地になっている。ナチスドイツが政権をとった1930年代に、アムステルダムの小学校は、両親とともにナチスドイツから逃れてきた子供たちがたくさんいて、アンネフランクもその一人だった。オランダでは他の欧州諸国のように反ユダヤ主義があまりなかった。オランダが降伏すると、ナチスドイツはオランダでの反ユダヤ主義の教育と宣伝活動を積極的に展開し、一般市民をナチスのイデオロギーに洗脳しようとした。「永遠なるユダヤ人」というユダヤ人嫌悪を植え付ける映画も作ってオランダ人に見せた。ユダヤ人を差別・迫害し、隔離してから絶滅収容所に移送させるのには、一般市民の支持が必要だとナチスドイツは考えていた。だがユダヤ人が差別と迫害の対象として、ユダヤ人だと識別できるために黄色のダビデの星を着用させられるようになると、オランダ人はナチスドイツへの抵抗として黄色のチューリップを胸にかざして反ナチスドイツとユダヤ人差別反対を訴えていた。そのため、オランダではこのような発言には特にセンシティブだ。

▼「5月5日、私たちは自由だった1945年から2020年までの75年を思い出します」とか書かれたSNSでの投稿

民主主義フォーラムのインスタグラムより
民主主義フォーラムのインスタグラムより

ホロコーストやアンネフランクの生活によく例えられるロックダウン、その度に炎上

新型コロナウィルス感染拡大防止のために欧米ではロックダウンが行われており、自由な外出ができずに不自由な暮らしを強いられている人が多い。そしてそのようなロックダウンによる外出の禁止や制限で自由を奪われている現在の状況を第二次大戦時のナチスドイツに迫害、差別されていたユダヤ人の状況、いわゆるホロコーストに例えられることが多い。

当時、ゲットーに閉じ込められたユダヤ人やアンネ・フランクのようにオランダのアムステルダムの隠れ家で息をひそめながら隠れていたユダヤ人に例えられやすい。そして欧米では新型コロナウィルスでのパンデミックでの不自由な状況をホロコーストに例えると、当時のユダヤ人の悲惨な境遇や生活とは異なると、いつもネットが炎上している。高齢のホロコースト生存者らも当時のユダヤ人の状況と現在の新型コロナウィルスのロックダウンの状況は異なると訴えている。だが、それでも欧米では「ロックダウンで外出が制限され、不自由な生活=ホロコースト時代のユダヤ人がゲットーに閉じ込められて迫害された不自由な生活」というイメージを持つ人が多い。

オランダのユダヤ人団体のセントラル・ジューイッシュ・ボードは今回の民主主義フォーラムのSNSへの投稿に対して、「このような投稿は受け入れられません。戦没者追悼記念日と解放記念日に政党が発表するには、あまりにも攻撃的な内容です。ナチス占領時代の犠牲者や関係者に対しても失礼です」と声明文を発表している。

▼アムステルダムのアンネ・フランクの隠れ家だったアンネ・フランクハウス

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

▼民主主義フォーラムの投稿を批難するオランダの政治家たち