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ロシア製神風ドローンによるシリアでの攻撃「まるで空中の地雷原」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ロシアの軍事企業Zalaアエログループが開発した「神風ドローン(Kamikaze Drone)」と称される攻撃型ドローン「Lancet-3」が2019年から2020年にシリアで空から偵察と攻撃を行っているシーンがロシアのメディアで報じられていた。衝撃的な爆撃シーンから「まるで空中の地雷原」のようだと紹介されている。

攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を使用されるのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でも「神風ドローン」が紛争に活用されていた。「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。また、ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも大量に購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。

「まるで空中の地雷原」とロシアのメディアでは紹介されていたが、対人地雷は無差別で誰が地雷を踏んでしまって地雷の犠牲者になるかわからない武器である。だが、神風ドローンは特定の標的に対して精確に突っ込んでいき爆破する。破壊力も地雷の比ではない。

地雷は足や手が吹っ飛んでしまうが、人命は助かることもある。対人地雷はそのように完全に殺すのではなく、敵兵を負傷させて敵軍の戦う意欲を削ぎダメージを与える、また農民が手足を奪われて仕事をできないようにするということが目的で使用される。だが、神風ドローンに上空から突っ込まれて爆破したらほぼ人命が助かることはない。

▼神風ドローン「Lancet-3」の使用シーンや開発者を報じるロシアのメディア

▼神風ドローン「Lancet-3」の動画

神風ドローン「Lancet-3」ZALAアエログループ提供
神風ドローン「Lancet-3」ZALAアエログループ提供

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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