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ヒトラー「わが闘争」を真似たグレタ「わが気候」シャツ:英国アマゾンで販売されネット炎上

佐藤仁学術研究員・著述家
アマゾンUKで販売されていた「わが気候」シャツ(アマゾンUKより)

「わが闘争」を彷彿させる「わが気候」とグレタさんの画像

ナチス・ドイツの党首だったアドルフ・ヒトラーが1925年に出版した「わが闘争(Mein Kampf)」というヒトラーの自伝的な本がある。1930年にはドイツで5万部以上が販売され、ナチス・ドイツ時代のドイツ国民のバイブルのような存在の本だった。ヒトラーの自伝的な本で反ユダヤ主義的な思想も見られた。

そして英国のアマゾンにヒトラーの「わが闘争」のイメージを彷彿とさせるように、スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏の画像とともに「わが気候(Mein Klima)」とドイツ語で書かれた黒のTシャツが販売されていた。

ヒトラーの「わが闘争」を真似ていることに対する嫌悪感や「グレタ氏に失礼だ」といったコメントなどでネットでは大炎上していた。特にヒトラーの「わが闘争」をモチーフにしていることへの嫌悪感は強く、多くの人がアマゾンUKに商品の削除を要求している。

「ヒトラーやナチス、ホロコーストを想起」には非常に敏感に反応

600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯を殺害したナチスドイツだが、ドイツなど欧州の諸国ではハーケンクロイツ(カギ十字)などナチスドイツや総統のヒトラーを想起させるものを掲げたりすることはナチス禁止法で禁止されている。公共の場でナチス式の敬礼も禁止されている。

日本人にとってはあまり馴染みがないかもしれないが、欧米や中東諸国では現在でも反ユダヤ主義が根強く、ユダヤ人はSNS上でもヘイトスピ―チや民族憎悪の対象になりやすく、ヒトラーやナチスドイツを想起させるものだけでなく、ホロコーストを想起させるような商品に対しても非常にセンシティブである。過去に何回もそのような商品が販売されて、世界中で抗議の声が上がりネットで炎上している。2016年10月には日本のアイドル欅坂46がナチス風の衣装を着てコンサートを行った際には、「2度とホロコーストの悲劇を繰り返さない」という強い信念を持って全世界の反ユダヤ主義やナチスに関わる動向を監視しているサイモン・ウィーゼンタール・センターがプロデューサー秋元康氏とソニー・ミュージックに対して強い怒りを露わにし、謝罪を要求していた。

先日もイタリアのファッションブランドのアルマーニがホロコーストの収容所の囚人服に似ているシャツを販売して、ネットが炎上し、ユダヤ団体から抗議があり商品を撤去していたばかりだ。

▼アマゾンUKで販売されていたシャツ

アマゾンUKで販売されていた「わが気候」シャツ(アマゾンUKより)
アマゾンUKで販売されていた「わが気候」シャツ(アマゾンUKより)

▼ヒトラーの「わが闘争」

写真:ロイター/アフロ
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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