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ユネスコ 国際女性デーに「AIと女性に関するパネル」キラーロボットによる女性を標的にした攻撃を危惧

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)と世界経済フォーラムは2021年3月8日の国際女性デーに「少女のトラブル:AIの偏見を打ち破る(Girl Trouble: Breaking Through The Bias in AI)」というAI(人工知能)技術と女性に関するオンラインのパネルディスカッションを行った。AI技術の発展による様々な新たなサービスや職業、倫理などと女性に関する問題や社会的課題について議論された。

ディスカッションの中でパネリストの1人で人道的軍縮の専門家のワンダ・ムノズ氏がAI技術の発展と軍事活用による自律型殺傷兵器の脅威を訴えた。自律型殺傷兵器は「キラーロボット」とも称されていて、人間の判断を介さないでAIを搭載した兵器が標的を認識して攻撃を行い、敵を殺傷する兵器である。AIを搭載した兵器が女性を標的として認識すると、女性だけを攻撃して殺傷することを危惧している。ムノズ氏は特にグローバル・サウス(南半球での発展途上国)の女性とマイノリティを標的にした自律型殺傷兵器による攻撃が非常に脅威であると懸念を示していた。

このように女性だけをターゲットにして自律型殺傷兵器が攻撃をしてくることを懸念しているのはムノズ氏だけでない。自律型殺傷兵器の開発と使用に反対を訴えている国際NGO団体で結成されたグループである「ストップ・キラーロボット・キャンペーン」も「ジェンダーとキラーロボット」の脅威を訴え続けている。自律型殺傷兵器が女性だけを認識して攻撃を行い殺傷させたという実戦での活用例は現時点ではまだない。だが女性だけを認識するアルゴリズムで女性を認識したら攻撃を行うことも不可能ではないだろう。

今回は「国際女性デー」でのAIと女性に関するパネルディスカッションだったので、女性を標的にした攻撃が例にあげられて危惧されていた。だが、女性だけが標的として認識されるのではなく、男性や特定民族、年齢など様々な要素で標的を認識するアルゴリズムを搭載した自律型殺傷兵器が戦闘で使用される可能性もある。

▼2021年3月8日の国際女性デーに開催されたオンラインのパネルディスカッション

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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