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カナダの大手メディア:コロナのロックダウンをアンネ・フランクの生活に例えて炎上、謝罪して削除

佐藤仁学術研究員・著述家
アンネ・フランク(アンネ・フランク財団提供)

 カナダ最大級のメディア「The Globe and Mail」が新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウンをアンネ・フランクの生活と例えていた。「現在のロックダウンの状況をホロコーストに例えるのはおかしい」「アンネ・フランクとは状況が違う」といった声が多く上がり、ネットで大炎上して、同社は謝罪してコラムを削除した。

 現在ではコラムは削除されてしまったが、タイトルは「アンネ・フランクの精神でロックダウンに挑む(I’m channeling Anne Frank’s spirit in lockdown)」で、「このような時代にアンネ・フランクがいたら、どのように対応していたか?」「アンネ・フランクは今のロックダウンをどう思うか?」といった内容で、アンネ・フランクは761日も狭い屋根裏部屋で隠れて生活をしていたことを伝える内容のコラムが掲載されていた。

 第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスからの迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。

 新型コロナウィルスが世界規模で感染拡大しており、それに伴って世界中の都市で外出自粛やロックダウンなどの防止措置が講じられるようになり、自由に外出できなくなるようになると、そのような制限された環境を、ナチスドイツ時代にユダヤ人が差別・迫害されたホロコーストと比較されることがよくある。アメリカでもマスク着用がホロコースト時代のユダヤ人に例えられていた。

 特に、新型コロナ感染拡大防止のための外出自粛要請で自由に外出できない状況は、アンネ・フランクが隠れ家に身を潜めていた生活と比較されることが多い。そして今回の大手メディアだけでなく、多くの人が現在のロックダウンとホロコースト時代のユダヤ人やアンネ・フランクの生活に例えるような発言をして、その度にネットで炎上する。ホロコースト生存者たちも、当時のユダヤ人の状況と現在の新型コロナウィルス感染拡大防止の対策での人々の生活では全く違うと積極的に訴えている。

▼謝罪して削除したことを伝える「The Globe and Mail」のツイート

▼コラムの掲載停止を呼びかけるツイート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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