欧州議会の左派、AIの発展で兵器の自律化による世界規模での紛争を懸念:進む兵器の自律化

(写真:ロイター/アフロ)

「世界規模での紛争に発展する脅威」

 欧州議会の左翼政治会派の欧州統一左派・北方緑の左派同盟がAI(人工知能)技術の発展による軍事利用による兵器の自律化が人類にとって脅威であることを訴えるレポート「Artificial Intelligence in European Defence: Autonomous Armament?」を2021年1月に発行した。

 レポートを執筆した一人のクリストフ・マリシュカ氏は兵器の自律化と軍拡競争によって世界規模での紛争に発展することに懸念を示しており「これは危機管理の問題ではありません。近い将来の戦争の姿です。新たな兵器の発展は、新しいスタイルのプロパガンダと監視のスタイルを生むでしょう。そして自律型兵器は平和だった欧州と世界規模での紛争に発展する脅威があります」と警鐘を鳴らしていた。

「近い将来に現実のものになるかもしれません」

 欧州議会では2020年6月にAIの軍事活用、徘徊型ドローンの発展、サイバーセキュリティの再強化、無人型兵器の開発に関する16のプロジェクトを承認していた。このような新しい技術の発展と登場によって戦争の形態は大きく変わりうる。欧州統一左派・北方緑の左派同盟に属しているドイツの政治家のオズレム・デミレル氏は「AI技術の発展によるドローンやキラーロボットなどの自律型兵器の軍拡競争の激化だけでなく、それらの自律型兵器は軍人と一般市民を見分けることができないこともあるので、軍人と思って一般市民を攻撃してくることもあり得ます。そうなると戦争と平和の境目がなくなり、常に戦争の恐怖と脅威に晒されているようなものです。自律型兵器はSF世界のフィクションのように見えますが、間違った軍事戦略によって自律型兵器が開発され、使用されるようになると、近い将来に現実のものになるかもしれません。EUは絶対にこのような自律型兵器の開発には反対すべきです」と訴えていた。

 AI技術だけでなく、新たに開発された技術が軍事分野に応用されることによって兵器は発展してきた。「軍事による革命(Revolutionary in Military Affairs:RMA)」と呼ばれており、AI技術が軍事に活用され、AI技術を搭載した兵器が登場してくるのも歴史の必然である。だが、人間の判断を介さないで標的を攻撃して相手を殺傷することが非倫理的であるという理由で、「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器の開発と使用には国際NGOや一部の国が反対している。

 反対を表明しているのはアルジェリア、アルゼンチン、オーストリア、ボリビア、ブラジル、チリ、中国(使用のみ反対で開発には反対していない)、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ジブチ、エクアドル、エルサルバドル、エジプト、ガーナ、グアテマラ、バチカン市国、イラク、ヨルダン、メキシコ、モロッコ、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、パナマ、ペルー、パレスチナ、ウガンダ、ベネズエラ、ジンバブエの30か国だ。

 欧州で自律型殺傷兵器の開発と使用に反対しているのはオーストリアのみだ。軍事分野におけるAI技術の活用は進んできており、米国やロシア、イギリス、フランス、ドイツなど主要国は自律型殺傷兵器の開発に反対していない。中国は使用のみ反対しているが、開発には反対していない。自律型殺傷兵器はまだ実戦では活用されていないが、その開発と使用に反対しているのは小国ばかりである。

▼AI技術の軍事利用を反対する欧州統一左派・北方緑の左派同盟に属しているドイツの政治家のオズレム・デミレル氏