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スコットランド国民党、自律型殺傷兵器開発に反対「人類存続の危機を増長させる」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:Shutterstock/アフロ)

 英国のスコットランド国民党は戦争においてAI(人工知能)を搭載した「キラーロボット」とも称される自律型殺傷兵器の使用を禁止するための法的なフレームワークを構築することを訴えている。自律型殺傷兵器は攻撃において人間の判断を介さないで、兵器自身が判断して標的に攻撃する。人間の判断が介されないで攻撃されて殺害されることが非倫理的、非道徳的であると国際NGOなどが自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止を訴えている。英国は自律型殺傷兵器の開発にも使用にも反対はしていない。

 スコットランド国民党で外交問題を担当しているアリン・スミス氏は現在の英国政府が自律型殺傷兵器の開発と使用に反対しないことについて「自律型殺傷兵器は戦争においてとても危険なものであり、現在の英国政府の対応は砂の中に頭を埋めているようだ」と語っている。またスミス氏は自律型殺傷兵器などの登場によるリモートでの戦争について、倫理的な観点から法的な解決策が必要だと訴えている。特に英国が製造した自律型殺傷兵器が世界中に輸出されて使用されることも懸念している。そのためにも自律型殺傷兵器を開発、使用しないために拘束力がある法的なフレームワークを構築すべきだと主張し、さらに人の生死には人間の判断を介すべきだと訴えていた。

 また「ジョンソン首相は今でも真剣に国際社会において英国の存在意義を出していきたいと考えているのであれば、積極的に自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止に関する法的なフレームワークの構築を行うための交渉を各国と始めるべきだ。戦争の在り方が大きく変わろうとしている時に、今の英国政府は目をつぶって寝ているだけだ。核兵器の登場によって人類が存続の危機に晒されたのと同じように、人間の生死に人間の判断を介さない自律型殺傷兵器の登場はさらに、人類の存続の危機を増長させる。新たな戦争のスタイルの登場になりかねない。倫理的な観点と責任ある武器輸出管理を行う法的なフレームワークを構築することが英国政府にとっては急務である」と語っていた。

 英国だけでなく、アメリカやロシア、イスラエルなども自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していない。中国は使用には反対しているが、開発には反対していない。AI技術の発展と軍事への活用は、新しい技術が軍事に利用されるRMA(Revolutionary in Military Affairs:軍事の革命)の一環であり、AI技術の方が人間よりも優れたことも多い。特に3Dと呼ばれる危険(Dangerous)、退屈な(Dull)、汚い(Dirty)仕事はAIを搭載したロボットの方が適している。一方で人間の判断が介さないで人の生死を決定することが非倫理的であると、このように自律型殺傷兵器の開発と使用の禁止を訴えている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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