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ドイツの軍事メーカー、自律型兵器開発:攻撃には人間の判断が入る

佐藤仁学術研究員・著述家
ラインメタルが開発した自律型兵器(ラインメタル社提供)

 ドイツの軍事大手メーカーのラインメタルが自律型兵器を開発したことを発表した。武装された偵察システムで攻撃も行える。センサーや360度カメラ、偵察用レーダーなどを搭載した自律型なので、人間の判断を介さないで兵器が移動を行えるが、攻撃に際しては人間が判断を行ってから攻撃を行うようだ。敵地に侵入して偵察などを行い情報収集をして情報を本部に送ることができる。自律型ロボットはセンサーを搭載して人間の判断を介さないで移動可能なので、敵地の陸上からの偵察とリアルタイムに情報を送ることには適している。人間が乗っていないので、敵軍に捕獲されても破壊されるだけで人的なリスクがない。

 AI技術やセンサー技術の発展によって兵器の自律化は進んでいる。人間が遠隔地から操作や監視をしなくても、自律型兵器は人間の判断を介さないで動くがことができる。そしてロボットの方が人間にはできないような3D業務(Dangerous:危険な、Dirty:汚い、Dull:退屈な)には適しており、既に軍事分野でロボットやAI技術の導入は進んでいる。

 一方で、自律型殺傷兵器のように人間の判断を介さないで、ロボット兵器自身が標的を判断して攻撃を行い、殺害も行うこともある。いわゆる「キラーロボット」だ。人間の判断を介さないでロボット自身が判断して攻撃を行うことが非倫理的であるということからNGOなどが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。だがラインメタルが開発した自律型兵器では攻撃も行えるが攻撃を行う際には必ず人間の判断が入ることを強調している。ラインメタル社が2020年11月に公開した自律型兵器の動画では、人間の軍人と自律型兵器による偵察の組み合わせが効率的であることを伝えており、攻撃に際しては必ず人間の判断が入っていることもアピールしている。つまり、今回ラインメタルが開発した自律型ロボットの偵察兵器は、自律型"殺傷"兵器ではないようだ。

▼ラインメタル社が公開した自律型兵器の使用シーンの紹介動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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