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米国防総省「サイバー攻撃の敵は中国、ロシア、イラン、北朝鮮の4か国」新型コロナ関連の情報窃取も懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 米国国防総省のサイバーセキュリティ政策の副長官のマデライン・モーテルマンス氏は2020年9月にマドリッドで開催された欧州ジャーナリスト協会で「21世紀におけるサイバーセキュリティの挑戦("Challenges of Cybersecurity for the 21st Century")」というタイトルで講演を行った。モーテルマンス氏はアメリカにおけるサイバーセキュリティの脅威で敵である国は中国、ロシア、イラン、北朝鮮の4か国だと名指ししており、これら4か国からのサイバー攻撃が増加してきていることの脅威に警鐘を鳴らしていた。

 モーテルマンス氏は「中国は軍事的、経済的にあらゆるサイバー攻撃を行って、特に情報窃取をしています。2018年に司法省は90%以上の経済的な情報窃取は中国からのサイバー攻撃であることを明らかにしました。2020年に入ってからは新型コロナウィルス関連の情報やデータを窃取するためのサイバー攻撃が中国から多く行われています」とコメント。「ロシアは2016年の大統領選挙、2018年の中間選挙、2020年の大統領選挙でサイバー攻撃を行っています。また他にもアメリカの重要インフラへのサイバー攻撃を行っています」と語っていた。「北朝鮮はアメリカの金融ネットワークに対してサイバー攻撃を行っており、そこから資金を窃取し、北朝鮮での軍事開発の支援に使用しようとしています」と警戒を示した。また「イランはアメリカだけでなく同盟国の企業に対しても破壊的なサイバー攻撃を行っています。また中東での情報操作も行っています」と4か国のサイバー攻撃の特徴と脅威を語っていた。またモーテルマンス氏は「サイバー攻撃で破壊的な攻撃を行う集団はサイバー攻撃が得意なサイバーテロリストを雇用したり、資金集めを行ったり、プロパガンダも積極的に行っています」と語っていた。

 これら4か国からだけでなくサイバー攻撃の脅威に対しても「サイバー攻撃に対しては、必ずしもサイバー攻撃で反撃するようなことはしません」と国防総省のスタンスも明示していた。さらに「アメリカの軍事力は、これらのサイバー攻撃に対しても重要な抑止効果を持つことができます」と語っていた。つまり、アメリカへのサイバー攻撃に対してサイバー攻撃で報復しないで、サイバー攻撃に対しては軍事的な報復を行うことを暗示しており、アメリカの軍事力による敵国からのサイバー攻撃への抑止を見せようとしていた。またモーテルマンス氏は「我々アメリカは価値観を共有している欧州諸国、EUとの協力が必要です」と協力を呼びかけていた。最後にモーテルマンス氏は「依存が増加しネットワークが拡大すればするほどサイバースペースの脆弱性も増加します。我々は自分達の国を守らなければいけないという意識を持つ必要があります」と訴えていた。

 国家のサイバーセキュリティは国家の安全保障にも直結しており、軍事的な安全保障と同じように重要である。特に新型コロナウィルス関連の情報は現在の国家安全保障にとっても重要な情報であり、サイバー攻撃による情報窃取は国家の安全保障にもかかわる。今回、欧州ジャーナリスト協会主催のマドリッドで開催されたイベントだったためモーテルマンス氏は「EUとのサイバー攻撃での協力が重要」と述べていたが、EUだけでなく世界中の同盟国との協力が必要である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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