ローマ教皇「自律型殺傷兵器は多国間主義で解決すべき課題である」国連総会で演説

(写真:ロイター/アフロ)

 ローマ教皇フランシスコは2020年9月に開催された国連総会でビデオレターによる演説を行った。その中で主に新型コロナウィルスの感染拡大による世界的な危機に対して、以前と同じ方法ではこのパンデミックの危機から脱出することはできないと主張していた。また、ローマ教皇は「私たちは2つの選択肢の岐路に立っています。1つはグローバル規模で責任を共有していく多国間主義(マルチラテラリズム)の強化です。もう1つは自給自足、ナショナリズム、保護主義、個人主義による孤立への道。後者では貧困層や弱者は排除されていってしまうので、前者であるべきです」と主張していた。

 このようにローマ教皇は現在のグローバル社会において必要なのは多国間主義の強化であり、1つの共通のゴールに向かって多くの国々が連携しながら対応し、社会課題を解決していく必要性があると強調。そして「我々は現在のような国家間での不信な雰囲気を打破しないといけません。現在、軍事技術の発展が著しく、戦争の形態が大きく変わろうとしています。特に自律型殺傷兵器(Leathal Autonomous Weapons Systems:LAWS)のような兵器が開発されようとしており、LAWSは人間性を剥奪し、戦争の本質が変わろうとしています。このような問題には多国間主義で対応する必要があります」とLAWSを例に出してコメントしていた。

 軍事分野でのAI(人工知能)の活用が進められており、LAWSは人間の判断を介さないで標的を攻撃し、殺傷することができるようになる。そのような人間の判断を介さないで、人を殺害することが非倫理的、非道徳的であるという理由でNGOがLAWSの開発には反対している。国連での演説では、過去には国連事務総長もLAWS開発には反対している。ローマ教皇が指摘しているように、AI技術が発展しLAWSが登場したら、戦争の形態は大きく変わるだろう。

 そしてローマ教皇はLAWSの問題には多国間主義で解決すべきだと主張しているが、実際には各国の足並みは揃っていない。LAWSの開発の禁止を主張している国は30か国程度であり、アメリカやロシア、イスラエル、英国、韓国といったAI技術力を有する国は反対していない。中国はLAWSの使用には反対しているが、開発には反対していない。AI技術の発展は日進月歩で進んでおり、軍事分野への活用は必須であるため、今後も全世界でLAWS開発禁止が一致する見込みはないだろう。それでもLAWSの問題は1か国だけの問題ではなく、多数の国家で開発や使用の禁止、被害時の対応などを議論しながら解決していく課題である。