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トルコ軍、リビアで爆弾処理ロボットを活用して遠隔から爆弾処理

佐藤仁学術研究員・著述家
トルコ国防省提供

 トルコのメーカー「Elektroland Defence」が開発した爆弾処理ロボットがリビアの首都トリポリで爆発物や爆弾処理作業に活用されている様子がトルコ国防省のツイッターで紹介されていた。

 「TMR2(Kutlu)」と呼ばれる爆弾処理ロボットは遠隔で軍人がタブレット型コントローラーを操作して、爆弾や爆発物を検知して処理している。カメラが搭載されており、遠隔地からも爆弾のある場所の様子なども見ることができるために、周囲に人がいないことを確認してから処理できる。2010年半ばからトルコでは自国で多くの軍事用ドローンやロボットの開発を行ってきた。特に「Kamikaze Drone(神風ドローン)」と呼ばれる自爆型ドローンは有名。

 国防省のツイッターでも「我々のロボットは遠隔地から安全かつ効率的に爆発物や爆薬を処理することができる」と述べている。リビアの内戦は激化しているなか、トルコはリビア暫定政府を支持。エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)ロシアが支援しているリビア国民軍(LNA)と戦っている。トルコは2019年11月にリビアと安全保障と軍事協力に関する合意を締結。2020年7月には米国トランプ大統領とトルコのエルドアン大統領は電話会談を行い、リビアの安定化に向けて協力を強化していくことを明らかにしている。

 この爆弾処理ロボットを活用して爆弾処理を行うことによって、一般市民や軍人が爆弾物や地雷などの犠牲になることが少なくなる。トルコの軍関係者は地元メディアに「このような小さな爆弾処理ロボットは機動性も高く、カメラも搭載されているので建物や家の中にも入って行けるので、軍での爆弾処理の作業を多いに助けてくれます」と語っている。このロボットを製造しているElektroland Defenceだけでなくトルコの他の軍事メーカーでも同様の爆弾処理ロボットを開発している。

 建物に仕掛けられた爆弾や地中に埋められた対人地雷などが爆発することによって、多くの一般市民が殺害されたり負傷することがある。特に対人地雷は世界規模でも問題になっており、紛争が終わってからも地中に埋まったまま放置されっぱなしで、戦後に子供がおもちゃと勘違いしたり、一般市民が対人地雷を踏んでしまって爆発してしまい死んでしまったり、足を失うことが多い。特に殺傷能力が強くない対人地雷は、片足を失ってしまうことによって農業などの仕事に従事できなくなってしまい社会的コストが大きく、敵もそれを目的で仕掛けている。爆弾処理ロボットは紛争後にも有効活用が期待される。リビア内戦におけるトルコ軍のプレゼンスも上がり、紛争終了後の平和構築の過程においても影響力を行使できる。

▼リビアの首都トリポリで、爆弾処理ロボットによる爆弾処理の様子を伝えるトルコ国防省のツイート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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