英国ホロコースト博物館、小学生向けにホロコースト教育向けアプリ開発
イギリスの国立ホロコースト博物館は教育省の支援を受けて、ホロコースト時代の様子を学習できるアプリを開発した。アプリはiOSのみで対応でAndroidは夏以降に対応。アプリのタイトルは「The Journey - Leo's Story」で、1930年代のベルリンを舞台にしてユダヤ人の少年レオが差別され、迫害されていく様子をレオの目を通して自身のユダヤ人というアイデンティティを踏まえて伝えている。360度で見ることができるバーチャルなアニメで表現されている。
ナチスドイツが第2次世界大戦時に約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。その始まりはドイツで、ユダヤ人の差別、迫害から始まった。最初は「ユダヤ人は公園に立ち入り禁止」「ユダヤ人は映画館に立ち入り禁止」「ユダヤ人の店舗では買わない」といったところから差別が始まり、やがて学校から追放され、公務員など就ける職業が限定されていき、ゲットーなど住む場所を限定され、強制収容所に収容され、最終的には欧州で約600万人のユダヤ人が殺害された。なお、ヒトラーが政権を握った当時のドイツは全人口が約6700万人で、ユダヤ人は全人口の1%以下の約50万しかいなかったので、特に地方ではユダヤ人を見たこともなかったというドイツ人も多かった。殺害されたユダヤ人のほとんどがポーランドなど東欧諸国やナチスドイツが占領した欧州諸国だった。
アプリはイギリスで9歳から11歳の小学生向けのホロコースト教育に活用していく予定。国立ホロコースト博物館のスポークスマンは「アプリの中でのレオの体験と思いは、実際にあった経験に基づいています」と語っている。ホロコースト生存者で、戦時中にイギリスに避難民としてわたってきたルス・バーネット氏は、このアプリ開発にも携わっており「ヒトラー時代の同世代の子供たちがどのような経験をしてきたのかを、今の子供たちに知ってもらうことができるアプリです」と語っている。国立ホロコースト博物館のチーフ・エグゼクティブのマーク・ケーブ氏は「ユダヤ人差別と迫害の問題は20世紀だけでなく何世紀も昔から解決されなかった問題ですが、このアプリによって21世紀には解決できることを期待しています」と語っている。
国立ホロコースト博物館では、ホロコースト生存者らが語り部としてホロコーストのことを語り継いできた。学生らが国立ホロコースト博物館を訪れて生存者の話を聞いて学習してきた。だが、戦後70年以上が経ち、ホロコースト生存者たちの高齢化も進み、実際にホロコースト体験者の話を聞く機会も減少している。現在、ホロコースト生存者らの証言を動画などに収録したりする記憶のデジタル化が進められているが、このようなアプリやアニメでのホロコースト教育も欧米やイスラエルでは積極的に進められている。小学生向けの教育としては、ホロコースト生存者の動画を見ることも重要だが、アニメを通じて同世代のユダヤ人少年が差別、迫害されるシーンを伝えるアプリはホロコーストを身近に感じられ、インパクトはあるだろう。
「The Journey - Leo's Story」(リンク先にアプリのイメージ動画あり)