イスラエル、水道システムへのサイバー攻撃・イランを念頭に「サイバー冬の時代がやってきた」
2020年4月にイスラエルの重要インフラで生活に欠かせない水道システムに大規模な組織的なサイバー攻撃が行われた。それに対して、イスラエルの政府機関のナショナル・サイバー総局で局長を務めるイーガル・ウンナ氏は5月に、サイバー攻撃を仕掛けて来た国がイランであるとは言及しなかったものの、イランからの攻撃であることを念頭において「2020年の4月と5月は近代のサイバー戦争においてターニングポイントになるだろう。サイバー冬の時代がやってきた(Cyber winter is coming)。しかも思っていたよりも早くやってきた。そして再びサイバー攻撃が来ることが想定される。我々はサイバーの冬の時代という新たなフェーズに向けた途中にいる」と語り警告を発した。
またウンナ氏は「現在、我々が直面している新型コロナウィルスの危機の状況において、水道システムへの大規模なサイバー攻撃は市民生活にもダメージを与え、水が不足し最悪の事態に陥ってしまったかもしれない」と語った。さらに「今回のサイバー攻撃はITシステムやデータ窃取や金銭の要求を狙ったものではなく、明らかにリアルな生活にダメージを与えるために行われたものだ」と強調した。
国家間のサイバー攻撃は数年前から激化しており、イスラエルは周辺のアラブ諸国やイラン、反ユダヤ主義の団体などから執拗にサイバー攻撃を受けている。サイバー攻撃にはWEB改ざんのようないたずらのようなものや、DoS攻撃、情報やデータ窃取、金銭目的のランサムウェアなどが主流で、そのような攻撃は常時行われている。だが国家の安全保障にかかわるシステムへのサイバー攻撃は大国間や核兵器保有国間ではめったに起きない。そこには万が一、兵器システムや社会インフラに攻撃をしかけて偶発的であったにせよ戦争が勃発したり、相手国の社会が混乱することによる安全保障の観点から危機的状況に発展することを回避するために抑止力が働いているといえるだろう。
今回、イスラエルがサイバー攻撃を受けたのは、市民生活においても重要な水道インフラである。特に周辺が砂漠であるイスラエルにとって、水道システムは国家の死活問題にかかわる物凄く重要なインフラであり、ウンナ氏が述べているように新型コロナウィルス感染が拡大している状況において、水道システムの停止は社会混乱を招き、国家の安全保障にも大きな影響を与える。ウンナ氏はイランとは明言していないが、イランからの攻撃を念頭において、今回のサイバー攻撃に対して強い姿勢を示して敵国を牽制している。